猛ダッシュで今を突き抜けろ

「ふあ〜…」


今日も一日が始まった!

まだちょっと眠い〜…


「おやヨウ、おはよう。」

「あ、おはよー」


僕と話しているのは首飾りに魂を宿すフレンズ、ラー。

今は訳あって魂だけの存在になってる。


「朝ごはん食べに行ってくるね〜」

「あぁ、行ってこ〜い。

いやー物が食べられるやつは羨ましいよ」


魂だけだからものを触ったり食べたりはできないみたいなんだ。

それじゃ、ご飯食べに行こう。


〜移動〜


「みんな、おはよ〜」

「おはようございます〜。」

「おはよう。」


まずは隣同士の席で座ってるスナネコとツチノコに挨拶した。

スナネコはツチノコのコインを暇そうにいじくってる。


「ヨウ、おはよーっ」

「おはようナミちー、ツクヤはキッチン?」

「うん、もうすぐ来ると思うよ〜…ふあぁ…」


暇そうなナミちーはあくびをしながら答えた、すっごく眠そう。

僕もイスに座ってツクヤを待っていると、キッチンからナミちーを呼ぶ声がした。


「おーい、ナミちー?」

「なーに?」

「ちょっと運ぶのを手伝ってくれないか?」

「おーけーおーけー♪」


ツクヤに呼ばれたナミちーはキッチンに行って、お盆を持って戻ってきた。


「はーい、皆さまお待ちどう!私も正直待ってたけど!」

「今日は趣向を変えてみたんだ、口に合うといいが…。」

「わあ!これって…」


ツクヤが今日作ったのは、ふかふかで甘い匂いのするホットケーキだった。

バターの匂いもまた美味しそうだぁ…じゅるり。


「すごーい!こんなのも作れたんだね!」

「ツクヤってすごいでしょ?」

「すごいすごい!」

「て、照れる…」


僕とナミちーに褒められまくったツクヤはちょっと恥ずかしそうに照れた、照れ屋さんめ。


「いいにおいです、なんですかこれ?」

「ほぉ…噂でしか聞いたことがなかった……。」


スナネコとツチノコも興味津々で、ホットケーキをじーーっと見ていた。

でもやっぱり眺めるより…


「ねえねえ、早く食べようよ!」

「ああ、そうだな。俺としては味の方も心配だから…。」


「「いただきまーす!!」」


ハチミツをかけてバターをよく染み込ませてひと口…。


「はむっ…おいしい!」


うん!そうだよね、やっぱり美味しかった!

ふわふわの食感がハチミツやバターとの相性ぴったり!


「ツクヤってやっぱりすごいよ!」

「口にあったようでよかった、前から使ってみたいと思ってたんだ…。」


ホットケーキが作れるということは材料が揃ってたんだよね…

ほんとになんでもあるね、パークの食糧庫って!


「ねえねえ、おかわりはある?」

「あ!私も欲しい!」

「ああ、生地は残ってるからまだまだ焼けるぞ?」

「「イェーイ!!」」


…と、こんな感じで僕らの朝ごはんは大盛り上がりだった。


〜朝ごはん終了後〜




僕はいま、ツクヤに呼ばれてしんりんちほーの開けた場所に来た。

渡したいものがあるんだってさ、なんだろう?


「あ、ツクヤ〜」

「早かったな、ヨウ…お待たせ。」


ツクヤはチーター型のバイク、ジャパリホイールに乗って来た。

なんか久しぶりに見た気がする、あの騒ぎパーティーで雪山に行く前に別れた時以来かな?


「渡したいものってなにー?

…んん?」


よく見るとツクヤがたまに付けてる腕時計みたいなものがツクヤの手元にあった。

これはたしか…


「あれ?それってバイクを呼ぶ奴だよね?」

「ご名答、ちょっとつけてみてくれ。」


ツクヤに言われた通り、僕は腕時計型のそれをつけた。


「おー、ラッキーのお腹についてるアレみたい。」

「かなり似通った技術で作られているからな…おっと、それより…スイッチをいれるとホログラムが出るはずだ。」


『カチッ』


横のスイッチを押すと、四角い板が浮かび上がってきた。

これがホログラムか!かがくのちからってすごい!


「さて…その画面を操作してバイクの絵が書いてあるところをタッチするんだ。」

「これ?」

「そう、それだ。」


これをタッチすればいいのね、よいしょ!


『しばらくお待ちクダサイ。』


「うわ、しゃべった…!?」

「びっくりしたか?端末から出る音声でナビゲーションしてくれるから初心者でも安心だな。」


端末がしゃべると、どこからか音が近づいてくるような気がした。


『ブロロロロ!!!』


「うわっ!?」


森の向こうの道からものすごい音を出しながらきたのは、ツクヤのジャパリホイールに似たマシンだった。


「…なぁにこれぇ?」

「ジャパリホイール・プロングホーンモデルだ。」


えっ、ぶろんぶ…なんだって?


「その…ぶろんぶろん?ってなに?」

「プロングホーン、哺乳綱鯨偶蹄目プロングホーン科プロングホーン属だ。」

「????」

「まあ、鹿に似た動物だ。」


えーっと?プロング…ホーン…

プロングホーンでいいんだね?


「チーターモデルと比べると速さは劣るが、チーターモデルよりも燃費が良くて長い時間走らせることができるぞ。」

「へー?」


なんかスマートでカッコいいねぇ〜

これ僕が乗れるんだね?


「ん?でも…」

「どうした?」

「こういうのって免許証とかいるんじゃないの?」

「あーー…

そういうとこ気にするか?」


気にする!


「……ヒトがパークに戻ってきたら2人でちゃんと取ろうか?」

「そうだね?」


まあその話は置いておいてー…


「じゃあ僕早速のりたい!」

「そうだな、だがその前に…」


ツクヤは持っていたケースから服を取り出して見せた。


「運転に適した格好に着替えてもらう!」

「適した格好とかあるんだ?」


だけど…なんのために?


「ああ、バイクに乗る時は長袖の服、長ズボンを履くんだ。

靴は…そのままでも大丈夫だな。」

「なんで長袖とかが必要なの?」

「転倒した時に怪我をしないため…それと運転中、高速なスピードの中に自分の体を晒すことになる。

そうなった時に、いつどんなものが飛んでくるかわからないからだ。」


へー?かなり重要じゃないか!


「たとえ小石だろうが当たると痛いじゃ済まないかもしれない。

おじさんヨウの父さんがヒトの国にいた時の友人が言ってたものだと…小石、ガラス片…それにクワガタムシだったか?」

「クワガタムシ????」


『『クワガタムシ』』


まるで意味がわからないぞ!!

とにかく安全のためには着替えなくちゃね。


「覗かないでね?♪」キュルーン

「誰が覗くか、裏声やめろ。」


なんてボケをいいながら着替えに行く。


〜数分後〜


「着れたよ!」

「おお、ピッタリだな?体のサイズが大体同じだからか?」


大体同じなら服選びも楽だね〜


「かっこいいね、これ!」

「よし…それとこれ。」


これはヘルメット?

バイクに乗るなら必要だよね!


「おー、被っても前がちゃんと見えるぅ」

「通信機能付きだから、それで指示を送るぞ?」


いいね!

がんばりまーす!


〜スタンバイ完了〜


「よし、じゃあまずはゆっくりこのあたりを何周かしてみてくれ。」

「はーい」


『ブロロロロ…』


森の中にこんなにいいコースがあったなんてびっくり、快適に程よいスピードで回れてる。


〜十数分後〜


「スピードを上げてみてくれ」

「らじゃー」


『ぶーーん…』


少し早めにぐーるぐると…

風が気持ちいいね〜


〜また十数分後〜


「今度はカーブの多いコースに変更だ、2番コースへ」

「はいさ〜」


『キューッ…』クイッ


ほら見て見て、綺麗なカーブだよ!

楽しいね!


「よし、今日の練習はここまで、今度はもっと速い運転に挑戦だ。」

「はーい!」


〜何週間か練習した後〜


『ブーーン…!!』


「すごいな、ヨウ!完全に乗りこなしている…。」

「えへへ、これ楽しいもん!」


『ギュウゥッ!』


最初はバランス取るのとか大変だったけど、慣れてくると自分の体の一部みたいに動くようになるね…。


「さて…今日の練習はこれくらいに…」


と…その時。


「誰かー!!助けて!!」


森の中で誰かが悲鳴をあげているのが聞こえた。

この声は…アリツさん!?


「なっ!?」

「ちょっと僕、行ってくるよ!」


困っている誰かが居るのなら、1秒でも早く行くのがベスト!

それに…バイクで登場なんて、ヒーローみたいでカッコいいからね!


「ちょ、ヨウ!?」


びっくりしているツクヤすらも置いていくスピードで僕は森の中に突っ込んだ。






………


森の中をバイクジャパリホイールで走り抜けて、僕はセルリアンに襲われているアリツさんを見つけた。


「いた!あそこだ!」


僕はバイクを踏み台にして高くジャンプして、セルリアンに飛び蹴りをした。


「必殺の〜…キーーック!!」


『ドガッ!!パカーン!』


「わっ!?ヨウさん?」

「間に合ってよかったよ、アリツさん!」


間に合ってよかったけど…バイクを踏み台にしてジャンプするのは危ないから、なるべくやらないようにしよう。


「…たぶんツクヤにバレたらめっちゃ叱られると思うから、バイクから飛び蹴りしたのはツクヤには内緒だよ。」

「へ?あ、はい…。」


とりあえず、アリツさんをレスキューしてツクヤのところに帰らないとね!


「えーっと…どうやって乗せようかな?飛べるとはいえこのまま置いていくわけにも…あ、そうだヘルメット。」


ヘルメットのボタンを押してツクヤに通信をつなげ…繋がってた。


「もしもし?聞こえる?」

『ああ聞こえてるぞ、ずっとな。』


あっ…全てを察した。


『ヨウー…?

バイクから飛び蹴りしたそうじゃないか??』

「ひーーーっごめんなさーい!」

「ふふっ…ふふ…」


アリツさんは可笑しくなっちゃったのか、笑うのを抑えられなかったみたいだ。


「ひーん…」

『やれやれ…もういいから、そっちにサイドカーを呼んでおく。

短い距離なら自立走行もできる便利なやつだ。』


ツクヤがそう言った数分後、鳥みたいな形のちっちゃな車?が来た。


「これがサイドカー?」

『ああ、プロングホーン型ならサイドカーを取り付けることもできるんだ。』


すっごーい!


『ガチャンッ』


おおっ、くっついた…

パークってすっごいハイテクだなぁ…


『よし、それじゃあ気をつけて戻ってこいよ?』


『ブロロロロ…』



そしてツクヤと合流した後ツクヤが呼び出したチーター型と縦並びになりながら、僕たちはロッジへと帰った。



〜その日の夜〜


「…って感じで今日も楽しかったよ!」

『いいな、いいなバイク。私も乗せてくれないか?』


「そうしたいんだけどね、ツクヤが危ないから置いておいた方がいいって。」

『むむむ…残念だ…。』



それじゃあ、おやすみ〜…





〜1.5章 完〜











————————————————




新しい日々がくる


新しい拠点、新しい仲間


まだ見ぬ場所への冒険


そしてヨウたちの前にやってくるのは…



次回 第二章

〜何回だって旅に出ようよ〜



次回に続く!!

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