湯煙ディストピア!?
〜三人称〜
寒い寒い極寒の雪山、この雪山の上をたくましく歩くフレンズがいた。
「うんしょ…うんしょ…っと…」
このフレンズの名はマンモス。
ヨウが雪山で出会ったフレンズの一人である。
「相変わらず険しい道ですね…でもここを越えれば温泉!楽しみだなぁ…」
マンモスはそう呟きながら、雪山の上を一掃たくましく歩いていた。
ふと足を止めると、白い景色の向こうから黒い人影が近づいてくるのが見えた。
「おや…?あれは?」
マンモスは、その人影と似ている人物を知っていた。
「ヨウさん!ヨウさんじゃないですか、どうしてここに?」
その人影は、近づいてようやくハッキリと姿が見えてきた。
「…!?ヨウさんじゃない…?」
その姿をみたマンモスは、すぐに知り合いではないと感じた。
「あなた…ヨウさんじゃないんでしょう?
何者なんですか?」
「ふふフ…簡単に言えば…パーティーの主催者、カな?」
もうお分かりかもしれないがマンモスが出くわした人影の正体はヨウにそっくりの姿のセルリアン、ドットだ。
「パーティー…?なにを言って…」
「キミにはパーティーを盛り上げルというすごーく重要なオ仕事を与えてあげるよ…」
ドットは寄生虫型のセルリアンをマンモスに見せながらじりじりと近づいた。
「セ…セルリアン…!?
な、何をするつもりなんですか!」
「簡単な話、キミは駒ニなってくれればいいの。」
「駒だか何だか知らないですけど、絶対に嫌ですよ!!」
ドットからのとんでもない要求に、マンモスは首を横に振って拒否した。
「よっ…と。」
しかし、ドットはマンモスを強引に押さえつけて動きを封じた。
そして…
「お前の意見は求メん。なんてね…」
手に持っていた虫型セルリアンをマンモスの肩にくっ付けた。
「うわぁぁぁあっ!!
なにが…どうなって…」
マンモスは意識を朦朧とさせながら、突然の苦痛に悶えた。
「そんじゃ、頑張ッテね〜…♫
ああ寒イ寒い…」
セルリアンの力が効いたことを確認すると、ドットは白々しい表情を浮かべてその場を去った。
———————————————————
「……。」
僕たちは寒い寒い雪山を、車に乗って進んでいた。
いつもなら雑談なんかで楽しく盛り上がりながら移動しているところだけど、今回はそうはいかない。
「ラッキー、調子は大丈夫?」
「心配ないさ、絶好調ダヨ。」
ここを登った先に温泉宿がある、何事もないといいけど…
〜移動〜
「着いたね…」
「寒いですね…」
温泉宿にたどり着くと、まず目につくのは乱暴に落とされているノレンだった。
「これはひどいな…」
「これもドットの仕業なのかな…?」
周りに気をつけながら温泉宿に入ると、いろんなものがめちゃくちゃになって散らかっていた。
しかも電気がついてなくて真っ暗だ。
キツネの二人は無事だといいけど…
「キタキツネさん、ギンギツネさん…いる?」
「いますかぁ?」
「いたら返事してくれ〜…」
僕たち三人が声で呼びかけている一方、ナミちーは目を瞑って何かを感じていた。
「何してるの?」
「超音波、わたしの特技だよ。」
「コウモリの仲間は超音波で周りを探るから暗いところも平気なんダ。」
なるほど…なかなか助かる…
「それで…どうかな?」
「うーん…あっ、あっちだ!」
ナミちーの指さした方向に、二つの黒い影がもぞもぞと動いて見えた。
「おーい…?」
僕が呼びかけると、二つの影がこっちに近づいてきた。
二つの影は当然キツネの二人だった。
「あら、誰かと思ったらヨウじゃない…ちょっと久しぶりね。」
「久しぶり…でも今はげぇむできない。」
二人はかなり不安そうな目をしていた。
僕は二人になにがあったのか聞いてみた。
「いつも通り、私はお風呂や部屋の掃除をしてて…キタキツネはずっとゲームしてたわね。
そうしたら…マンモスが来たのよね、それで私は歓迎しようと思って入り口まで行ったのよ。」
ギンギツネさんの説明にキタキツネさんも続いた。
「でもマンモス…様子がヘンだった、どこ見てるのかわからない目してたし…
それでギンギツネが部屋で寝ることを勧めようとしたら…急に暴れ出したんだ。
ボクたちはなんとか引き付けてお風呂のとこに閉じ込めておいたんだ。」
なるほど…今度の被害者はマンモスさんなんだ…
僕は二人に、「ドットが企んでる事」と「フレンズをコントロールするセルリアン」について説明した。
「なるほど、たしかに肩に変なものがくっついていたわ。」
「ホントに最低…!ボクのげぇむ時間返せ…」
ああ、最もだね…フレンズを好き勝手にしていいわけがない。
「それじゃあ、マンモスさんを助けに行こうか。」
「ですね」「了解…てな。」「うんうん…」
「マンモスはこっちの青いノレンの方に閉じ込めてあるわ、気をつけて。」
青いノレン、つまり男湯か…
男は今僕だけだね。
まあ、今はそんな事はどうでもいいのだけど…
「よし、行こうか。」
僕たちはお風呂場まで一直線に向かって行った。
すぐに助ける、待っていて…
〜開戦〜
「ゔゔっ…ぱおぉぉぉっ!!」
お風呂場に閉じ込められたマンモスさんはコントロールに逆らおうと必死にもがいていた。
「苦しそう…今助けるよ…」
「あぁぁぁっ!!!」
マンモスさんは抑えきれなくなって、こっちに向かって攻撃をしてきた。
「ふっ…よっ…」
僕はリカオンさんに習ったステップを踏んで戦いのリズムを見極めながら、マンモスさんの攻撃を避けていった。
「スナネコ、お願い!」
「はーい…」
スナネコはゆっくりマンモスさんの後ろに回り込み、セルリアンを剥がそうと近づいた。
だけど…
「ぱおぉぉぉっ!!」
「おっと…!?」
マンモスさんは鼻のマフラーをぶんぶん回してスナネコを離れさせた。
そう簡単に上手くはやらせてくれないね…
「フゥッ…フゥッ…」
マンモスさんは体力を消費したようで、一瞬動きを止めた。
ツチノコはその瞬間を見逃さなかった。
「よっ…どりゃっ!」
セルリアンに対し尻尾を引っ掛けて、思い切り引っ張った。
するとセルリアンは半分くらい剥がれた。
「あう…ん…? ゔぅ…」
「惜しい、一瞬戻りかけたんだがな。」
ツチノコは少し悔しそうに尻尾を床にべちんと叩きつけた。
「ありがとうツチノコ、あとは僕たちに任せて。
それとスナネコ、ギンギツネさんの様子を見てきて!」
「おう…頼む」
「わかりました〜…」
僕はもう一度マンモスさんの気を引くために前に出た。
「さあ来るなら来いっ!全部避けてやる!」
「ぱおぉぉぉおっ!!」
マンモスさんは身体中からサンドスターを振り絞って足踏みをすると、大きな足が空中に現れた。
「な…なんだって!?」
大きな足はそのまま僕めがけて落ちてきた。
「よ…よけられ…」
僕はこのまま踏み潰されるのか…そう思った瞬間…
「ヨウ、危ない!!」
横から球のようなものが飛んできた。
球はマンモスさんの集中を切らして、足はすんでのところで消えた。
「ゔあ…?」
マンモスさんは動揺したようにフラフラしている。
「い…今のは?」
「私よ。」
「ボクたちもいるよ。」
「ヨウ…大丈夫ですか?」
ギンギツネさん…キタキツネさん…!?
どうしてこっちに…?
「ついて行きたいって言ってたから…連れてきちゃいました。」
「これが役に立ったわね。」
ギンギツネさんが持っていたのは虹色に光る変な球だった。
「これは…?」
「私がフレンズになったばかりの頃に拾ったの。
何に使うかわからなかったけど役に立ってよかったわ!」
余ったもう一つの方を見ると、『かくらんボールZ』と書いてあった。
これが名前らしい。
「かくらんボール…?」
「それがこれの名前なのね。」
「かくらんってなんですかぁ?」
「簡単に言うと…びっくりさせるって事だと思うよ、げぇむで聞いた気がする。」
かくらんボールを見ながら話していると、ツチノコが大声でこっちに呼びかけた。
「おいっ!お喋りしている時間はないぞ!?」
「あっと…ごめん、そうだね…」
「今のうちにベリっと剥がしてパッカーンしましょ〜…」
僕はフラフラしているマンモスさんに駆け寄って、セルリアンを鷲掴みにした。
「せーのっ…えい!」
『ギィイ!!』
セルリアンは勢いよく剥がれ、マンモスさんはその場に倒れ込んだ。
「よし、このまま…パッカーン!!」
『ンギャアァッ!!』パッカーン!!
セルリアンをお風呂場の硬い床に叩きつけて撃破した。
これでマンモスさんは助け出せた…よし。
「じゃあ…マンモスさんは部屋で寝かせようか。」
僕たちはマンモスさんを担ぎ上げて部屋で寝かせた。
〜一時間後〜
「う…うう…ここは?」
「あ、気がついた?」
「あら…ヨウさん…?」
マンモスさんはしばらくボーッと考えると、思い出したように切り出した。
「あっそうか…みなさん、ごめんなさい…
うっすらと覚えてます…」
「気にしないで、マンモスさん。」
マンモスさんはどうもちょっと記憶が残ってるみたいだった…
「謝ることはないわ、あなたはあんなこと望んでいないのだから。」
「そうだよ、謝らなきゃいけないのは…その…
ドットってやつだよ!」
「ドット…あの黒いヨウさんのことですか?」
「そうだね…かくかくしかじかで…」
僕はマンモスさんに色々と説明をした。
「なるほど…あの時のセルリアンもそのドットという方の仕業なんですね…」
「そうだね…本当に許されないことだ…」
「ですね…私、応援してます…
ううっ…」
「「マンモス!?」」
「マンモスさん!?」
「すやすや…」
マンモスさんは唐突に気を失ったかと思ったら、すやすやと寝息を立てていた。
「なーんだ…よかった。」
僕たちはほっとして背中の力を抜いた。
そして…
「さて…私たちは掃除のやり直しをしなきゃいけないわね。」
「えー、それって僕もやる?」「もちろんよ。」「がっくり…」
「ああ、それなら僕たちも手伝うよ…!」
僕たちは、散らかった温泉宿の掃除をしばらく手伝った。
掃除はもうお手の物、だからね…
_________________ツクヤ視点_________________
ヨウたちと分かれた俺はまず水辺地方に向かった。
ペパプたちには安全なところに隠れて貰わなければいけない。
俺はドットの事など、色々を説明した。
「…そういうわけだ。頼んだ。」
「なにがパーティよ、そんなのパーティじゃないわ…!」
「ヨウとそっくりのセルリアンか…できれば出くわしたくないな。」
「そのドットってやつ、俺たちでペチペチしてやらねーか?特にコウテイは強いだろうし…」
「ダメですよイワビーさん…下手に近づいたら私たちがターゲットにされるかもですし。」
「友達と戦うなんてイヤだよぉ…」
5人とも不安そうだ…俺もここにいて防衛に参加したいところだがそうはいかない、図書館にも行かなければいけないからな…
「面目ない事だが…俺はここにはいられない、頼めるか?エカル…」
「はいっ!お任せください!」
しかし、彼女らには優秀なボディーガードがいる…心強いな。
「マーゲイ…5人を安全な場所に…」
「わかりました!では行きましょう…」
「「はーい」」
5人はぞろぞろと楽屋の方に入っていった。
これでペパプは大丈夫そうだ。
「それとエカル、ダメだと思ったら無理せずに逃げてくれ。」
「…はい。」
そして俺はバイクを走らせて図書館に向かった
____________________________________________
「…ふう、こんなものね。」
「すっきりですね〜」
僕たちは日が暮れるまで掃除をして、温泉宿はすっかり元どおりに戻った。
「やっとおわったぁ…げぇむできるかな?」
「できるよ、ちょっと確認してきたからね!」
「わーい!ヨウ、やろうよ!」
「…ごめん、今回はできない。」
僕たちの戦いはまだ始まったばかりだからね…
本当はこれもやってる場合じゃなかったかもしれない、だけどあんなにめちゃくちゃになったものは放っておけないよね。
「そっか…頑張ってね…」
「ありがとう、終わったら絶対やろうね…!それじゃ…」
僕たちは車に乗り込んで、ラッキーが車を走らせた。
今晩は車の中で寝ることになりそうだ。
「次は…水辺地方だね。それにしても寒い…」
「そうだネ、なるべく大急ぎで雪山を抜けるヨ。」
〜数時間後〜
夜になる頃には、雪山のふもとに着いていた。
とりあえず、今日はここで休むしか無さそう。
…だけど…もう誰かがコントロールされてるかもしれない…
「…寝てていいのかな…?」
一人でぼそっと喋っていると、まだ起きていたツチノコが応えた。
「どうなってようと今は休んだ方がいい、寝ずに行って負けたらそっちの方がまずいだろ?」
「…そうだね、ありがとう…おやすみ…」
じゃあ…寝ようか。
水の音が綺麗だなぁ…
「すう…」
「ヨウ…だいぶ笑わなくなったような気がするな…」
____________________________________________
スタッフカーから少し離れた木の上、ドットはヨウ一行の様子を伺っていた。
「おやオや?おやおやおヤおや…
あいツら寝ちゃったよ…」
ドットは少しつまらなさそうに木の枝にぶら下がると、しばらく考えてから木を降りた。
「しょーガない、今は休憩時間ってことにしテやるか…
ボクもねよっと…あいつらよりも早ク起きればいいだけダし。」
ドットは木の幹にもたれかかって、腕を後ろに組み脚を組んで眠る体制についた。
取り巻きの小さいセルリアンたちは少し心配そうな声を出していた。
「ん…?
あー、大丈夫だッて。
ボクこう見えて早起きスるの得意だし。んじゃオやす〜。」
そして…ドットは目を閉じて眠りについた。
〜次回に続く〜
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