黒点横断

久しぶりに図書館の布団で寝た、だけど寝れた気なんて全然しなかった。


「おはよう、ツクヤ…」

「ん、早いな。」

「まあ…ね。」


それもそうか、大変なことがいろいろ立て続けに起こって、それはまだ終わってないんだから。


「みんなの様子を見てきてくれ。」

「わかった。」


ツクヤに頼まれて僕はみんなの様子を見に行った。


「みんな、起きてる?」

「ん…おはようです、ヨウ。」

「ふぁ〜あ…起きてるぞ…。」

「わたしも〜…」


三人はしっかり起きていた。

みんなそれぞれ伸びをしたりして眠気を覚ますと、体を起こした。


そして木の上には…


「おや、ヨウだったのですか。」

「しんみりとしすぎて誰だかわからなかったですよ。」


ちょっとばかり毒舌な博士と助手がいた。

まあそういう所を直せとは言うつもりはない。


「もう…まあいっか。みんなおはよう。」


みんなが起きている事を確認すると、ツクヤが地下室から上がってきた。


「みんな、おはよう。

食事の用意をするから少し…」

「ツクヤ…。」


僕は朝ごはんを作ろうとするツクヤを少し止めて話した。


「ん?どうした?」

「今日はツクヤにとってもキツいだろうし、お休みでいいよ…?」

「ん…それもそうだな、ありがとう。

終わったらまた沢山作るからな。」


料理が好きなツクヤだけど、嫌な顔ひとつせずに他の提案に賛成してくれた。

ごめんね、ツクヤ…


「そう言うわけで…ジャパリまんになるがいいか?」

「いいですよ〜」「時間に余裕があった方がいいからな…」「つっちーの言う通りだよ〜」


だけど問題はあの二人…


「やれやれ、久しぶりにツクヤが帰って来たのに料理もなしですか…」

「まあ、仕方ないのです。そのかわり全てが片付いた後にたらふく食べるのです。」

「それもそうですね、助手。」


…一応納得はしてもらってるみたい。


「それじゃ…いただきます。」


〜30分後〜


「ごちそうさま、そろそろ出発しなくちゃ…」

「そうだな。平原、湖畔、砂漠、ジャングル…あと余裕があったら高山の様子も少しずつ見ていこう。」


僕たちは五人でいつもの車スタッフカーに乗り込み出発した。

みんな無事だといいけど…





〜平原地方〜


「ライオンさん!ヘラジカさん!」

「みんな、無事か?」

「ヨウ〜、久しぶり!」

「おお〜ツクヤ、元気にしてたかぁ!?」


平原にはライオンさんとヘラジカさん、2グループのリーダー二人がいた。


「他のみんなは?」

「今は城の中に避難させてるよ〜…」

「ここもアイツに?」

「ああ、ヨウにそっくりな奴がセルリアンの大群を率いて移動していたな。」


二人の話だとセルリアンの大群を連れたドットは、ロックスさんたちに呼び止められると鬱陶しそうに睨むと大型のセルリアンをけしかけてその間に湖畔まで行ったらしい。


「なかなかに強いセルリアンだったぞ〜?」

「なんかね、『ろぼっと』みたいな感じだったね〜…

たまに五つに分かれたりして攻撃がバラけたりするし〜…」

「ロボット型セルリアンか…かなり厄介だったろう…。」


五つに分かれるロボット…もしかしたら僕のカードのモンスターかもしれない。

そういうロボット機皇帝は見たことがある…。


「今は大丈夫か?」

「まあね〜…」

「私たちが見張っているが、特に問題はなさそうだ。」

「そっか、よかった…」


平原のみんなの確認を終えて、僕たちはもう一度バスに乗り込んだ。


「休むときには休みなよ〜?」

「お前達ならやれる!信じているぞ〜!」





〜湖畔地方〜

「ビーバーさん!プレーリーさん!ミーアさん!」

「ヨウ、久しぶりっす…!」

「元気でありますか!?」

「しばらくぶり、ですわね。」


三人とも元気そうでよかった、公園も壊されてないみたいだし…

ツクヤも三人に声をかけた。


「三人とも、久しぶりだな。」

「あっ…センセイ、久しぶりっす〜…!」

「その節はどうもであります!」


センセイ…ドクターだから先生?


「知り合いだったの?」

「ああ、ミーアキャットがフレンズ化したときに図書館に来たんだ。この二人も一緒にな。」

「元はさばんなちほーからあてもなくさすらっていたんですの、湖畔に来たときにお二人に出会ったんですわ。」


そうだったんだね…


「そうだ、僕に似たセルリアンって見なかった?」

「見たっす〜…セルリアンをぞろぞろ連れてきて…」

「隠れて見ていたら小さなセルリアンたちをけしかけて襲ってきたでありますが…」

「襲ってきた分はきっちりお仕置きしましたの。」


やっぱりドットはここを通って行ったんだね…


「怪我はないか?」

「大丈夫っすよー…」「ミーア殿、強かったでありますなぁ!」「…照れますの。」


よかった、ここのフレンズさんも怪我はなかったみたい…


「それじゃあ、なるべく安全なところで身を守っていてくれ。」

「僕たち、行くね。」


〜砂漠地方〜


砂漠地方のバイパスに入ってきた。

でもここは前に岩で塞がれていた気がするけど…?


「あれ?岩がなくなってる…」

「ホントですね…。」「前はここにあったんだがなぁ…?」


なんと道を塞がっていた岩はきれいに無くなっていた。

そして岩があったところの地面には一枚の紙が置いてあった。


『前にキミたちを邪魔するためにおいたけど、自分が通るのに邪魔になったから退かしました☆ ドットより』


「「・・・。」」


前に岩を置いたのも岩を退かしたのもドットだったんだ…

まあ、これで早くジャングルまで行けそうだね…


その前に見回りをしよう。


〜30分後〜


「砂漠地方のフレンズたちの安全はとりあえずこんな感じでいいか。」

「そうだね、次はジャングル地方か…僕は行ったことないね。」

「ジャングルにはオレの知り合いもいる、アイツは頼りになるぞ。」


ジャングルにそんな頼りになる人がいるなんて心強いね…!

ということで僕たちは急いでジャングルに向かった。


〜ジャングル地方 入り口〜


車の中、僕たちはライオンさんのアドバイスを参考に『休める時には休む』ことを考えて休憩していた。


「ジャングルちほーについたヨ、ここにはジャングルに生息するフレンズがたくさんいるヨ。」


ラッキーのアナウンスが聞こえてくると、車はジャングルの中に入って行った。




「すこし暗くなったね…。」

「木に囲まれているからな…。」



『キキーッ…!!』


ジャングルの奥まで行ったところで車が急に止まった。

そして…


『ドンッ!!』


何かが車を揺らしてきた。

セルリアンの襲撃かと思った僕たちは急いで車から降りた。


「セルリアンか!?」


ツクヤが戦闘態勢を取ると、車のかげから黒い格好のフレンズさんが現れた。


「そこのお前…!さっきここを襲いにきたやつの仲間か!?」

「え…僕?」

「そうだ、お前だ!」


どうやらこのフレンズさんは僕とドットを間違えているみたいだ、困ったな…。


「違うよ、それは僕に似たセルリアンで…」

「この期に及んで他人のせいとは見苦しいぞ…!!

後ろの奴らごと一匹残らずぶっ潰してやる!!」


そのフレンズさんは鬼のような形相で僕たちに殴りかかってこようとした…

その時…!







「やめろ、ゴリラ。」


木と木の間から、ツチノコと同じような尻尾を持ったフレンズさんが現れた。

ツチノコはそのフレンズさんを驚いたように見ていた。


「お前は…キングコブラ!!」

「ふふ、久しぶりだな…ツチノコ。」


この人が…頼れる知り合い…!?

たしかに物凄く頼もしいオーラを放ってる…

キングコブラさんは、ゴリラと呼ばれたフレンズさんの前に立ち塞がった。


「キング!!どうして邪魔をするんです!?そいつは…」

「ゴリラ、よく見てみろ…アイツの全身は黒かっただろう?」

「…!!言われてみれば…全然違う…。」

「そういうことだ。」


キングコブラさんは、ゴリラさんの誤解を解いてくれた。

感謝しかないね…。


キングコブラさんはゴリラさんを連れて僕たちの前に出た。


「さっきは彼女が迷惑をかけた、だが悪気があったわけではないんだ。許してやってくれないか?」

「ううん、気にしないで!…キングコブラさん、優しいんだね?」

「ふふ、民のことを思いやるのも王の役目だからな…。」


すごい…最高最善って感じ?

物凄く優しい人だ…

僕が感心していると、ツクヤがキングコブラさんに質問した。


「ところで…そこのゴリラ、もしかして若オスがフレンズ化した個体か?」

「ああ…おそらくはそうだろう、気がついたら付いてきていたから『先導者』の素質を磨いてあげているんだ。」

「私…今はまだ未熟だけど、いつか絶対『親分』になるのが夢なんだ!」


親分か…なんか良いね、それ…!


「応援してるよ、ゴリラさん!」

「ありがとう…!!さっきは失礼なことをして本当にすまなかった…!!」

「良いんだよ、そんなこと。」


僕は笑顔で返した。

ゴリラさんと話していると、横でほほえんでいたキングコブラさんが何か思いついたように話しかけてきた。


「そうだ、私達もこの辺りの安全を守りたいと思っている。

さばんなちほーのゲートまでついて行っていいか?」

「ありがとう、お願いするよ…!」


僕たちは、ゴリラさんとキングコブラさんと一緒に車に乗り込んだ。


〜高山のふもと〜


「ああそうだ、ここで一旦止まってくれ。

あと、ナミチスイコウモリ…お前もついてきてほしい。」

「ん?どうしたの?」


車は高山のふもとまで走り、ツチノコがそこで止まるように言った。

そしてツチノコとナミちーが降りていった。


「高山にいる友人が心配だ、様子を見に行きたい。」

「成る程!私も手伝うよ!」


「それじゃあ、後から迎えに来るからね?」

「気をつけろよ、ナミちー。」

「ああ。」「うん!」


ここで一旦二人とわかれた。


〜〜

さらにしばらく走っていると、川に大きな橋と小さな飛び移り橋がかかっていた。

僕はキングコブラさんに質問した


「あそこ、なんで橋が二つあるの?」

「小さい方の橋は昔『かばん』がじゃんぐるちほーのフレンズたちと共に作った橋だ。

とてもよくできている…。」


おお、またかばんさんが出てきた…

大活躍なんだね…。


「で、あっちの大きな橋は『新アンイン橋』と呼ばれている。

湖畔のビーバーたちが前に作ったものだそうだ。」

「ビーバーさん達もすごいっ…!」


パークはフレンズさんたちが力を合わせて少しずつ住みやすいように変わってるんだなぁ…と思った。


橋を渡り川を横切って、一気にジャングル地方の出口まで向かって行った。


「今のところ危険なセルリアンはいなかったが…。」

「この先、何か音がしますね…。」

「ああ、俺も匂いを感じていた。」


慎重にゆっくりと進んでいくと、二人の言った通り大きなセルリアンがゲートの前に立っていた。


その姿は雷、水、風と書かれた三つのモンスターが一つに合体して生まれた、門を守る巨人のモンスターゲートガーディアンに似ていた。


「さしずめ余計な戦力を削ぐ門番か…どうしたものか…?」


ツクヤが困っていると、キングコブラさんとゴリラさんが車から降りて行った。


「あっ…二人とも…?」

「ここは私たちに任せろ!」

「民の行く道を阻むものは、我々が沈めてやろう。」


二人とも…ありがとう…!!


「だけど、二人だけで大丈夫かな…?」

「それなら問題無さそうだぞ?」


キングコブラさんが後ろを見ると、ジャングルから二人のフレンズさんが飛び出してきた。


「何がどうなってるのか全然わからなかったけど、大体わかってきたよ!

私たちも加勢する!いくよ、姉さん!」

「ああ、すぐに終わらせるぞ。ジャガー。」


ジャガーさんとブラックジャガーさん…!

来てくれたんだ、これなら大丈夫だ!


「頼もしい味方も増えたことだ、ここは我々にまかせろ。」

「私たちがひきつけてるあいだに行ってくれ!」

「わかった!お願い、ラッキー!」

「了解、少しだけとばすヨ。」


『ブロロロロロローーーーンッ!!』


僕たちを乗せた車は勢いよく走った。

ドットが待つサバンナの方を目指して……




————————————————————


サバンナ地方の広い場所、ドットがギャラリーのように集まったセルリアンに囲まれながら不敵な笑みを浮かべていた。


「ふふふフふ…待ってるよ、ヨウ…

せいぜい本気ノ30%は出せるといいなぁ…。」



ヨウたちはドットを退けることができるのか…


——————————————————————


〜次回に続く〜

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