やった事ないことも
あれから二度寝して、気づいた頃にはスナネコはとっくに居なくなっていた。
「あれ、起きたのかな?」
様子を見るために、ロッジで一番広い場所まで歩いて見に行った。
そこではツクヤが本を読んでいた。
「おはよう、遅かったな?」
「へっへっへ、二度寝しちゃった。」
「やれやれ、だらしない奴…ふふっ…」
ツクヤは呆れたように言った後、ふふっと優しく笑った。
本気で呆れてるわけじゃないって分かる。
「スナネコとナミちーは?」
「ほら、あそこだ。」
ツクヤが指差した先には、難しそうな本に顔をうずめてスヤスヤ寝ている二人がいた。
「国語辞典読みながら寝るとは…まだ二人には早かったか…?」
「そう…かも?ふふふっ…」
しばらく二人で寝ている二人を眺めていると、ツチノコが歩いてきた。
「おはよう…ん?何してんだお前ら?」
「しっ…ほら…♪(小声)」
「あの二人、すっかり寝たなぁ…」
僕たち三人は、場所を移して話すことにした。
「えー、それで僕の部屋に集合したって訳かぁ」
「まあ、お前の部屋が一番広い気がするからな。」
そういう事で、三人で僕の部屋に集合した。
ここで昨日考えていた事について相談してみる事にした。
「なるほどなぁ、自分が役にたってない気がする…か。」
「ヨウはセルリアン退治とかで真っ先に活躍してるじゃないか?」
「違う、そうじゃないんだよねー…」
戦いも大切だけどやっぱり普段の暮らし…いわゆる『日常』で役に立ちたい。
「戦いじゃなくてー…普段から何か役に立つことをしたいんだよね。」
「なるほどなぁ…」
「だったら、ロッジで手伝いをやったらいいんじゃないか?」
手伝い?
…部屋の紹介は多分できないね。
「掃除とかだったら出来るんじゃないか?」
「掃除?…やったこと無いかも〜…」
「大丈夫だ、誰でも最初は初心者なんだから。やったこと無いこともやってみることが大切だと思う。」
なるほど…ツクヤの言う通りかもしれない!
掃除かぁ、僕だってできるよね?
「よしそういう事なら…アリツの所へ話しに行くか。」
「アリツさんって…どこにいるの?」
「多分、ラッキービーストからジャパリまんを受け取りに行っているんじゃないか?行くぞ。」
僕たちはツチノコについて行って、アリツさんのところまで行く事にした。
〜移動〜
「アリツさーん!」
「あら!ヨウさんにツクヤさん、そしてツチノコさん!どうされました?」
「えー、かくかくへらじか…そういう訳で…」
ジャパリまんが入ったカゴを手に持っていたアリツさんに、色々と説明した。
「なるほど…でもお客さんを働かせる訳には…」
「いやぁ、お気になさらずって奴だよ!」
「…分かりました…!!」
アリツさんはうなずいて、僕を連れてさっきの椅子の部屋まで来た。
スナネコたちは…あっ、居た。起きてる。
「よいしょ…」
「おはようです、ヨウ…何してたんですかぁ?」
「あーツクヤ、この本難しいすぎなーい?」
スナネコたちに、アリツさんの仕事を手伝うということを話した。
「そういうわけなんだ。」
「キシシッ、頑張れ〜♪」
「ボクも手伝いますよ〜、気が向いたら。」
スナネコったら気まぐれ屋さんなんだからー!
本当にネコらしいよね、そういうとこ!
「ヨウさん、ツクヤさん!ちょっとこっちに…」
スナネコと話していると、アリツさんが僕を呼んだ。
「なにー?」
「実は…一度やってみたいことがあって…」
「なんだ、それ?」
アリツさんは、少し照れながら続けた。
「私、前に博士に聞いた『めんせつ』っていうのをやってみたくて…」
「「面接??」」
確か仕事をする前にやる奴だったよね?
まあ、やってみよう!
「いいよ!」
「構わない。」
「ありがとうございます、あっツクヤさんこっちに…」
アリツさんは椅子二つと一つ、そして机を一つづつ向かい合わせてそれに座った。
「なるほど、俺も面接官役か!」
「ありがとうございます〜…こほん。」
アリツさんは、セキバライをするとキリっとした目でこっちを見て質問をした。
「えーっと、まずは『じこしょうかい』?をお願いします。」
「フルネームで、趣味も答えろよ…?(超小声)」
「暁陽、趣味は外で遊ぶこと!」
「ありがとうございます…では次の質問に移ります…」
「その趣味でいいのか…?」
ツクヤはちょっと困惑気味だけど、まあこれは『面接ごっこ』みたいなものだから大丈夫…だと思う!
「では、えーっと…ここで働きたいわけ…?」
「志望動機…だ。」
「そうそう、志望動機をお聞かせ願い…んーなんて言えばいいのか…」
「グダグダだな…」
「はいっ!僕ができることを見つけて、みんなの役に立ちたいから!でーす!」
その後も、面接っぽいことは続いた。
ツクヤは『グダグダ』って言ってたけど、なかなか感じは出てると思う…!!
本物の面接なんて受けたことないけど。
〜終了後〜
「私のわがままに付き合っていただきありがとうございました!」
「いいよいいよー!楽しかったし!」
「楽しんでいいものなのか…!?」
ツクヤが言う感じだと、面接って楽しいものではないのかもしれないね…
「まあ、楽しければそれでオッケー!」
「オッケー…か?」
さてと、そろそろ手伝い始めてもいい頃なんじゃ…
(グウゥゥ〜…)
あー、今の僕だね。
ごめんなさーい!
「へへ…」
「その前にご飯にしましょう!」
という事でジャパリまんもぐもぐタイム。
美味すぎる!!
「今日のはカレー味かな、美味しい!」
「そうだな、俺はこの味が一番好きかも。」
ジャパリまんでお腹もいっぱいになったことだしー…
「よーし、頑張るぞ!」
「頑張れヨウ、俺も応援してるからな…!」
〜移動〜
「ヨウさん、本当にいいんですか?」
「大丈夫大丈夫、基本的なことはツクヤに教えてもらったから!」
僕はホウキやらモップやらをもらって、アリツさんに自信たっぷりのグッドサインをした。
「それじゃあ…お願いします!」
「まかせーい!」
アリツさんの声を合図に部屋に入って、ホウキを使ってホコリをぽふぽふっと払って綺麗にした。
「よーし、調子いいぞー!」
次はモップを使って細かい汚れを拭き取った。
なんかスッキリするなぁこれ!
ベットもパフっとホコリを払って、シーツのシワをしっかりと伸ばした。
「結構楽しいなぁこれ」
シーツが綺麗になるとスッキリするし、なかなかやりがいを感じる。
とここの部屋を綺麗にし終わると、アリツさんが入ってきた。
「ヨウさん、ありがとうございます!…次はあっちをお願いしますね!」
「はいはーい、おまかせー!」
次に連れてきてもらった部屋は、スナネコが寝る(はずだった)部屋。
昨日は使ってなかったからね…笑
「それにしても…本物の洞窟みたい…」
「フレンズさんに適した環境のお部屋を提供できるようになっていますからね!」
ほえー…このロッジすごすぎない…?
「それで…この部屋ではどんなお掃除をすればいい?」
「あっ、はい!これでゴシゴシしていただければ!」
…とアリツさんに
「君に〜で〜あえる毎日が〜ずっと〜続くといいな〜♪」
「上手ですね!」
へへ、褒められちゃった。
そんなに上手いとは思って無かったから嬉しいなぁ。
歌いながら掃除してこの部屋もクリアー!
「はい!ありがとうございました!それじゃあ…あそことあそこと最後にあっちもお願いします!」
「オッケー!一気に片付けちゃうよ!」
ここが終わった後、アリツさんに頼まれた三部屋を綺麗に掃除してお手伝いは終わり〜!
なかなかいい経験になった…かな?
「お疲れさまです!では、今日はゆっくり休んでください!」
「アリツさん、手伝わせてくれてありがとう!」
「いえいえ、お礼を言うのはこっちですよ!」
ものすごくお礼を言われて、アリツさんからジャパリまんをたくさんもらっちゃった♪
ちょっとツクヤの様子でも見に行こうかな!
「ツックヤ〜♫終わったよ〜♫」
「おっ、よくやったな…お疲れ様だ。」
ツクヤはホットミルクを飲みながらなんか難しそうな本を読んでいた。
「ツクヤはなにしてたの?」
「フレンズの診察…とはいえフレンズは大抵の怪我や病気はサンドスターでなんとかなるから暇なんだけどな…」
たしかに…失礼だけどめっちゃ暇そう!
「ふあぁ…今日はもう終わりにするか…」
「終わっちゃっていいのー?」
「まあ…セルリアン騒ぎも無いしなぁ…」
という事で今はツクヤの部屋でくつろいでいる。
アリツさんからもらったジャパリまんを食べながら、ツクヤと話をした。
「そういえばさ、ナミちーとはどこであったの?」
「ここだ。」
「えっ、そうなの?」
そうだったんだー、ここってツクヤにとっては思い出深い場所だねぇ…
「もっと聞かせて!ツクヤがここに来た時の話とか!」
「わかった…話すぞ。」
lllllllllllllllllllllllツクヤ視点の回想llllllllllllllllllll
俺が目を覚ましたのは古い病院だった…俺はそこでコールドスリープされていたみたいなんだ。
その時はまだ意識がもうろうとしてて、思い出せることも名前くらいしかなかったんだ。
俺は病院の中を探索して、そこの医師たちの名簿を見つけた。
その中に「神楽直人」という名前があって、それが俺の父さんだと確信した。
そして俺は、父親の名前…そして自分が何者なのかをそこではっきりと思い出した。
そして俺は病院の外へ出て行った。
ここがどこなのかを思い出すために…
そこで出会ったのは姉さんだった。
「君…こんなところで何をしているのかな?」
そう声をかけられた俺は、姉さんの顔を見た瞬間にいろんなことを思い出した…
「母…さん…?」
「い…いや、私は君を生んだ覚えはないよ…?」
最初に会った時の会話がこれだ。
今思うとかなり恥ずかしい。
だけどここで、ここがジャパリパークであることやフレンズたちのことを思い出した。
『姉さん』という呼び名は俺が勝手に呼ばせてもらうことにしていたが、姉さんはかなりノリノリだった。
アリツやアミメ、そしてナミちーはロッジで出会った。
ナミちーは俺と出会う前、オニコと一緒にパークを旅をしていたらしい。
俺はオニコとは入れ違いだったらしいからあまり知らなかったが…
ある日セルリアンに出くわした時に、カバンから転げ落ちたスケッチブック…そこに書いてあった絵を見た時に
「こんな武器が手元にあれば…」
そう思っていたら、偶然『サンドスター・リアライズ』を発見したんだ。
俺はこの力についても気になって、図書館に行くことにした。
そこには「博士」と「助手」がいると聞いてな。
その時にナミちーは俺と一緒に行くことになった。
図書館に行けば俺が今思い出せないことも少しはわかるかもしれないと思ってな。
図書館に着いた時にはかなり困惑した…
いきなり「料理をしろ」だなんて言われるからな。
幸い俺は料理には少し自信があった。
たしか、父さんか母さんに教えてもらったような気がする。
二人は俺の料理を気に入ってくれた。
それでしばらくあの二人の料理番をする様になった…ということだ。
あとは…お前の知っての通り、だな!
おっと…少し長話しすぎたな。すまない…
llllllllllllllllllllヨウ視点に戻るlllllllllllllllllllllllll
「どうだ?」
「ありがとう!ツクヤのこと、もっと知れたよ!」
ツクヤはいろんなことを経験したんだなって…やっぱりすごい人だよね…
あっ、そういえば…
「思い出せないことって何?」
「ああ…俺は『なぜコールドスリープされていたのか』や『昔遊んでいたフレンズの名前』が思い出せなくて…そして『母さんが死んだあとどうやって過ごしていたか』も曖昧なんだ。
そこで得た知識は覚えているんだけれどな…」
僕も何か手伝えるといいなー、思い出せるといいんだけど…
「まあ、ゆっくり思い出すさ…」
「僕、応援してるよ…!」
「ありがとう、ヨウ。」
ツクヤは爽やかな笑顔でニコッと返した。
なんというか、僕よりカッコいいよねツクヤって…へへへっ…笑
ツクヤと長々と話していたら、もうかなり遅い時間になっていた。
「さてと…僕はそろそろ寝るよ?」
「ああ、疲れただろ?よく休んでな。」
「おやす〜」
部屋のドアを開けると、スナネコがベッドを乗っ取っていた。
「そこ僕のなんだけどー!?」
「いいじゃないですかー、減るものじゃないんですから。」
「減るよ!スペースが!
というか洞窟部屋があるじゃない!僕掃除したよぉー!?」
「だらーん、ボクここ気に入りましたぁ…」
…まあ女の子を引きずり下ろすわけにはいかないしなぁ…
よし、仕方ない床で…
「そんなにベッドで寝たいなら…添い寝しますかぁ?」
「ちょっ…!?何言ってんのスナネコ!」
「ふふふっ、冗談ですよー…期待してました?」
「してない。」「はやっ」
どこから覚えたのそのからかいスキル、さては先生だな?
別に添い寝なんてしなくたって寒くないもーん…
「僕は床で寝る、おやすみ!」
仕事した後はなんかよく寝れそうだなぁ〜
おやすみなさ〜い…
「添い寝…ですかぁ…いや、そこまででもないか。」
「なんか言った?」ガバ
「いえ?何も。おやすみなさい…」
気のせいかー、おかしいな?
それじゃあ今度こそ、おやすみっ!
〜次回に続く〜
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