ビギニングパーティー

早朝のロッジ

そこではタイリクオオカミ、アリツカゲラ、アミメキリンの三人が何かを待つように座りながら話していた。


「先生、今回の出来はいかがですか!?」

「ふふふ、上出来だよ。」

「お疲れ様です、オオカミさん。」


三人は出来上がった原稿を嬉しそうに眺めていた。

すると、一人のフレンズがロッジを訪ねてきた。


「おはようございます、先生!」

「おはよう、クエネオ。」


ロッジを訪ねてきたのは前回木々を飛び移りながら移動していたクエネオだった。


「はい、これ原稿。」

「お疲れ様です!…と、これ新しい原稿です。」


彼女は図書館とロッジを行き来して原稿のやりとりをサポートするのを楽しんでやっている。


「それじゃっ!」

「いってらっしゃい、いつもすまないね。」

「いいんですよ、好きでやっているんですし!」


そういうと、クエネオは原稿用紙をカタカケ鞄に入れてロッジから出て行った。


〜森の中〜

「ほっ、よいしょっ…」


クエネオは図書館を目指して、また木々を飛び移って移動していた。



  「おーい、そコのフレンズさん!」

「んん?」


ふいに、木の下から自分を呼ぶ声に気がつくとクエネオは木から降りてきた。


クエネオを呼んだのは、ヨウと瓜二つのセルリアンのドットだった。

どうやら警戒させないために肌をフレンズたちと同じ色に擬態させているようだ。


「なんですか〜?」

「いやね、ちょーっトばかり実験に付き合ってもらイたくて。」

「じっけん…?」


聴き慣れない言葉に困惑するクエネオの背後に、昨日遊園地で誕生した寄生虫パラサイトフュージョナー型のセルリアンが忍び寄る。


「じっけんってなにを…うわっ!?」


背後から忍び寄る気配に気がついた頃にはもう遅く、クエネオの肩は寄生虫の6本の脚によりガッチリと掴まれてしまった。


「フフフ…キミにはボクのとして他のフレンズたちと戦っテもらうよ。」

「そんなこと…できない…!友達を傷つけるなんて…」

「できるさ、今かラね。」


その言葉を最後に耳にしたクエネオは、だんだんと意識を奪われていった。


「あう…うわぁぁぁっ!!」

「うンうん、しっかり再現できているみタいだね…♫」


クエネオの光のない目はさらに暗くなり、全く生気を感じさせないものとなっていった。 


「さて…ちょっと準備をしテからヨウたちのところへと行くカ…」


擬態する必要のなくなった肌を元に戻しながら、不敵な笑みを浮かべて森の中へと消えていった。


それから数時間後…

————————————————————


うーん、よく寝た…

昨日はいろいろあったからなぁ、いっぱい寝ちゃってた。


ロビーへと歩いていくと、タイリク先生とツクヤが話していた。

こうやってみると本当にそっくりだなぁ…


「そうか、そのフレンズが原稿を?」

「ああ…いつも助かってるよ。」


「おかえり、ツクヤ。」

「おっ、ヨウ…昨日は先に帰らせて申し訳ない。」

「いいよ、何かわかった?」

「まあ…いろいろだ。」


ツクヤはなにを知ったかまでは言わなかったけど、元気そうにしていてよかった。


「じゃあヨウ、他のみんなも起こしてきてくれないか?」

「オッケー、任せて!」


ツクヤに頼まれて、僕は他のみんなを起こしに行った。

みんな重い思いの体勢で寝ていてちょっと面白い。


ツチノコが意外と寝相悪いんだよね。

ということでまずはツチノコ。


「おっはー!」

「うわっ!?」


よし起きた

次はナミちー!


「ぐっもーにん!!」

「ぎゃー食べないでー!…あれ?」


そして最後は…スナネコ!



「おは…あれ、起きてたの?」

「おはようです、ヨウ…」


スナネコは何か考え事していたような感じだった。


「どうしたの?」

「ん、昨日ヨウに助けてもらったときのことを思い出してたんです。」


あのとき…無茶をして結局落ちちゃったんだよね。

あれは正しかったのかな?


「ごめんねスナネコ、無茶なことやって結局落っこちたよね僕…」

「ヨウは悪くないですよ?

それに…ボクを背負って走ってるヨウはいつもよりちょっとだけカッコよかったです。」


スナネコ…嬉しいこと言ってくれるね…?


「ありがとうスナネコ…」

ですけど…」

「ええー!?」

「ふふっ…」


スナネコと一緒にいる時は他のみんなといるときとは違うものを感じる時がある。

これはもしかして…?

いや、まさかね。


まあそれはそうと、ツクヤに頼まれてたことをやりとげなきゃ。


「そうそう、ツクヤが呼んでたから行こう!」

「はいっ」


僕はスナネコを連れてロビーまで歩いて行った。

朝ごはんは夜と同じくジャパリまん、ツクヤは疲れてるだろうからって僕が提案したんだ。

ツクヤはご飯を作るつもりだったみたいだけど…わけを話したら納得してくれたよ。


〜数時間後〜


「さてと…今日は何しようかな…」


そんな事を考えながらロビーの椅子に座っていると、入口のドアが開いた。


「…」


そこには一人のフレンズが立っていた。

そのフレンズは一言も喋らずにずかずかと入ってきた。

そのフレンズを先生が出迎える。


「おや、クエネオ…急に戻ってきてどうしたのかな?」

「クエネオ…というとこのフレンズが姉さんの原稿を?」


なるほど、クエネオっていうのか…


「そう、しかし何かおかしいな…さっきから一言も話さないし…」

「…っ!」


と先生が不思議そうに考えていると、突然クエネオさんが先生に殴りかかってきた。

先生は少し驚きながらも、パンチを手で受け止めた。


「本当にどうしたんだい、クエネオ…?」

「様子がおかしい、みんな離れろ!」


ツクヤが声を上げ、みんなはクエネオさんから離れた。

僕も不思議に思ったからクエネオさんをじっと見ていると、肩に何かがくっついているのが見えた。


「見て!肩に何かくっついてる…」

「肩に…?なるほど、大体わかったよ…」

「あれは…セルリアンか?」


6本の足で肩をガッチリと固めているセルリアンは僕が持っていたカードの一つ、寄生虫パラサイトフュージョナーの姿に似ていた。


「わかった、またドットの仕業だね?」

「またアイツか…」

「話には聞いていたけど…なかなか趣味の悪い事をするねぇ…」


「とにかく…やるしかない!」


僕も戦闘体制をとって、武器を取り出そうとした。

だけど、それはツクヤに止められてしまった。


「待て、相手はフレンズだ。武器でうかつに傷つけたら大変だぞ。」

「そっか…わかった。」


僕は武器を出すのをやめて、格闘技の構えをとった。

野生解放ができなくたって先生直伝の戦術がある!


「行くよみんな!」

「ああ!」「任せてくれ。」


僕がクエネオさんの正面に出て気を引いて、そのスキにツクヤと先生で取り押さえて肩のセルリアンを剥がす作戦。


そしてアリツさんは他のみんなをロッジの奥へ避難させた。


「こっちだよ!」

「…っ!!」


狙い通りクエネオさんは僕に攻撃を向けてきた。


「今だよ!」

「わかった!」


僕の合図を聞いて、先生がクエネオさんを取り押さえた。

クエネオさんは唸りながら抵抗していた。


「ツクヤ、頼んだ!」

「よし…ふうっ!!」


そしてツクヤはセルリアンを剥がして、床に叩きつけた。


「あぐぅう…」


クエネオさんはそのまま気を失って倒れた。

そして、セルリアンはギリギリ生きていてカサカサと逃げていった。


「あっこら、待て!」

「すばしっこい奴め…」


僕たちが外に追いかけていくと、誰かがセルリアンを拾い上げた。


「いやー…お見事オ見事…」

「君は…」


僕たちの前に現れたのはドット、やっぱり君の仕業だったのか。


「どうダい?パーティー前の余興にナっただろう?」


ドットはスカした顔をしながら楽しそうに言った。


「何が余興だ!フレンズにこんな事をして!」

「お前はここで捕まえてやる!」


ツクヤがドットを捕まえようとすると、ドットはスポーツ選手みたいな身のこなしでかわした。


「おっと…パーティーの主催者がコんなところで捕まっては話になラない。

じゃ、これどうぞ。」


ドットは僕たちに一枚の紙を投げ渡すと、素早く走り去っていった。


「待て!」

「ツクヤ…ここは一旦引こう。クエネオさんも心配だし。」


僕とツクヤは、ロッジの中に戻っていった。


『ガチャ』


ロッジのロビーに戻ると、クエネオさんが目を覚ましていた。

クエネオさんは悲しそうにうつむいていた。


「えーっと…初めまして、クエネオさん。」

「あ…はい…あの、ごめんなさい。」


クエネオさんは今にも泣き出しそうな様子だ。

無理もないか、自分の意識がないうちにみんなを傷つけたなんて…


「謝ることはないですよクエネオさん!あなたが優しい方だということはみんな知ってますし!」

「ああ、悪いのはドットだ。」


アリツさんとツクヤがクエネオさんを元気づけていた。

僕もクエネオさんのところに行き、話しかけた。


「自分の意識がないうちに誰かを傷つけていたなんて考えたら辛いよね…

僕が君だったらきっとしばらくは立ち直れないよ。」

「…ぐすん…」


クエネオさんはすすり泣きながらも、僕の話を黙って聞いていた。


「ありがとうございます、皆さん…」

「大丈夫だよ、君にひどい事をした奴は僕たちがやっつけてやるんだから。」


ドットめ、本当に趣味が悪い…

そうだ、ドットと言えば…


「アリツさん、スナネコたちを呼んできてくれないかな?

あとクエネオさんを奥の部屋で休ませてあげよう。」

「はいっ」


〜そして〜


「みんな揃ったね?」

「はい」「おう」「うん」


僕は、ドットが投げ渡した紙を開いた。

紙は手紙のように手紙袋に入れられてしまってある。


「えー…どれどれ?」


————————————————————

元気で明るいヨウとその仲間たちへ

君たちはボクが考えたとても面白いパーティーへの参加権を得た!

という事で君たちにはパーティーに参加してもらうよ(^∇^)


参加方法は簡単!

二つのチェックポイントをちゃんと通ったあと、さばんなちほーまで来るだけ!✌︎('ω'✌︎ )


チェックポイント

ゆきやま みずべ


ね?簡単でしょ?

チェックポイントには僕の用意した強敵👿が待ってるから、うっかり負けて死なないようにねw

まあ君がその程度死ぬことはないと思うけど☆


それじゃ、頑張ってね〜

ドットくんより


追伸

ショボい戦いだったら許さないからね?💢

————————————————————



…なんかふざけた文面だなぁ。

どんな顔でこの手紙を書いたんだろう。


「さしずめパーティーの招待状ってことか。

しかし汚い字だな。」

「それは僕の書き方をコピーしたからだと思う…」

「…すまない。」


「パーティーですかぁ?」

「ごちそうとかあるかな?」

「あるわけねーだろ…」


フレンズ組三人も、戸惑ったりですこしざわざわしていた。

しっかし紙なんてどこにあったんだろうね。


「この紙…白紙の原稿用紙からくすねたのか?」


なるほど。

原稿かぁ…


「そういえば原稿、どうするんだろうね…」

「それなら心配ない、俺が代わりに届けに行く。

それに図書館に先回りして、博士たちに戦いが得意じゃないフレンズを避難させるよう言わなくちゃいけないしな。」


うん、それなら安心だね…

それじゃあ…


「みんな聞いて、これから僕たちはドットのパーティーを終わらせに行く。」

「チェックポイントはどうしますかぁ?」

「もちろん行くよ…クエネオさんみたいにされている人がいるかもしれないし。」


僕は今までにないくらい真剣に、淡々とみんなに話した。


「要るものを車につめて出発しよう、なるべく急いで。」

「はい」「オッケー!」「だな」


三人も準備はオッケーのようだね。


そして僕は、先生やアミメさんのところにも挨拶に行った。


「そういう訳で…先生、アミメさん、いってくるよ。」

「いってらっしゃい、気をつけるんだよ?」

「あなたならきっと出来るわ、名探偵の私が言うんだから間違いないもの。」


僕は二人に軽く手を振って、ロッジを出ていった。



〜荷物を積んで〜


僕たちは車に乗り込み、ツクヤは図書館から呼び出したジャパリホイールにまたがった。


「それじゃあ…お前たちに任せることになってすまない。」

「いいよ、先に図書館で待ってて!」


僕たちは、お互いの無事を祈りながら出発した。


「それじゃあラッキー、ゆきやまちほーまでお願い!」

「わかったヨ、寒いから防寒着を用意してネ。」




それじゃあ行こう、誰も笑顔にならないようなパーティーは終わらせなきゃいけない…


〜次回に続く〜

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