新しい思い出②
俺は今、ナミちーと一緒に遊園地を回っているところだ。
土産物売り場を出ると、ヨウとスナネコが『バス的な乗り物』に乗って移動していた。
足漕ぎ式の乗り物だな、ちょっと楽しそう。
「俺たちも行こうか…」
「そうだね…キシシ〜…♫」
俺たちは俺たちで、何か他のものを見ようと別の方向に歩いて行った。
しばらくあてもなく歩いていると、目の前に薄暗い建物が見えてきた。
なるほど…お化け屋敷だな?
「ねぇ、次はアレの中を探検しない?」
「そうだな…でもお前って暗いところには強いから全然面白くない気がするぞ…?
それに仕掛けを動かす電力も止まってるだろうし…」
俺が色々と心配事を言うと、ナミちーは悪戯っ子な笑顔で答えた。
「キキ…わかってないねぇ、動いてなくたって『これがどうやって動いてたのかなー?』とか『どんな人が遊びに来てたのかなー?』とか考えるのが楽しいんだよ!」
「なるほど…勉強になった…!」
「これでもこの体になってからずっとオニちゃんと一緒にいろんなものを見てきたからねぇ…♫」
さすがだ、暗闇の冒険家というところか?
まあそういう事でお化け屋敷へ行ってみるか。
———— 一方 ヨウたちはというと…————
僕たちはまだバス的な乗り物を二人でこいでいた。
スナネコもここまでは飽きずにこいでくれていたよ。
「わっせ!わっせ!わっせ…どうしたのスナネコ?」
「そろそろ疲れちゃいました…あそこで休みましょ?」
スナネコが指さした先にあったのは、遊園地といえばで二、三番目くらいに出てくるだろう乗り物『コーヒーカップ』があった。
「おやおや、くつろぐにはピッタリだね!」
「んぅ〜…だらーん…」
僕たちはしばらくの間こうしてリラックスしていた。
アクティブに動いた後には少しマイペースになってみるのもいいかもね!
「よーし、そろそろいいんじゃないかな?」
「ですねー…行きましょうか?」
僕たちはもう一度バス的な乗り物にまたがって、わっせわっせわっせとこぎ出した。
「「わっせ!わっせ!わっせっせわっせ!」」
「なんか掛け声変わってない?」「気のせいじゃないですかぁ?」
そんなことを話しながら、次の目標を探して乗り物を走らせた。
これ結構楽しいよ?
「わっせ!わっせ!…ん?」
「おっ?」
しばらくこいでいると目の前には大きな観覧車が立っていた。
観覧車は他のものと違ってしっかりと動いていた。
「おー、ちゃんと動いてる〜…これってじかはつでんってやつですかね?」
「そうなんじゃない?詳しいね〜。」
「ツチノコの話を聞いるといろんな言葉を飽きるほど覚えれますよ〜。」
いやー、観覧車かぁ…
乗りたい…!
「乗る…?」
「昔かばんが乗ってた時から気になってたんですよね〜…乗りましょ?」
————————————————————
そのまた一方、ここは遊園地のどこかにあるスタッフオンリーの更衣室。
ボロい衣装からするにここはお化け屋敷の更衣室だろうか。
そこで何やらセルリアンが集まって何かを話し合っているようにも見える。
その中心に座っていたのは…
「うーン、今度のボクのパーティーを盛り上ゲるにはどんなモンスターがイイカな?」
ヨウと瓜二つ、戦いを好む黒いセルリアン…どこかの有名な作品と色々とかぶっていた彼はドット。
ドットがロクでもない模索を色々としていると、一匹のセルリアンが耳打ちをする様に近づいた。
「———!」
「ほうほウ、君のオススメはコレなノね?」
ドットはセルリアンの話を聞きながら一枚のカードを手に取った。
「ふーん、寄生虫カな。」
ドットが手に取ったカード、それは…
ヨウが見ていたアニメでは、人間の脳に入り込んで
「うんうん、いーンじゃない?」
そういうと、隣にいたセルリアンにカードをかざした。
『グジュ…グジュ…』
セルリアンはゆっくりとその姿を変えて、カードのイラストに忠実な見た目へと変化した。
しかし…
「なんか…大キくない?」
完成したセルリアンはバスケットボールより小さいかくらいのサイズで、とてもじゃないが脳に入り込めるようなものではなかった。
「どーイうこっちゃこりゃ…しょーがない、ちょっとテストしなきゃダメそうだね。」
そういうと、寄生虫セルリアンを肩に乗せて部屋から出ていこうとドアに手を伸ばした。
「よいショッと…あれっ?」
しかしドアノブは彼の手が触れる前に遠ざかってしまった。
そして手は空振りして空気をきった。
ドットが顔を上げると…
「は?」
「え?」
彼の目に映ったのは、ナミチスイコウモリのナミちーだった。
どうしてこうなったか…ここからは少し時を戻して、月の視点で見てみよう。
———————————————————
「おおー、中はこうなってたのね〜!」
「真っ暗で不気味だな…」
お化け屋敷の中は墓地をモチーフに作られていた。
きっとあの墓の陰だったりとかからゾンビが出てくるんだな…
周りをいろいろとみていると、ナミちーがなにかを見つけて喜んでいた。
「見て、コウモリもいるよ!仲間だ!」
「なんてよくできた…ってこれ本物だな!?」
『キィ!!』
コウモリはバサバサと俺たちの目の前で羽ばたくと、どこかへ飛んでいってしまった。
「見てツクヤ、赤いボトルのお化けもいる!」
「いやそれは消化器。」
そんな漫才かなにかのようなやりとりをしながら歩いていると、石の壁にカモフラージュした扉を見つけた。
「なんだろこれ。」
「『スタッフオンリー』?スタッフの部屋か何かか?」
2人揃って好奇心に駆られ、カモフラージュで隠されたドアノブを握って扉を開けた…
その先には…
「え?」
「は?」
ヨウに瓜二つの黒いやつ、ドットが『なにが起こったのかわからない』というような顔で突っ立っていた。
「いや何でオ前たちがここにイルの!?」
「それはこっちのセリフだ!」
「ココはボクたちノ秘密基地なんダよ!」
そんなことは知ったことではない、よくもこの間は酷い目に合わせてくれたな?
「ここでお前を倒す…!」
「そーいうワケにはいかナイんだ、ボクはパーティーの準備で忙しイんだからね!」
パーティーだと?
アイツの事だ、戦闘=パーティーとでも言うつもりだろう。
「とニかく!キミたちに構ってるヒマはなーい!
このコたちと遊んでてもらうよ、カモン!」
ドットが指をパチンと鳴らすと、部屋の奥から三匹の小型セルリアンが現れた。
「まさか…」
「まあご想像ノ通りってやつだね、それじゃ今日はこれで。」
ドットはそう言うと懐からカードを取り出してセルリアンにかざした。
すると、セルリアンたちはその姿を変えていった。
『グルル…』『ヴゥ〜…』『ガガギィ…』
西洋タイプのドラゴンのような見た目、しかしその体は腐敗によって崩れたかのようになっていた。
さしずめドラゴンゾンビといったところか…
「それじゃ、後よろシく。」
ドットは最後に
『グギャアァァ…!!』
真ん中のゾンビは、他の個体の1.5倍ほどの大きさになった。
ここで戦ったら間違いなくまずい…
「頼むぞナミちー、こいつらを外に誘い込むんだ。」
「オッケー、ダッシュで脱出だね…」
俺たちは、スタッフオンリーの部屋からスタッフ専用出口へと出ていった。
「よし…ここならスペースは充分だ。」
俺はスケッチブックの絵から斧を実体化させて手に装備した。
父さんの趣味の絵だ、いいデザインしている。
「さあ、どこからでもかかってこい!」
ゾンビたちは俺たちの周りをぐるぐると回ったりして威嚇しながら距離を取っていた。
「このっ…待て!」
「すばしっこい…」
ひらひらと逃げ回る竜のゾンビに苦戦しながらも、俺たちは遊園地の中心へと追い込むことができた。
しかし、まさかあんなことになるとは…
———————ほんの少し前——————
僕たちは2人で観覧車に乗っていた。
そこから見る景色はものすごくいいものだった。
「見て、スナネコ!ずっと向こうのちほーまでよく見える!」
「ホントですねー…ふふ…」
スナネコは景色を見たあと、僕の方を見てニコリとしていた。
「ん?どうしたの?」
「ふふふ、ヨウはいつも楽しそうですね?」
「へへ、だって大切な友達と一緒にいるんだもん。
当たり前だよ!」
スナネコは嬉しそうにしていた。
この遊園地が楽しいといいな…
「ふふ…♫
…おっ?ヨウ、あれはなんでしょう?」
スナネコはニコッとしたあと、何かに気がついたように僕の肩をトントンと叩いた。
「えっ、何々?あれは…!?」
遊園地の中を見ると、ドラゴンのような生き物とそれを追いかけるツクヤたちの姿があった。
「あれって…セルリアンですかぁ?」
「だね…なんか見たことある気がする…」
よく見るとそのセルリアンは、僕の持っていたカードの絵に似た姿をしていた。
さてはドットだね?
「なんかこっちに来てるね。」
「これヤバイんじゃないですかぁ?」
たしかにヤバイね…
ゾンビたちはツクヤたちに追い詰められたかのように見えたけど、そうはいかなかった。
「あれ…登って来てる…?」
「まずいですね…」
ゾンビたちはこっちに気がつくと、大きい奴以外の二体がこっちに登って来ていた。
ツクヤがかなり焦っているような感じがする。
「ヨウ、危ない!」
ツクヤの声が大きいのか僕の耳がいいのか、割とハッキリとツクヤの声が聞こえてくる…
「…!」バサバサッ
ナミちーが僕たちを助けにいくためか、羽を羽ばたかせて飛んできた。
だけど…
『グルァ!』
大きな奴はそれを許さず、ナミちーの邪魔をして飛べないようにしてしまった。
ナミちーは急いで地面に戻ると、ツクヤに申し訳なさそうに謝っていた。
ツクヤは許している様子だったね…
とツクヤたちを見ていると、二体のゾンビはもうすぐ隣のゴンドラまできていた。
「どうしよう、もうあんなところまで…」
「このままでは危ないですね…」
『グオォォ…』
一体のゾンビが、ゴンドラの付け根に向かって腐った息のようなものを吹きかけた。
するとその付け根はみるみる錆びていき、今にも落ちそうになっていた。
「ちょ…やめて!」
もちろんそんなことを言ってもやめるはずもなく、もう一体のゾンビがゴンドラの床を錆びさせようとしてきた。
(このままじゃどのみち真っ逆さま…ならワンチャンスにかけてみるか…)
「スナネコ…」
「なんですか…?」
僕はスナネコを背負ると、ゴンドラから鉄骨へ飛び移った。
「む…無茶ですよ、ヨウ!」
「このまま何もできずに落ちるくらいなら…ワンチャンスを願って動くしかない!」
僕は自分でもよくわからないくらいの身軽さで、鉄骨の一本一本を飛び移った。
だけど…
『グルァッ!!』
セルリアンがそれを許すはずはなく、僕の前に立って邪魔をした。
「このっ…きみに構ってる暇はないのに…」
足元がフラフラする…このままじゃ…
『ガァッ!!』
後ろからもう一匹が僕に体当たりをしてきた…
つまり…
「…っ!?」
結局…僕は脚を踏み外し、スナネコを背負ったまま観覧車から落ちてしまった。
「ぐうううっ…せめてっ…スナネコだけでも…!」
「ヨウ…何を…?」
僕は、最後の力と言わんばかりに調節してスナネコが上になるように落ちた。
そして…
————————————————————
「このぉぉぉっ!!邪魔だ!」
『ガアァァッ!!』パッカーン!!
大サイズのゾンビをなんとか倒しあとは小さい奴らだけだと思い振り返った頃には、ヨウたちは落ちているところだった。
「な…ナミちー!頼んだ!」
「ううっ、やるしかない!」
ナミちーは全力を出して飛んでいったが、コウモリとは鳥ほど速く高く飛べるわけではないもので…
「だ…ダメだぁぁあ!!」
「ヨウぅぅぅ!!スナネコぉぉ!!」
ヨウはとっさの判断か、自分の体を下にして落ちていった。
そして、文字にもあらわせない音を立てて落ちてきた。
「嘘だ…嘘だろ?」
「スナちゃん!大丈夫…?」
「ボクは平気です、ヨウのおかげで…」
この時俺は冷静さを失っていて気がつかなかったが、ヨウの体からは"あるはずのもの"が出ていなかった…
「お前…お前らぁぁあ!!」
大切な友達をこんな風にされた怒り、大切な友達がいなくなるかもしれないという悲しみで冷静でいられなくなった俺は、野生部分を全て解放してゾンビたちに向かっていった。
「ワオォォォォンッ!!」
鉄骨やアトラクションの屋根に飛び移りながら、一体一体を確実に仕留めていった。
もちろん体力の浪費はとてつもない、だが俺はそんなことを考えている余裕はなかった。
「ゔぁあっ!!」
『ギィ…』
『グルル…』
「終わりだ!!」
『ギャアァァッ!!』パッカーン!!
『グアァァッ!!』パッカーン!!
「はあ……はあ……」
全ての体力を出し切った俺は、何も言わず倒れているヨウに駆け寄った。
「ヨウ…起きてくれよ…?
まだお前に食べて貰いたいものとか、お前とやりたかったこととか…お前と見たかったものとかまだまだあるんだぞ…?」
俺は自分でも気がつかないうちに、大粒の涙を流していた。
大切な友達が目の前で倒れているのだから当然だろう。
しかし…
「ツクヤ、すごい顔だね…?」
「だって…だってヨウが…え?」
ヨウは目を開いて俺に話しかけてきた。
俺は驚きのあまり、かなり間抜けな声をあげてしまった。
「なんで…どうして生きて…?」
「うーん、よくわかんないや!でも死ぬほど痛かったよ?」
ヨウはあの高さから落ちて、ほとんどケロッとしていた。
まるでギャグアニメの主人公のようだ。
だがそれでも俺は安心した、大切な友達が死なずにいてくれたのだから。
「ヨウ…ヨウぅぅぅ!!」
「もーどうしたの?そんなに涙でぐしょぐしょにして…」
スナネコとナミちーも、驚いた様子で駆け寄ってきた。
「すごい、なにかの
「これは流石にびっくりです…」
ヨウはあくびをしながらぐいーっと背伸びをして、思い出したように聞いた。
「そういえばセルリアンってどうなったの?」
「アレは俺が倒した、安心しろ…」
「そっかぁ、ありがとう!」
ヨウは一安心したようににこっと笑った。
「それじゃ、帰ろっか?ツチノコもお待たせしちゃってると思うし…」
「そうだな…けど、その前に…」
俺は、大サイズのゾンビが落とした金色のピースをヨウに見せた。
「今回のもこれでパワーアップしてたんだね…」
「記憶や思い出はそれほど輝きのパワーが詰まっているんだな。」
ヨウにピースを手渡そうとすると、ヨウは待ったをかけた。
「あっ、待って…スタッフカーに戻ってからにしない?」
「わかった、少し預かっておく。」
ということでポケットにしまってスタッフカーに乗り込んだ。
————————————————————
いやー、あのときはもうこれっきりかと思ったよ…
死ぬほど痛かったけどね?
「いやー、大変だったけど…楽しかったね?」
「そうだな…古い思い出を拾い集めるのも大切だが、新しい思い出を作るのだって楽しいだろう?」
「うん、楽しい!」
ツクヤも楽しかったかな?
みんなで遊べてよかった…
「すう…すう…」
「…」
ナミちーはゴタゴタの疲れで寝ていて、スナネコはそれを隣の席で見ていた。
しばらくすると、ラッキーがアナウンスをした。
「もうすぐ食糧庫前ダヨ。」
僕は車から降りて、大声で呼んだ。
「ツチノコ、いるかな?おーい!」
すると、食糧庫の中からツチノコが少し嬉しそうに出てきた。
「おう、いるぞ…!くふふふっ…♫」
「どうしたの?なんか嬉しそうだけど…」
ツチノコは服のポケットから、三枚のコインを見せてくれた。
「どうだ、新種のジャパリコインが三枚も見たかったんだ!」
おお、キラキラしてていいねぇ…!
あんまり詳しくないからわからないけど…こういうのっていいよね!
ツクヤがコインを見ると、一つ一つ詳しそうに答えた。
「ふんふん、なるほど…海獣型、鳥類型、それに銀縁のコインもあるな…」
「ツクヤ、これわかるの?」
「まあ、俺も集めてたからな…昔。 」
ツチノコも嬉しそうに聞いていた。
「へえ、お前も集めてたのか!」
「ん?」
「いやなんでもない。」
微妙に聞こえた、ごめんなさい💦
昔からおっちょこちょいなのは変わらないのかな僕。
それはそれとして、ツチノコを乗せた僕たちはロッジに向かって出発…と思ったけど…
「ラッキー、ロッジに行く前にここの近くの病院に向かって欲しい。」
「わかったヨ。」
ツクヤはラッキーに病院に向かうように頼んだ。
病院に何するんだろう?
「ツクヤ、どこかケガしたの?」
「いや違うんだ、父さんが昔働いていた職場だ。
少し調べたいことがあって…」
「そうなの?」
ということで、ロッジに行く前にツクヤのお父さんが働いていた病院へ行くことになった。
〜数分後〜
「ついたヨ。」
「ヨウ、先に行って寝ていてくれ…何も作ってやれずに申し訳ない…」
「いいよ、何か気になることがあるんでしょ?
ジャパリまんならいつでもあるさ!」
ツクヤは、ポケットからピースを出すと病院へ向かって歩いていった。
「いってらっしゃい!」
〜移動中〜
「さて、これを…」
僕は、ピースを握って自分の体に取り込んだ。
そしていつものように意識を失った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『ここは…遊園地…?』
気がついとき、ヨウは遊園地に立っていた。
それも今日行った廃遊園地ではなく、キラキラとした楽しそうな雰囲気の漂う遊園地だった。
ふと見ると、メリーゴーランドの前に一人の少年が立っていた。
帽子を被っていて一瞬わからなかったが、それは間違いなくヨウだと分かった。
『あれ、僕かな…それにしても今と変わらないくらい大きいね…』
そのすぐ後に、黒髪の少年が走ってきた。
同じように帽子を被っていたが、ツクヤだった。
「お待たせ、ごめんな…」
「平気平気、今きたところだよ。」
ヨウの喋り方は今と殆ど変わらないが、どこか落ち着きのある様子だった。
「それにしても、帽子って頭が痒くならない?」
「まあな、でも取るなよ?
男のフレンズがいるなんて珍しいことこの上ない、誰に付け回されるかわかったもんじゃないんだ。」
「わかってるさ。」
二人はしばらく色んなところを回ると、最後に観覧車に乗った。
今のヨウも、こっそりと自分の隣に座っていた。
『失礼〜…』
観覧車は高く登り、てっぺん近くまで行った。
「高いね…!ちょっと怖いかも?」
「そうか?」
この時のヨウは歳を重ねて落ち着きが出ていたと思っていたが、二人だけの空間であるお陰かいつもの彼らしい振る舞いをしていた。
ふいに、ヨウがツクヤに質問した。
「ツクヤ、今って好きな人いるー?」
「なっ…何を急に…居ないけど…?」
『恋愛かー…なんか色々思い出してきたかも…』
「えー、そういやツクヤ…9歳の時に誰かに告白しなかったっけ?」
「うわぁぁやめてくれ!」
「ピンク髪の飼育員さんの子供の…名前なんて行ったっけ…」
「やめろ!!怒るぞ!?」
「へっへっへ、ごめんごめん…」
ツクヤは顔を赤くして必死にヨウを止めた。
『昔の僕、結構からかいのセンスが…
うーん、ツクヤ…なんかごめん!』
そんな話をしている間に、観覧車はゆっくりと下を降りていった。
「まあ…ね。好きな人ができたとしても、結婚とかしたとしても…僕たちはずっと友達でいたいね?」
「そうだな…」
『やっぱ仲良しだなぁ…』
今回の映像はここまでで終わった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ん…着いた?」
気がついたら、車はロッジの前に止まっていた。
着いたんだね…
「さあ、部屋に行きましょう…あ、ナミちーお願いしま…
いや、やっぱり自分でやりますね。」
「なんだそりゃ…!?まあ、ありがとう…」
スナネコはナミちーを背負ってロッジに入っていった。
ロッジのロビーでは、いつもの三人が待っていてくれた。
…今、ロビーって言葉が自然に出てきたなぁ…?
「ただいま!」
「「おかえりなさい!」」
三人は僕たちを出迎えてくれて、遊園地のことをいろいろ聞いた。
「どうでしたか、遊園地!」
「楽しかったよ!」
「何事もなく行けたかな?」
「まあ少し事件はあったかな…」
「それは殺人!?強盗!?それとも世紀の大怪盗!?」
「いや、セルリアンだからね!?」
「なーんだ。」
僕たちもイスに座り、アリツさんに相談した。
「実はツクヤが…かくかくへらじか…」
「なるほどです…まあ、そんなこともあろうかとジャパリまんを用意してあったんですけど。」
「すっご!?」
うーん、この人はエスパーか?
「まあ、オオカミさんが『今日はツクヤ、遅めに帰ってきそうじゃないか?』って言ったおかげなんですけどね。」
流石は同族…なんでもお見通しってわけ…?
僕たちは、ジャパリまんを食べて眠りについた…
おやすみなさい…
———————————————————
古い病院の仮眠室のような場所、俺はいまその部屋にいた。
「このへんに…」
俺が目覚めたばかりの頃、ここに何か落ちていたような気がしたんだ。
「あった…日記…?」
父さんのスペースのベッドには、4桁のパスワード式の鍵のかかった日記帳が置かれていた。
『
しかし、パスワードか…
父さんの性格的に…
「ここをこうして…」
ものは試しに俺の誕生日を打ち込んでみたら、鍵はあっさりと開いた。
「あの親バカ…」
俺は呆れながらも日記に目を通した。
そこに書いてあったのは、父さんの治療や研究の軌跡…そして後悔だった。
「これは…まさか、そんなことが…」
ここに書かれている内容…これはヨウや他の誰かはまだ知るべきではないだろう、だから…
「これは…俺が持っておこう。
しかるべき時のために…」
俺は日記帳を抱えて、ロッジへと徒歩で帰っていった。
ロッジについた頃には、みんなすでに眠っていた。
すまない、みんな…
————————————————————
夜明け前、こちらは水辺のどこか。
服に膜のようなものをつけたフレンズが、忙しそうに木々を飛び移っていた。
「はっ、はっ!今回の原稿用紙を受け取りに行かなくちゃ!」
目に光がなく、爬虫類特有の尻尾や服装の彼女は”クエネオスクース”。
彼女が次回どう関わってくるかは…お楽しみ…
そんなクエネオを偶然見つけた誰かが、後をつけながら観察していた。
「フフッ、実験にはちょウどいい…」
まあ、誰だかはすぐわかるけど。
〜次回に続く〜
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