真実はそこにある

「ここまでは普通の内容…ここからだね。」


僕は重要なページに注目して読んだ。



——————

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


セルリアンの動きが唐突に活性化した。

私とケイはセルリアンの対策のために探検隊や警備隊と合同で動いた。

ツクヤやヨウくんも一緒だ。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


調査した結果、セルリアンたちは何者かによって統率されているという結論が出た。

ルーラーのようなセルリアンが再び現れたとしたら危険だ、早急に対処するべき。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


ルーラーと同形状のセルリアンを発見した、が…

私たちがそれに近づいた時、誰もがその光景に息をのんだ。


そのルーラーは

ルーラーを取り囲み、見上げるフレンズたち。

この日から我々は交代でこのセルリアンを見張ることにした。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

————————


「…ツクヤ、ここまで出てきた『ルーラー』って何?」

「『ルーラー』…すなわち支配者だ。

セルリアンたちの司令塔のような存在だ。」


僕たちはもう一度ページを読み進めた、しばらくはルーラーってセルリアンの観察記録みたいだった。


そして、僕はまた重要なページを見つけた。


「ここから話が動いてる、見て。」


——————————

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


今日、ルーラーが突然姿を変えた。

まるで繭から成虫になるかのように、中からファンタジーもののドラゴンのような姿になって現れた。

その大きさは繭の二倍以上と見えた。


そのセルリアンは、耳障りな咆哮を上げると周りの木々を破壊していった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

空中からはヘリ、陸上からは双眼鏡などを利用して様子を調べてみると、ドラゴン型セルリアンは焼き払った土地に宿る輝きを吸い上げていると見られた。


だが同時に、セルリアンたちの統率が乱れているようにも見られた。

知性を捨てて力を得たと言うことだろうか?


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


黒いセルリアンが大量に発生した。

遺跡型アトラクションが半壊状態だと聞いた。


このセルリアンたちはどうやら水が弱点のようで、かけると冷えた溶岩のように固まっていた。


私はセルリアンの調査と両立してフレンズや人、そして野生動物の治療もしなければいけなかった。

そう言うわけで今日もツクヤに会いにいってやることができなかった。

すまない…


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


ドラゴン型セルリアンは研究所を目指して侵攻しているとの情報が入った。

あそこには女王のデータもある、おそらくはかつての巨大セルリアンと同じ狙いだろうか。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

運び込まれてくるスタッフや瀕死のフレンズたちの治療に専念していると、二つの情報が入った。




一つはケイの妻であるフェネックさん、そしてヨウくんが崖から転落してしまったらしい。

私は耳を疑った。信じられなかった。


もう一つはドラゴン型セルリアンが消滅したこと。

炎を纏った光の球がセルリアンと対消滅になった、と目撃した人は言った。

察しはついた、ケイの相棒のようだったアイツだな…無茶をしてくれたものだ…。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

フェネックさんは動物に戻ったそうだ。

今は探検隊、警備隊で保護しているらしい。


そしてヨウくんは、私のいる第一病院ではなく第二病院へと運び込まれた。

あそこには私の元助手もいる、信じてみよう。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


私の元助手、平坂ヨモツから連絡がきた。

ヨウくんは大脳以外の全ての機能が死んでしまったそうだ、いわゆる植物人間状態だ。


ヨモツ君はケイを悲しませまいと完成したばかりの『サンドスター療法』を薦めてしまったそうだ。

あれはまだ実験の回数が少なすぎる…だが後に引けないものは仕方ないと言うしかないのか?


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

——————————


日記は聞き慣れない言葉がたくさん書いてあった。


「サンドスター療法…?」

「父さんのメモによると、『機能停止した体の部位を完全復活させて死すらも超えてしまう』らしい。」


…やっぱり僕は死んでいたのかな…?

もう少しページを進めて読んでみよう。


————————

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

ヨウくんがカプセルに入って一週間、案の定異常事態が発生した。

ヨモツ君の連絡によると、ヨウくんの脳波に異常をきたしているとの事だ。


送られてきた資料を見てみると、サンドスターを標準の量よりも多く注ぐと動物としての防衛本能、ヨウくんの心の中に眠る闘争衝動なんかが刺激されていると取れる結果が出ていた。


これでは仮にどこかの時代で復活したとしてもアニマラムネなどのサンドスター補給食を口にした場合、じわじわと精神を本能と衝動に蝕まれてしまう。


これはすぐに中止にするべきだ。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

サンドスター療法の装置はテロやハッキングを防ぐために、管理者権限を持つ私が直接出向くしか止められない。

まだ暴れているセルリアンがいて危険だとツクヤは言ったが未来のパークのために行くしかない。


ツクヤには「私に何かあった場合、コールドスリープでヨウくんが目覚める時代へ行き彼を救ってほしい。もちろんお前に強制はしない、その場合は勇気ある者に頼りなさい」と言ったが、あいつは「ヨウが今の俺を作ってくれた、ヨウは大切な親友だ。そんなヨウを放っておけるわけがない」と間髪入れずに答えた。


さすがだ、この二人は…なのだろう。


そんなヨウくんを機械を止めて奪ってしまうのは辛い、だが判断を迷っていてはパークはいつか滅びてしまう…

私はひたすらに迷い、このページに文字を書いている。

そのモヤモヤを晴らすためになるかはわからないが私の、いや…俺のありのままの気持ちをここに書き記す。




孤児だった俺を拾ってくれた父さんや母さんを火事で亡くし

あさましいプライドと必要以上の責任感で家に帰らなかったせいで妻を亡くし

今度はこのパークで巡り合った親友の息子と妻を喪わせてしまった。


今日、この場だけは『やはり俺は疫病神だ』と自嘲させてくれ。

という独り言だ。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

————————


…わけがわからないよ、わかるように説明してよ…


「このページが最後だ。

この後父さんはバイクに乗って出掛けて…セルリアンに襲われて死んだ…。


父さんがを使うということは…ものすごく悲しかったのだな…。」

「ツクヤ…」


僕は無気力な頭のままツクヤに訊いた。


「本能とか…衝動とか…それが本当なら僕は…いつかみんなを傷つけちゃうってことなの?」

「いや、そうと決まったわけでは…」

「もう誤魔化さないで…。

エカルさんを助けるときに感じた、心当たりはある…『目の前の相手を倒さなきゃいけない』、その言葉が頭に浮かんだんだ。」


僕は…僕は…


「ツクヤ…ごめん…」

「やめてくれヨウ、お前は何も悪くない…これは誰が悪いとかそういう問題じゃない…。」



車の中は怖いくらいに静かだった。

車の中の誰一人も笑わないまま、車はロッジへと向かっていった。






帰ってきた頃にはもう夜、太陽はとっくに沈んでいた。


〜次回へ続く〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る