陽はまた昇ってゆく
「いっけぇっ!!」キック!
『グギャーッ!!』
僕はラーの試練をクリアするために、ミイラ軍団を蹴散らしている。
倒しても倒してもいっぱい出てくるけど、ここでへばってちゃダメだから頑張ってる…!
「何か武器を…って、ここじゃカード何もないじゃん!?」
「それなら心配ない、ここでならちょっと念じただけで出せるぞ。
その代わり…」
僕は話を最後まで聞かずに
「ホントだ、出た!」
「って最後まで聞け!
ほら、あそこ見なさい。」
「え?」
ラーが指さした先では、僕の体も同じ武器を手に取って戦っていた。
「ああなるから気をつけろって言いたかったのに…」
「ごめん…というかこれじゃ迂闊に武器も出せないじゃん!?」
僕は何回か剣を振るった後、すぐに消した。
長く使ってるとツクヤたちにとって危ないからね…
「…だったら格闘戦で乗り切るしかないよね!」
「ふーむ、良く磨かれた構えだ。知らんけど。」
知らないんかい…!
いや、そんなこと気にしてる場合じゃなかった。
『あ"ぁああぁ…』
「えいやっ!」スパーンッ
まず二体に回し蹴り…
『グルル…ヴー…』
「せいっ、はぁ!」パーンッ
次に来た三体には二段パンチ。
『ウガァァァ!!』
「いっぱい来たか…それなら!」バキバキバキバキッ
そして束になって来たミイラ達には連続パンチ!
『ギィーーッ…‼︎』ドサドサドサッ
「ふー…やったか?」
拳を下ろして一息…なんて暇は与えてもらえるはずもなく…。
『ガァァァァッ!!』『ヴーーッ!!』
「うーん…仕方ないか、えいっ!」パーンチ
『グギャー!!』
「はあっ…はあ、ちょっと待ってよ…」
ミイラの群れをひたすら蹴散らしてきた僕は、少しずつ体力が無くなっていくのを感じた。
「体はあっちにあっても疲れるんだなぁ…」
疲れを実感していると、突然地面が揺れた。
そして…
『グオオオオ……」
「で…デカい…」
僕の身長の二倍はあるようなゴツいミイラが地面から這い上がってきた…。
「そいつで最後だ、果たして今のその体で倒せるかな?」
「…よし、やってやる!」
僕は大型ミイラに突撃して、攻撃をしようとした…だけど…
『グオオン!!』
「あぐっ…!?」
ミイラは大きな腕を薙ぎ払って反撃して、僕は地面に叩きつけられた。
その痛みで立ち上がれなくなっていた。
「あ…ぅ…いたい…」
『ヴァウ…!』ドスン…
トドメを刺さんとばかりににじり寄ってくるミイラ、僕はこのまま何もできずにやられるのか…?
「もう…ダメ…なの…?」
その時…
「——!!!」
「ヨウ!!」
誰かの声が聞こえた、僕を呼んでる…?
~~~~~~~~~~~~~~ツクヤ視点~~~~~~~~~~~~~~~~
「……。」
はっきり言って万事休すだ、ツチノコは一瞬の隙を突かれて倒された。
ナミちーはそんなツチノコを担いで離れた場所で手当している。
今ヨウと対峙しているのは俺とスナネコだけだ。
「強いですね…ヨウがここまで強かったとは…」
「ダメージがキツいな、流石に…」
ヨウは獣の眼差しでこちらを睨んでいる、それは狩猟対象に向ける目のようであり捕食者に向ける目のようでもあった。
「このまま…やられるんですか、ボクたち…?」
「もう…ダメなのか…?」
最悪の状況に絶望すら感じた、だが俺とスナネコは大切なことを思い出して立ち上がった。
「いや…まだ、負けません!」
「こんな所で負けていられるか…!!」
「……。」
ヨウはまだ、その瞳でこちらを睨んでいる。
「聞こえるか?ヨウ…。
ヨウは小さな頃から俺を引っ張っていってくれた、臆病だった俺を変えてくれた…!!
今度は俺がヨウを救う!そのために俺は、何度だって立ち上がる!!」
「……!?」
ヨウの動きが鈍くなった。
頭に片手を当てて苦しそうにしている。
そして俺の言葉を聞いたスナネコは、同じようにヨウへ気持ちをぶつけた。
「ボクの毎日は惹かれて飽きての繰り返しでした…何を見てもいつかは飽きる、そんな夜の砂漠のように冷え切った毎日でした…
そんな日々を変えてくれたのは、ドジでおっちょこちょいだけど強くて優しいヨウでした…
ヨウはボクの中の砂漠の『太陽』なんです!」
「……!!」
ヨウの動きが完全に止まった。
『ボクの中の砂漠の太陽』か…なかなかポエムチックな事を言うじゃないか?
「さて…ここからどうするか…?」
俺が思考を巡らせて考えていると、うっすらとヨウの声が聞こえた。
「み…ら…くる……」
「ミラクル…けものミラクル…?」
はっきりと聞こえないが、そう言っているんだとわかった。
「わかった…
スナネコ、ヨウに俺たちの全力を見せてやろう…!」
「わかりました…ボクに任せてください…!」バシュウウウッ…!
さあ、スナネコの全力の『エンジェル砂遊び』を…
いや…何か違う…?
「えいっ!」
「潜った…!?」
地面を掘っている…?
ああ、出てきた…
「見つけましたよ!」ヒュンッ
地面から出てきたスナネコは、ヨウに向かってダッシュで突撃して引っ掻き攻撃をお見舞いした。
「こうして…こうです!!」
[ハンター・エンジェル]
「これで…お終いです。
待ってますから、ヨウ…。」
ヨウは吹っ飛んで尻餅をついた。
まさか2種類目のけものミラクルが発動するとは…
「……。」クラクラ
ヨウはかなり怯んだようだ…だが未だ元に戻る気配はない。
やっぱり…最後は俺が決めるべきなんだな。
「ヨウ…待っていてくれ。
俺の全て、俺の全力を込めて…お前を…救ってみせる!!」バシュウウウッ!!
力がみなぎる、今ならなんでも出来る気がする…!
俺は力一杯遠吠えをした。
「ワオォォォォンッ!!!」
すると、狼の姿をした幻影が突撃し、喰らい付いて動きを止めた。
「戻ってこい、ヨウゥゥッ!!!」
[ムーンナイト・ハンティング]
ヨウは地面に叩きつけられ、バリアも壊れていた。
倒れたヨウは安心したように眼を閉じていた。
まるで眠っているようだ…。
〜15分後〜
「ヨウ、大丈夫なのか!?」
「起きてください…ヨウ…!」
やりすぎたのか?判断を間違えたのか?
そんなことを考えながらヨウを揺すってると…
『ピカーッ…!!』
ヨウの体が金色のオーラに包まれた…
~~~~~~~~~~同じ頃、ヨウ視点~~~~~~~~~~~
「俺は何度だって立ち上がる!」
「ヨウはボクの中の砂漠の太陽なんです!」
「「ヨウ!!」」
ツクヤと…スナネコ…僕を呼んでる…
こんなところで倒れてる訳にはいかない…!
「うおおおっ!!」
「ほほぉ…!?」
僕は声を振り絞り立ち上がった。
ラーは変わらず僕を見下ろしている。
「そうか、みんなの気持ちが最大の武器…なら!」
僕は空に映る2人に向かって声をかけた。
「ミラクルだ、2人のミラクルを僕にぶつけるんだ!!」
これがどこまで伝わるかわからない、けど…伝わると良いな…。
「お前…正気なのか…?
必殺技を2回も自分の体に叩き込ませるなんて…なんなんだ、それ?」
「友情…って言うんだよ!」
そして向こうでは、僕の言葉が伝わったらしく2人が僕に目掛けてミラクルを打った。
「待ってますから、ヨウ…。」
「戻ってこい、ヨウゥゥ!!」
僕の中の恐怖を消してくれるようなスナネコの落ち着いた声、いつも冷静なみんなのリーダーなツクヤからは聞いたこともないような熱い声…
僕の中で強い気持ちが燃えるのを感じた…。
「きた…きた!きたーっ!!
力がどんどん湧いてくるよ!ありがとう…スナネコ、ツクヤ!!」
「絶対に帰る、帰ってみんなに『ただいま』って言わなくちゃ…!!』バシュウウウッ!!!!
これが、この『けものミラクル』が…
僕の本当の
「うおおおっ!!」
地面を蹴って突撃しながら、四方八方から大型ミイラに引っ掻き攻撃を与え続ける。
そして…
「これで…終わりだぁぁぁぁ!!!」
["必勝"懸命 シャイニング・クロー]
最後に真上から真下に切りさいて、ミイラを完全にやっつけた…!!
完成した僕の必殺技は、とてもカッコよく決まった…!でしょ?
「やった…やっつけた!!
これで合格なんだよね?」
ラーが空から舞い降りてきて拍手をしていた。
「素晴らしい…まさかここまでやるとは…!!
友情の力、硬い結束の力を見せてもらったよ…!」
「それじゃあ…!」
「勿論、合格だ!」
やった、これで戻れるんだ…!
待っていてね、みんな!
「では、行くぞ!」
ラーは金色のステッキを握り、復活のカードに力を送った。
すると僕の体は金色のオーラに包まれていった。
「これは…?」
「これでお前は元通りだ…しかし、一つ忠告がある。
元の体に戻ったあと、お前の体は『生者』の体に戻る。
よって、高いところから落ちたりしてしまっても再生することはできない。」
なるほど…前に観覧車から落ちても死ななかったり怪我がすぐに治るのも『死者』の体だったからなんだね…?
「それを覚えておけ…」
「わかった!」
「…と、最後に一ついいか?」
ラーは元の体に戻りつつある僕に飛んで近づいて言った。
「私も…お前の『友達』の仲間に入れてもらえないか…?」
「なんだ、そういうことか!
もちろん!大歓迎だよ!!」ニコッ
「ふふっ、そうか…ではまたな。」
ラーのその言葉を最後に僕は『お守りの中の世界』を後にした。
〜そして〜
「「ヨウ?ヨウ!」」
2人の声がする、起きなくちゃ…!
「ん…んう…えへへ…。」
「「ヨウー!!!」」
2人は左右から僕にしがみついた…結構痛い、特にツクヤは力が強い…。
「痛い痛い、大丈夫だから…」
「よかった、よかったです…」
「戻ったんだな、本当に心配したんだぞ…!!」
スナネコとツクヤはものすごく嬉しそう、戻ってきて良かった…!
「もー、ツクヤったら泣いてる?」
「な、泣いてるわけないだろ!?
えっこれ、これは…汗じゃないか?」
「ふふふっ…仲良しですね…♫」
3人で座っていると、ロッジの方からツチノコとナミちーも走ってきた。
「ヨウ!お前!
戻ったのか…全く心配かけさせやがって!」
「ごめん、ツチノコぉ…」
怒ってるツチノコの横でナミちーはキキキっと笑っていた
「キキキッ…怪我してるのにも関わらずに助けに行くって聞かなかったのは誰だったかしら〜?」
「くっ…ぐぬぬ…」
「何はともあれ、無事でよかったよ!」
ツチノコとナミちー、これでいつもの5人だね…
「みんな、迷惑かけちゃってごめん…!」
「そんなの平気ですよ?」「ヨウが無事なら全て解決だ。」
「だから気にすることねーよ。」「ホント、そうだよ〜!」
そして…4人はみんな揃って同じ言葉を言った。
「「ヨウ、おかえりなさい…!!」」
「ただいま、みんな!!」
だけど…まだやることは残っている。
僕たちの冒険はまだ、始まったばかりだった…!
〜第一章 完〜
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