Fearless
僕たちはドットが待つサバンナ地方まで来た。
車を走らせていくとセルリアンの群れが集まっていた。
「すごい数のセルリアン…この中にいる…?」
「おそらくな、二人とも気をつけろよ…」
「はい…」
『——? ——!』
僕たちを見つけたセルリアンはぞろぞろと動いたかと思うと、僕たちを囲むように並んだ。
するとセルリアンの体に隠れていたドットが姿を現した。
「やあヤあ、ここまでご苦労。」
「ご苦労だと?誰が苦労をかけたと思ってるんだ!!」
ドットの挑発的な態度にツクヤは強い言葉で返した。
「まアそう怒るなょ、これから一緒に遊ぶンだからさ。」
「遊ぶだと?」
「まあまあ、少し落ち着いてください。」
ツクヤが攻撃しようとすると、スナネコが落ち着かせた。
いつも冷静なツクヤがここまで感情的になるとはビックリだけど…それほどパークのみんなを傷つけられるのが許せないんだね。
ツクヤは一旦落ち着くと、ドットに質問した。
「っ…戦いの前に幾つか聞きたいことがある。」
「ん?」
「お前は何者だ?なぜセルリアンたちを率いることができる?」
「ほぉ、そんなことが気になるか。
教えテあげる前にボクも質問しタいことが…
キミ、女王って知ってる?」
女王…どこかで聞いたことがある気がする…
「ああ、セルリアンを統括することができるセルリアンの王の事だろう?
このパークは何度も女王による脅威に脅かされていた。」
「正解っ…ここで一つカミングアウト。
女王はボクにトってお母さんなんだ。」
「なに…!?」
…!?
だからドットはセルリアンたちに指示することができたんだ…
「少し長々と話さセてもらうよ?コホン…
昔々、女王はセルリアンの繁栄のための過程として邪魔なフレンズたちと戦っていキました。
だけど一度もフレンズに勝ったことはあリませんでした…
いつしか、本能のままに動く機械のような存在だった女王の中に『フレンズに一矢報いたい』という心が生まレました。
そこで女王は一つの結論に至った…
『我々に足りないものは心』だと。
その結論に至った女王は、自身の肉体を復活させるために風にのってどこからか落ちてきた『龍が描かれたカード』の輝きと体の一部を融合させ、その体の一部の中で眠りました。
その体の一部から生まれたのが最初の姿のボクだよ。」
ドットがそう話し終わると、一瞬だけドットの影が恐ろしいドラゴンの姿に変わっていた気がした。
「じゃあなんで今はヨウの姿にナったのか、それも今から教えてあげる…
ドラゴンの姿をコピーしたボクは女王の命令と内に宿る復讐心のままにパークを破壊しようと暴れ回りました。
そりゃもう凄いよ、後で思い出させてあげる。
だけどその強くてカッコいい
その後ボクは小さな姿になりパークを彷徨って月日は流れ…とある病院でコールドスリープされているツクヤを見つけた。」
ツクヤ…?僕じゃなくて?
もしかしてツクヤの記憶も一部曖昧なのは…
「お、少し読めてきた顔だね。
ボクは不完全ながらも
「俺がヨウのことやここにきた理由を忘れたのは…?」
「その通り…。
奪った輝きから姿を変えることはできなかったけど、記憶の一部を読み取った事でボクは『ヨウ』の存在を知りそいつから輝きを奪おうとヨウのところに向かった。
あとはワかるね?
ヨウの輝きはツクヤのものよりも奪いヤすかった、なんでだろうねぇ…くすくす。
ヨウが眠ってたカプセルの近くでヒトだかフレンズだかがカプセルの近くにいタんだけど、オ仲間を向かわせてそのスキに奪ってきたよ。
そしてボクはヨウの心の奥底にある闇をコピーし増幅させ、『戦いを楽しみたい』という気持ちを持つようになった。というわけさ。」
そうやってドットが生まれたの…?
「女王はいずれボクを生贄にするつモりだろうけど、ボクはボクのルールで動く。
それが今のボクだからね。」
ドットはツクヤの質問に一通り答えて、やれやれと言うように背伸びをして言った。
「さてと…クソ長い説明、失礼しタね。
そろそろ始めチゃおっか、カモン!」
『パチンッ』
ドットが指を鳴らすと、ドットと僕たちを囲むように格闘技のリングのような囲いが現れた。
「なんだこれは!?」
「おお…」
「バトルにはバトルに相応しい戦う舞台ってノがあるの、いいでしょ?盛り上がるでしょ?」
『———!!!!』
セルリアンたちは歓声をあげるように言葉にならないような呻き声をあげた。
このセルリアンたちは観客、僕たちは見せ物ってところ…?
「赤コーナー!大胆不敵な黒点ファイター、ブラックドット〜っ!!」
ドットは楽しそうにセルリアンたちにアピールをすると、僕とツクヤをリングの外に追い出した。
「さて、まずはキミから相手してもラおっか?
青コーナー!砂漠が生んだ儚きエンジェル、スナネコ〜っ!!」
「ふえ…ええ…?
ヨウ…どうなってるんですかぁ…?」
スナネコは突然のことにおろおろとしていた。
僕はスナネコを助け出すために手を伸ばしたが…
『———!!』
「わっ…何するの!?やめて!」
「く…クソッ!!」
セルリアンが僕とツクヤを押さえ付け、動けなくしてしまった。
ドットはスナネコを見ながら戦いの構えを取った。
「ふふ、キミにはボクと戦ってもらうよ?」
「ゃ…こうなったらやるしかないですね…。」
スナネコは一瞬嫌がる素振りを見せたが覚悟を決めたように構えた。
「ダメだスナネコ、逃げて!」
「逃ゲられないよ、このリングは特別なんだ。」
「逃げませんよ、ボクを非力だと思わないことです。」
「ほほう?それは楽しミだ。では…
3.2.1…ゴー!」
ドットの合図と同時にバトルが始まった。
スナネコはドットに飛びかかっていった。
「ふしゃーっ!!」
だけどドットは一歩も動かなかった…けど…
「ふフんっ!」
スナネコの攻撃を受け止めてカウンターアタックを叩き込んだ。
スナネコはリングの紐に倒れ込んだ。
「ぐぬぬ…ナメないでください!」
スナネコは野生解放して全力で引っ掻いた。
これにはドットもひとたまりもないはず!
「いって〜、まあこの程度…」
僕の読みに反して少し痛がる程度しかドットには効いていなかった、嘘だ…。
「ナメてるのはそっちじゃアないかい?」
「な…?」
「くらえっ!!」ドゴォッ
「ぎゃあごっ!!」
ドットはスナネコの頭を狙って回し蹴りをすると、スナネコはリングの上に倒れ込んでしまった。
そしてドットはスナネコを踏みつけてさらにダメージを与えた。
「が…うがぁっ…」
「そノ程度?がっかり。
…安心してよ、コロしはしないから。」
見てられない…こんなの…
止めなきゃ、そう思って声をあげようとした瞬間、ツクヤが大きな声で言った。
「待て!」
「なに?ツクヤ。」
「スナネコは棄権する、次の相手は俺だ。」
ドットは少し考え込んだけど…
「……しょうガないなぁ?ボクの独壇場じゃつまんないシ一点譲ってあげるよ。
ほら、返す。」
そしてドットはスナネコをリングから乱暴に降ろした。
「にゃ…ヨウ、ごめんなさい…」
「ううん、スナネコは悪くない…
ありがとうツクヤ、でも…」
「気にするな、俺が勝てばいい話だ…」
僕はかろうじて封じられていない片腕でスナネコを抱きしめた。
「ごめんねスナネコ…
ドット…許さない…!」
僕の中で怒りや悲しみが渦巻いているのが感じた。
だけどそんな僕にお構いなしでドットはまた実況ごっこを始めた。
「さあ、続いて青コーナー!頼れるみんなのムーンナイト、ツクヤ〜っ!!
「お前の好きにはさせない!」
ツクヤは大きな斧を手に取るとリングの上へ上がっていった。
「おー、武器?腕っプしに自信がなくなっちゃったのかい?」
「…っ!!」
ドットは鼻で笑うようにツクヤを馬鹿にすると、やれやれというようなジェスチャーをして言った。
「ま、どうでもいいよ。
バトルが面白くなルのならね。」
「言わせておけば…!!」
ツクヤは少し乗せられ気味にドットを睨んでいた。
「じゃ、スタート!」
「うぉおっ!!」
ドットが合図するや否やツクヤは武器を振り下ろした。
「あ、よいシょっ!!
ねーねーみんな今のミた?」
ドットはひらりと避けるとギャラリーのセルリアンにアピールをしながら逃げ回った。
「ちょこまかとぉ…!!」
「そんナに怒ると〜、男前な顔ガ台無しだぞ〜♫」
「調子の良いことを言うな!!」
ツクヤはギリギリ冷静さを保ちながら、煽るドットを捉えようと攻撃を続けた。
僕だったら一回目の煽りでダメだったかも。
「そろソろ…かなっ?」
「何が…」
「えいっ!」
ツクヤが体力を消耗して一瞬隙を作った瞬間、ドットは自分の脚をバネにしてジャンプした。
「うわっ!?」
「からの〜…キーック!!」
そしてバネに変えた脚を元に戻すと強烈な飛び蹴りをツクヤに喰らわせた。
「ぐわっ!!」
「続けていクよ〜?
ふぅ〜…チェストォ!!」
ドットは拳を引き思いっきり力を溜めると、ものすごい勢いでツクヤの体を殴りつけた。
「がっ…」
「ツクヤ!!」
ツクヤはあまりの衝撃に武器を落としてその場に倒れてしまった。
「どーよ?こレがボクらの能力とヨウからコピーしたパワーを掛ケ合わせた最強の戦術だよ!!」
「お…俺が…遅れをとるなんて…あぐっ!!」
ツクヤが地面に伏せていると、ドットはツクヤを見下すように蹴飛ばした。
「なんだ、こノ程度?」
「くっ…まだだ…!おおぉ!!」
ツクヤは武器を取らずに立ち上がり、身体中の力を集中させて野生解放した。
「なんだ…最初かラそれやればいいのに、ケチ。」
「なら今から存分に使ってやる!!」
ツクヤはそういうとドットの懐めがけて突撃した。
「そらっ、喰らえ!」ダダダダダ
「おぉ、素晴らシい連続パンチ…良いねぇ…」
ドットはツクヤのパンチをいなしながらちょっとずつ体をずらしていった。
だけどツクヤは攻撃を続け、最後にストレートパンチを喰らわそうとしていた。
「おおおぉぉ…らぁ!!」
「っと…残念!」
ツクヤのパンチは空をきり、ドットはツクヤの後ろに回り込んでいた。
「あーまいんダよっ、とね。」
「ぁがっ!?」
ドットはツクヤの頭に強烈なかかと落としを食らわせてリングの上にダウンさせた。
「ボクの本気の10%を出さセるなんてさすがだね、でもキミの負けダよ。
さあ降リて降りて。」
ドットは倒れてるツクヤを起こし退場を促した。
だけどツクヤはドットへの攻撃を続けようとした。
「まだ…お…れは…」
「ダメ、そレ以上やったら…死ぬよ?
…ほら、戻った戻った。」
ドットは一言脅すとツクヤをリングの外に投げ捨てた。
そしてセルリアンは僕を抑えるのをやめた、次は僕の番ということだろうか。
「ツクヤ!!」
「申し訳ない…勝てばどうとかなんて言っておいて…」
「ううん、ツクヤは頑張ったよ…?」
セルリアンが僕を抑えるのをやめたおかげで、僕はツクヤの元に駆け寄ることができた。
ボロボロのツクヤを抱きしめて、僕はいつのまにか涙を流していた。
「だい…じょうぶ…だ、ヨウ…
俺の鞄を…取ってくれないか…?」
僕はツクヤの言う通りにツクヤの鞄を取ってツクヤに渡した。
するとツクヤは鞄から緑色とピンク色の瓶を取り出して、緑色の方を飲んだ。
「ん…くっ…はぁっ…
これで最小限の回復はできた…戦えるかは怪しいが…ヨウ、このピンク色の方はスナネコに渡してくれ。」
「わかった…スナネコ、飲んでみて…」
「ありがとうございます…ん…」
スナネコもピンク色の方を飲んで、力を少しだけ回復させた。
「ツクヤ、これは…?」
「前に渡したアニマラムネの一般的な種類のものだ。」
アニマラムネ…ライブステージでの戦いを思い出すね…
なるほど、これもアニマラムネだったんだね…。
「ねー、水分補給おワった?」
「今そっちに行くよ。」
ドットがリングの上で呼んでいる、僕はリングに向かって歩いた。
リングの前まで立つと、ドットがふいに話しだした。
「それにしテもさぁ…そこの2人、練習サボってんじャないの?噛ませカと思ったよ。」
「はぁ…?」
ドットの言葉に対し、そしてドットに対し僕の中でたしかな怒りが湧き上がるのを感じた。
「やらレるにしてももう少し粘るっしょ、脆スぎない?」
「ううゔ…」
「よせ、ヨウ!挑発に耳を貸すな!
俺と同じ結末になるぞ!?」
ツクヤが僕に叫んでいた。
だんだんよく聞こえなくなってきた。
「キミも少しくらい恥ずカしく思いな、そんな雑魚と一緒にいることヲさぁ…」
「雑魚…だって…?いいかげんにして…!
ツクヤを…スナネコを…僕の大切な友達を…
馬鹿にするな!!!!!!」
僕の中から何かが一気に湧き上がって、溢れてくるような感覚がした。
—————————ツクヤ視点————————
「なんだ…!?」
ヨウはドットへの怒りのままに声を張り上げた。
その瞬間、ヨウを中心に砂嵐が吹き荒れた。
「くクくく…」
ドットは全て予測済みだったと言いたげに笑っていた。
砂嵐はリングを吹き飛ばし、ギャラリーのセルリアンたちを豆粒のように吹き飛ばしていった。
ドットは折角のリングが壊れただとか悪態をつきながらその様子を見ていた。
砂嵐が晴れると、ヨウがサンドスターのオーラに包まれながら立っていた…だが、その見た目は俺たちが知っているヨウとは少し違っていた。
どう違うかと言うと、ヨウに耳と尻尾が生えていた。
「ヨウ…お前、まさかそれ…」
翼のように伸びた耳、筆のようにしなやかになびく尻尾…
髪の毛も一部分が白くなっていた。
俺はこの姿に見覚えがあった。
「ヨウ…ですよね…?」
しかし、スナネコはヨウの変化に対し俺よりも驚いていた。
そしてスナネコは…一言呟いた。
「フェネック…?」
〜次回に続く〜
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