誰かのために強くなれるなら

水辺地方のライブステージの近辺の森、2人のフレンズが話をしながら歩いていた。


「いやー、エカルに会うのもちょっとぶりじゃない?」

「ですね…あの子がどれだけ強くなったのか楽しみです…」


アルシノとオニコ、前にエカルと一緒にいたフレンズの2人だ。

2人はエカルに会うために、ライブステージのある場所まで行こうとしていた。


しかし…


「ちょうどイイのみつケた!」

「わあっ!?」

「なっ…!?」


そんな2人の前にドットが現れ、オニコを捕まえてしまった。

突然現れた異形の存在を、アルシノはギッとした表情で睨んだ。


「貴方は一体何者?ヨウさんに似ていますが全くの別人のようですね。」

「まあマあ、そんなことどうだってイイじゃない?

それよりボクったら寝坊しちゃっテさ、お仕事引キ受けてくれないかな?」

「はぁ?」


ドットからの訳の分からない頼みに、オニコもアルシノもただただ呆然とするしかなかった。


「どんな用件かは知らないですが、丁重にお断りさせていただきます!」


アルシノが二又の槍を構えて戦闘体制を取ると、ドットはダルそうな顔で返した。


「あーやっぱりダメだヨね、わかってた。

まあキミたチに最初から拒否権は…ないんダけどね!!」

「わあっ!?」


ドットはオニコに虫セルリアンを取り付けると、乱暴に蹴り離してアルシノの攻撃をいなした。


「へへっ、鈍イっ!!」

「そんなっ!?」


そして槍をはたき落とし、体に思いっきり回し蹴りをした。

アルシノはその場によろけながらも、ドットをさっきよりもきつく睨んだ。


「貴方、今オニコさんに何をしたんですか?」

「ふフん、それをキミが知ル必要はない!」


ドットは自分の腕を伸ばして、伸び縮みの出来るパンチアームに変化させた。


「な…なんなんですかそれは!?」

「ビックリした?セルリアンであるボクにかかればこんナことも出来るんだよ…っと!!」


ドットはパンチアームを伸ばし、アルシノにめがけて強烈なカーブパンチをお見舞いした。


「うぐっ…槍でガードができない…」

「へへっドうよ?

それにこうやって足をロケットにすることだって出来るンだよねっ!!」


ドットは腕を元に戻して、足をロケットレッグに変化させた。

そしてそのままアルシノに体当たりし、大きく吹っ飛ばした。


「ぐっ…あ…」


アルシノはあまりの衝撃に、そのまま気絶してしまった。


「やれやれ、時間ないのに手コずらせちゃって…それじゃ頼むよ。」

『ギーッ…』


ドットはため息をつきながら虫セルリアンを這わせ、倒れている二人に指示を出した。


「ま、本丸をゲットする前のイイ前菜にはなッてくれよ〜っとね…とりあえず、ライブステージまデ行っててよ。」


そして、ドットは急いだ様子でライブステージに向かった。



「さーて、今度はどこに隠レてようかな?」



そして、ドットが居なくなってすぐ…


「「……。」」


ドットに倒された2人は生気のない様子で立ち上がり、機械のような表情でライブステージまでめざしていった。


————————————————————


「みんな…起きて。」


朝だ…こんなに気持ちが良くない朝は初めてだった。

外を一回り見回った後、僕はみんなを起こした。


「おはようございます…」

「おはよう〜…」

「あんま寝れなかったな。」


さて、先を急がなくちゃね…

僕たち、本当に寝てて良かったのかな…


「…。」

「どうした、ヨウ?」


ツチノコは僕を心配して、僕にそっと声をかけた。


「いや、寝てて良かったのかなって…」

「当たり前だ、寝なきゃまともに戦えねーだろ?」

「…それもそうだね。」


寝なきゃまともに戦えないか…そうだよね…

肯定の言葉を聞いて少し元気が出た。


「それじゃ、そろそろ行こうか…」

「だな。」「はい。」「うん…」


「それじゃ、お願いラッキー。」

「わかったヨ。」


ラッキーが操縦するスタッフカーは静かに走り出した。



〜移動中〜


「…ここまでフレンズがぜんぜん居ないね。」

「ツクヤががんばってくれたからですね…」


そうか、ツクヤも頑張ってるよね。

僕も頑張らなきゃ…!


『スパーンッ…ドスッ…』


しばらく進んでいくとなんとなく不思議な音がしてきた。

ここに誰かいるかもしれない。


「おーい…誰かいる?」


みんなで車から降りて、おそるおそる呼びかけてみると、だんだんとこっちに近づいてくるのがわかった。

そして…茂みのなかから出てきたのは…


「…」「…」


どこか様子のおかしいオニコさんとアルシノさんだった。


「どうしたの二人とも…?」


もしかしてと思って肩を見ると、やっぱりあのセルリアンがくっついていた。


「あっ」「ヤバ…」「まずいぞ…」

「遅かった…!!」


僕達はすぐに後ろに下がり、いつかかってきてもいいような体制を取った。


「……」


だけど二人とも僕たちのことを気にも留めず、ライブステージのある方に走って行ってしまった。


「え?…どういう事?」

「ドットに操られてるからオレたちと戦いに来るかと思ったんだが…おかしいな。」


何が目的なんだろう、とりあえず車に乗り込んで追いかけなくちゃ…


「行こう…」


車は走って行った二人を追いかけて静かに走り出した。


〜さらに移動中〜


移動していると、ふいにナミちーがぽつんと呟いた


「オニちゃん…」

「大丈夫ですよ、絶対助けましょう。」


昔いっしょにパークを旅していた仲らしいし…心配だよね…

僕だってツクヤに何かあったら嫌だもん…


「そうだね…私達が助けてあげなくちゃ。」

「オニコさんもアルシノさんも助けよう…」


僕たちはさらに決意を抱いてライブステージへ向かった。


〜ライブステージへ〜


ラッキーの運転のおかげで、すぐにライブステージへ着いた。

ライブステージではもうすでに誰かが戦っていた。


「アルシノさん!どうしちゃったんですか!?

うわっ!!」


エカルさんが勇敢に立ち向かっている…オニコさんは…?


「キイィィィ…」

「上だっ!!」


みんなでスタッフカーから一斉に降りて、戦いの体制を取った。

そしてナミちーが僕に話しかけた。


「ヨウ、ここは私に任せて欲しい…

オニちゃんは私の親友だから…」

「わかった…でも一人じゃ危ないよ…?」

「なら、ボクがナミちーを援護しますね。」

「じゃあオレとヨウはアイツアルシノを抑えよう。」


そうして、僕たちは二グループに分かれて二人を止める事にした。


「それじゃあ…作戦開始!」

「「おーっ!!」」


____________________三人称____________________


ヨウと分かれたスナミチーの二人は、オニコを止めるために動いた。


「オニちゃん!私だよ!?

私がわからないの…?」

「キイッ!!」


オニコはさっき見た時とはうってかわって、野生の生き物のような目をしていた。


「おお…なんて恐ろしい目…。

えいえいえいっ」


スナネコは砂団子を作っては投げ作っては投げ、オニコを妨害しまくった。


「ナイス、スナちゃん!

今のうちに私が抑える!」


ナミちーはオニコをしっかりとホールドしたが、オニコはそれを逆手に取りナミちーを背に地面にぶつかろうとした。


「あぶなっ!?

ズルいよ、そんな戦術!」

「あ、地面に来ましたね。そりゃんっ」


スナネコはチャンスと言わんばかりにオニコに砂団子をぶつけまくった。


「ガッ!?ギィ!!」

「今ですよぉ、オニコを助けられるのは貴方だけです。」


スナネコは満足したように肩をぐるぐるほぐしていた。


「わかった…ありがとうスナちゃん…!

私が絶対に助ける!」


『バシュウゥゥゥッ!!』


その決意に反応するかのように、ナミちーの体からオーラが放たれた。


「こ…これは…?」

「おー、けものミラクル…だったっけ?

ナミちーも必殺技を使えますよ、おめでとう〜。」

「必殺技…?よくわからないけど…やってみる!」


そう言ってナミちーはオニコの頭上に現れ、全力で必殺技を放った。

そんな彼女のバックには、美しい月の幻影がキラキラと輝いていた。


「いっただっきまーすっ!!」


そして取りついているセルリアンに思いっきり噛みついた。


『ガブリッ!!』


【今宵も月下でイタズラを】


セルリアンはバラバラに砕け散り、オニコはその場で倒れた。


「やった!私…やったよ…!!」

「やりましたね〜、えらい。」


スナネコはナミちーをなでなでと撫で、活躍を労った。

そして二人はオニコを安全な場所に寝かせた。



二人の戦いと同じ頃…

——————————————————————


スナネコたちと分かれた僕たちは、アルシノさんを助けるためにエカルさんに合流した。


「エカルさん!」

「あっ…ヨウさん!」


エカルさんはアルシノさんとほぼ互角にわたりあっていた。

あれから一ヶ月?でだいぶ実力をつけていたんだね…


「グウッ!!」


アルシノさんは二又の槍を思いっきり振り回し、エカルさんを攻撃した。


「きゃっ!?」

「危ないっ!!」


僕はとっさにエカルさんを庇い、ツチノコに反撃を任せた。


「行かせねぇっての!」

「ヴッ!!」


アルシノさんは後ろに吹っ飛び、ツチノコを睨みつけていた。

その隙にエカルさんと僕は体制を立て直した。


「すごいねエカルさん、あれからあっという間に強くなった…。」

「ありがとうございますヨウさん…私は誰かのために強くなりたいと思って、あれから修行したんです…。」


エカルさんはアルシノさんを見つめながら、勇ましい表情で近づいた。


「誰かのために強くなる、そのためなら…

どんな相手だって怖くない…!!」


『バシュウゥゥゥッ!!』


「見ててください、私の全力…。」


エカルさんの顔は決意に満ちていた。

その決意に満ちた表情を見たツチノコは、さっと後ろに下がった。


「おっと…ここはオマエに譲るぞ?」

「ありがとうございます…。」


アルシノさんはまだ戦おうと、エカルさんに向かって突進していった。


「アアァァッ!!」

「そこです!」ガキンッ


【絶対防衛エカルがマモル】


「やぁーーっ!!」ズバッ


エカルタデタの牙をモデルにした双剣はアルシノさんにくっついていたセルリアンをピンポイントで狙い、なんとか剥がした。


「あ…うぅ…」


そしてアルシノさんはその場に倒れた…。


「はあ…はあ…私、助けられたんですね…!」

「すごいよエカルさん…!」

「よくやったな!…ん、あっちも終わったみたいだな。」


ツチノコが指差す先には、オニコさんを助けた二人の姿があった。


「どうやら作戦成功のようですね〜。」

「私…助けれたよ…!」


二人ともよく頑張ったね…よかった!


…と、安心していられる時間はそうは無かった。

みんなでお互いの活躍を労いながら話していると、草むらの中から誰かが飛び出してきた。


「きゃあっ!?」

「エカルさん!?」









「ふふふっ…今キミたち、完全ニやり切った顔じゃナかった?」




「ドット…!!」

「オニちゃんをあんな目に合わせて!許さない!」


草むらから飛び出してエカルさんを襲ったのはドットだった。


「おい、チェックポイントとやらはもう終わっただろ?

なんでソイツを襲う必要があるんだよ!」


ツチノコはドットを睨みながらキツいトーンで言った、だがドットは一切驚かずにニヤニヤしていた。


「いやぁ、チェックポイントの課題はこレからだよ?

アイツらはコイツを捕まエるための前菜だったわけだ。」

「はぁ…?」


それはつまり…まさか…!?

ダメだ、そんなことやらせるわけには…!!


「させない!」

「おっと、ボクとの戦イは最後だって言っタろ?」


ドットはヒラリとかわして、指をパチンと鳴らした。

すると、さっきアルシノさんに取りついていたセルリアンがカサカサとやってきた。


「さーて、やっチまえ。」

『ギィ〜…』


セルリアンはエカルさんの体に上って、肩にくっついた。

ドットに近づくことすらできない僕たちは、悔しいことに見ていることしかできなかった…。


「やめて!」

「やめる訳ナイでしょ?」


「う…うわぁぁぁ…!!」


肩にセルリアンがくっついて、エカルさんは苦しそうにもがいていた…だけどそれだけでは終わらなかった。


『———!!!』


どこからともなく他の普通のセルリアンが現れて、いくつか集まってきた。


「な…なに?」

「何が起こると言うんだ…。」

「怖いです…」


『ガシャン…ガシャン…』


セルリアンたちは形を変え、肩にくっついていたセルリアンと合体した。


兜、鎧、脛当て、靴、翼、そして剣…

その姿はまるで騎士の鎧のように変わっていった。


「おお、こんなにナるとは思わなかった…カッコいいねぇ…」

「……。」


ドットは気に入ったようにぐるりと眺めて、何かを思いついたように笑った。


「ボクもこれに名前ヲつけたいな、戦場を駆け回ル誇り高き戦士…その名も…


戦乙女ワルキューレ…かな!」


ワルキューレと名付けられたエカルさんは、セルリアンの翼で飛び立った。


「えっ?何やってンの?

勝手な行動はヨしてよ〜。」

「お前を楽しませる為だ。」


エカルさんはあのエカルさんとは思えない冷たい口調で返した。


「ん?どう言うコト?

というかキミ喋れルんだ、面白いね。」

「こんなに疲れた奴らと戦ったって面白くないだろう?」

「なるほドね、さすがだよ、ワルキューレ。」


ドットはニコニコした顔をしていた。

なんとも気に入らない顔だった。


「ドット!エカルさんを元に戻せ!」

「せっかく格好良くなっタんだからいいじゃない、図書館のあたりで待っテるよ。」

「ではな。」


そう言って二人は図書館の方角に飛び去ってしまった。


「大変なことになってるようですね…」

「今度はあの子かぁ〜…」


起き上がったアルシノさんとオニコさんが、悲しそうな顔をしながらやってきた。


「皆さん、先程は申し訳ありません…」

「ごめんね…ナミちー…」


二人は僕たちに頭を下げた。


「いいんだよ、全部あのドットって奴のせいだから…」

「それよりオニちゃんが無事でよかった!」


ナミちーはオニコさんにハグをした。

そして、アルシノさんとオニコさんは僕たちにサンドスターを分けてくれた。


「私たちのサンドスター…少ないですが持っていってください。

必ずあの子を救ってほしい…!」

「うんうん…迷惑かけた身がお願いできる立場ではないけど…お願い…!」


二人に分けてもらったサンドスターのおかげで、僕たちの疲れは少しずつ回復していった。


「ありがとう、絶対に助ける!」


「PPPの皆さんには、私からマーゲイさんを介して報告しておきます…。

どうかご無事で…」

「頑張ってね、君たちなら絶対できる!」


僕たちは、二人に見送られながらライブステージを後にした。





絶対に助けるから、待ってて…




〜次回に続く〜

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