100%を超えた勇気

〜エカルたちの回想〜

新人アイドルのステージデビューの前夜、真っ暗な森の中での出来事。

アルシノ、そして夜行性のオニコも明日に向けて眠りについていた頃…


「えいっ…とりゃ!」


エカルだけは眠らずに、戦いの特訓をしていた。

ペパプたちを守れるくらいに強くなりたいと思いながら。


「はあ…はあ…丸太相手なら怖くないのにな…」


エカルは座り込んでそう言い、少し考え事をした。


『努力できるってすごい事なんじゃないかな?エカルさんなら絶対なれるよ、応援してる!』

「ヨウさん…」


エカルは恩人の名前を呟くと、勢いよく立ち上がり…


「そうだ、オニコさんやヨウさんみたいに応援してくれる人が居る…私は一人じゃない!

…アルシノさんはわからないけど。」


そして、丸太に向かって勢いよく攻撃を仕掛けた。


「何も怖くなくなるくらいにっ…えいっ!」バコォ!!


エカルが全力の攻撃を当てると、森に大きな音が響いた。


「ん…?」


そして…あまりに激しい音に目を覚ましたアルシノは、音の鳴る方をそーっと見た。


(あれは…エカルさん?)

「まだまだ…」


アルシノは一生懸命に特訓するエカルを、ただじっと見つめていた。


(ただの弱虫だと思っていましたが…なかなか努力家だったのですね…)


アルシノは、エカルの特訓を眺めながら眠りについた。



〜〜〜ヨウ視点〜〜〜

「セルリアンだー!」

「ワーワー!」「にげろー!」


突然セルリアンたちが出てきたせいで、会場のフレンズたちは大パニックになっていた。


「あー、めちゃくちゃだよ…」

「残念がっている暇はない、早く倒しに行くぞ!」


僕とツクヤは、ヒーローのスーツを脱いでステージ上のセルリアンのところに向かった。

避難は、マーゲイさんに任せておいた。


「みなさん!ひとまず安全な所に!」

「ありがとうマーゲイさん!よし!」


ステージの上に着くとそこには…

羽の生えた人の姿のセルリアンと、女の人の姿をしたセルリアンだった。


「あれは…!?」


その姿には見覚えがあった。

昔テレビで見たカードゲームアニメの「HERO」の姿そのものだった…

違うところは色とギョロ目かな。


「どうしたヨウ?」

「いや、なんでもないよ…行こう!」


カードケース本を開くと、お守りの力でカードが一枚飛び出してきた。

そしてそれを取ると、描かれている武器の姿を強くイメージした。


「よし、今日はプロペラみたいな剣サイクロンブレードだね!」

「今度は俺の番だな。」


ツクヤはスケッチブックの絵を見て、そこに描かれている武器の姿を強くイメージした。


「レイピアか、あまり使ったことは無いな…」


レイピアって言うのは…けっこう細い剣の事だよ!

…じゃない、早く倒さなきゃ!


『オオオッ!!テヤァ!!』


羽のある方のセルリアンが僕にめがけて羽を飛ばしてきた。

それを、剣をプロペラみたいに回して弾き返した。


「そりゃそりゃそりゃそりゃー!何度でもかかってこーい!」

「やるな、ヨウ。」


『ハアァァァァ!!!』


女型の方のセルリアンが火を操ってツクヤに襲いかかってきた。

うわぁ熱い熱い…

だけどツクヤは強い、アクロバティックにかわすと細長いレイピアでカウンターアタックした。


「よっ、そんなものか?」

「ツクヤ、カッコいいー!」


『ア"ア"ァァァァ!?』

『グウゥゥゥゥ…』


「敵が弱っている、今だ!」

「くらえー!」


そして最後はプロペラ剣をディスクみたいにセルリアンに投げつけた。


『『ガアァァァァ!!!』』パッカーン!


二体のセルリアンは石ごとザックリと切られていった。

僕たちの攻撃も冷静に見るとけっこうえぐいね…


「やったね!大した事無かったなぁ〜」


だけどその時…


『ズゴゴゴ…』


「なにこの音?」

「ヨウ!下がれ!」


ツクヤの声で音がする方から離れると、さっき倒したセルリアンが落としたキラキラが一つになっていた。

二体のセルリアンは…羽が生えていて、片手の竜の口っぽいものが特徴的な合体セルリアンになった。


『ウオォォォォ!!!』


「うわぁ!?マジで!?」

「融合した…だと!?」


融合…そういえばさっきのセルリアンと似たモンスターは融合がウリのモンスターだったなぁ…


『ヌオォォ…』


融合したセルリアンフレイムウィングマンは高い木の上から僕たちを見下ろすと、勢いよく飛び降りながら炎の弾を撃ってきた。


「うわぁぁぁぁぁ!!」

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」


僕たちは爆風に吹き飛ばされてステージの壁に叩きつけられた。

しかも、それだけでは終わらなかった…


『グオッ…グオォォ…』


融合セルリアンは唸り声をあげると、合体する前の姿のセルリアンを生み落とした。

しかもその数は100よりも多かった…


「マズイな…」

「いてて…」


生み落とされたセルリアンがステージ下のフレンズたちを襲おうとしているのに、体が思うように動かない…

僕たちはどうなっちゃうんだろう…






〜三人称視点〜

一方、オニコとアルシノは迫り来る小型のセルリアンを蹴散らしながら安全なところに逃げようとしていた。


「えいっ!これでどうだっ!」

「ふっ…はっ!ええい!」


オニコは空からの蹴り、アルシノは手に持っている二本ツノの武器を振り回してセルリアンを倒していた。

その時…


『ウオォォォォ…』


さっき融合セルリアンがコピーしたセルリアンがアルシノたちのところにもやってきた。


「このセルリアンたちは…ステージから…?」

「見てアルシノ!あれ!」


アルシノがオニコに持たれてステージの方を見ると、ヨウとツクヤを吹き飛ばす融合セルリアンの姿が見えた。


「何ですか…あれは?」

「ヨウたちが…それにペパプたちが危ない!」

「えっ…?ヨウさんたちが…?」


オニコのその声に反応して、物陰に隠れていたエカルが姿を見せた。


「うん、ほら…」

「ヨウさん…!?」


アルシノと同じように、エカルもオニコに持たれてステージを見た。


「助けなきゃ…」

「何言ってるのエカル!?あなたの身が危ないよ!?」

「行かせてあげなさい、オニコさん。」


そう言ったのはアルシノだった。

そのあと、アルシノは続けて言った。


「私は昨日の夜に見ていましたよ…エカルさんが丸太に向かって特訓をしていたのを。」

「そうか、そういえば前に…」

「ええ…あの時まで私は特訓しているなんて信じていなかったのですが…」


そしてアルシノは、エカルの眼を見て激励した。


「エカルさん…皆さんを救えるのはただ一人、あなたです…!!」

「ありがとうございます…アルシノさん!」


エカルはアルシノの激励を受け、決意に満ちた表情で走り出した。



「はっ…はっ…」


セルリアンの群れを避けながらステージへ向かっていたエカルは、ふとヒーローショーのヒーローの言葉を思い出した。


『誰の心にだって「誰かを守りたい」という気持ちがある。』

『その気持ちがあるから、僕たちは戦える。』


「誰かを…守りたい気持ち…」


エカルは、最も心に響いていた言葉を呟くと…


「私は…ペパプを守りたい…ペパプを守ることでみんなの笑顔も守りたい…!!」


決意を込めてそう強く言った。

その時エカルの体は、キラキラと輝くオーラに包まれた。


「こ…これは…?」バシュウウゥゥゥ!!


エカルは、けものミラクルの力に目覚め…さらに…!!


「うわっ!?何か出てきた!」


エカルの手には、エカルタデタの牙をイメージした双剣が握られていた。


「よーし…これなら…」


エカルは、牙の双剣を握ってステージへと急いだ。




➖➖➖➖➖スナネコたち➖➖➖➖➖


そのまた一方、スナネコたちはと言うと…


「多いですね、ツチノコ…」

「安心しな、二人まとめてオレが守ってやる…」

「ツッチー頼れる〜♪」

「…(またその呼び方か…)」


スナネコ、ツチノコ、ナミちーの三人で融合セルリアンから生まれたセルリアンたちを迎え撃っていた。


「飛んでる奴はまかせてー!」

「こっちのはボクがやりましょう。」

「あんまり無茶するなよ!?」


しかし、倒しても倒しても次から次へと湧いて出てくるセルリアンに心にも体にも負担がかかっていた。

しかも…


『ズモモモ…』


セルリアンたちはお互いくっつき、小さな融合セルリアンへと姿を変えていった。


「な…セルリアンが合体した…!?」

「やばいですねー…」

「あわわわ…」


小型の融合セルリアンが三人を囲み、もはやここまでと思ったその時…


「ここはワタシたちにマカせて。」

「ワタシたちのオドりでセルリアンたちをマドわせてみせる!」


カタカケフウチョウとカンザシフウチョウ、Gothic×Luckの二人がスナネコたちの前に現れた。


「そーれ、ふらふら〜…」

「ゆらゆら〜…」


つかみどころの無いダンスをセルリアンたちに見せると、セルリアンたちの様子が変わった。


『ウオォォォォ!?』

『ダアッ!?』


「これは…仲間同士で攻撃し合ってる?」

「すごいですねー、二人とも…」

「これもツクヤが言ってた『けものミラクル』の一部なのか…?」


三人が驚愕していると、ゴクラクの二人が降りてきて言った。


「さあ、トドメをサして…」

「ワタシたち、やくにタてたかな?」


スナネコたちは混乱しているセルリアンの群れに突撃して、一気に畳み掛けた。


「吹っ飛べ!!」

「しょおっ!」

「えーい!」

パッカーン!! パッカァーン!!!


混乱によって大きく弱まった小型融合セルリアンの群れは、次々と蹴散らされていった。


「よし、あと少し!」

「頑張りましょ〜」

「うん!行こう!」


そして…その頃ヨウたちは…


➖➖➖➖➖➖ヨウ視点➖➖➖➖➖➖


融合セルリアンが生み出したセルリアンたちに囲まれた僕たちは、一歩も動く事が出来なかった。


『ウオォォォォッ!!!』


ボロボロの体を動かして、僕はツクヤを守る体制をとった。


「せめて…ツクヤだけでも…」

「な…何をしてるんだヨウ…?」

「料理もフレンズの手当ても出来ない僕よりも、ツクヤが生き残った方がみんなの為になる…」


僕がそうツクヤに言うと、ツクヤは怒ったような声のトーンで返した。


「馬鹿な事を言うな、お前が死んだら悲しむ奴だってたくさんいる…!!それに、お前を死なせなんてしない!」


そう言うと、僕よりひどいんじゃないかと言うようなボロボロの体でセルリアンたちを無理やり押しのけて…


「あった…ヨウ、これを…」


ステージしたの鞄から『アニマラムネ』を取り出して僕に投げ渡した。


「これがあれば…お前が戦えるだろ?」

「ツクヤ…」


僕は投げ渡されたアニマラムネを半分飲むと、ツクヤに投げ返した。


「へへっ…フレンズは助け合いでしょ?」

「はははっ、俺たちは『半分ハーフ』だろ?」

「半分でもフレンズならそれはもうフレンズだよ!」


僕たち復活!

ということで勢いよく融合セルリアンの前に立った。


「よし、お前をやっつけt…」

『ヴオォォォォッ!!!』


僕が言葉を言い終わらないうちに、融合セルリアンは炎ボールを撃ち出してきた。

ちょっと調子乗りすぎた、やばい避けられない…


「ヨウ!?」


ドゴオォォォォン!!


大きな爆発の音と共に次回ヨウくん死…


「大丈夫ですか、ヨウさん…!」


さなかった!!


「え…エカルさん!?」

「エカル!?」


僕を守ったのは、『いつかはペパプのボディーガードになりたい』と言っていたエカルタデタのエカルさんだった。


「火…大丈夫なの?」

「ペパプを…みんなの笑顔を守るためなら、火なんてなんて事無いんですよ!」


エカルさんは昨日会ったときとは別人…いや、別フレンズみたいに変わっていた。

こんな勇ましい人だっけ…?


「見ててくださいヨウさん、そして…ペパプの皆さん!私の…必殺技!!」バシュウウゥゥゥ!!


エカルさんは、輝きのオーラに包まれていった。


「ねぇツクヤ…あれってスナネコと同じ…」

「ああ、『けものミラクル』だ…」

「ええぇぇぇい!!」


エカルさんは叫び声をあげると、キバのような双剣をクロスして守りの体制に入った。


『テヤァ!!』『ハアッ!!」


守りの体制になったエカルさんを、セルリアンたちが一斉攻撃し始めた。

だけどエカルさんにはちょっとも効いていない様子だった。

そして、待ってましたと言わないばかりに剣を振り上げると…


「お…か…え…し…でーーす!!!」ズバァッ!!

[[絶対防衛 エカルがマモル]]


双剣にエネルギーを溜めて、セルリアンの群れにお返しのカウンター攻撃をした。


「周りにいたセルリアンが…全滅!?」

「すごーい!!」


エカルさん、もしかしたらヒーローショーを見て勇気を貰ったのかも?

そう思うとやって良かったなぁと思った。


「よし、トドメだ!行くよツクヤ、エカルさん!」

「わかった!」「はい!」


僕はワイルドなブーメランサイクロン・ブーメラン、ツクヤは斧を持って融合セルリアンに挑んだ。


『ウオォォォォッ!!』


融合セルリアンがかなりキレた様子でこっちに突進してきたけど…


「こっちですよー!ここまでおいでー!」

『ガアッ!!』

「おっと、させませんよ!」


エカルさんが引きつけて、攻撃をくらった瞬間にカウンター攻撃をした。


『ウグッ…』


融合セルリアンはふらふらになりながらも、僕たちを潰そうと竜の口のような腕を振り回した。


「そんなの効かないもんね!えいっ!」


僕がブーメランを投げると、見事に融合セルリアンの竜の腕にヒット!


「まだまだぁ!」


戻ってきたブーメランをもう一回投げて、弱点の石の場所を探し出した。


「よーし、背中だね?」


背中って逆に見え見えな場所な気がするけど黙っておこう。

ブーメランではトドメをさすにはちょっと足りないかもしれないから…


「ツクヤ、お願い!」

「任せ…ろぉぉぉぉ!!」


思いっきり斧を振り下ろすと、融合セルリアンはパッカーン!!と砕け散った。


「やったー!」

「俺たちの結束の強さが勝負を分けた…」

「やりましたね!ペパプの皆さん見てるかな…なんちゃって、見てるわけないか…」


そして、あちこちに生み出されたセルリアンたちもバラバラと崩れていったみたい。






➖➖➖➖➖ステージ復旧後➖➖➖➖➖

「えー、まさかセルリアンが来るとは思わなかったけども!新しいアイドルのステージデビューは続行するわよ!」

「「わあぁぁぁぁぁ!!!」」


まだまだ昼の始まりくらい、思ったより早く解決して良かった…


「さあ、いよいよステージデビューよ!出てきて!」


プリンセスさんに呼ばれると、カタカケさんとカンザシさんがステージに立った。


「ハジめまして、ワタシはカタカケフウチョウ。」

「ワタシはカンザシフウチョウ。」

「「フタりアワせて!」」


二人はくるくると回り、かわいくポーズを決めて…


「「Gothic×Luckゴシックラック!!」」


息ぴったりの名乗りを決めた!


「わー!」「かわいー!」「よろしくねー!」


観客のフレンズたちは、新しいアイドルの登場に大盛り上がりだった。

そしてゴクラクの二人は、観客にお辞儀をすると…


「ミンナありがとう、きょうからガンバります…!」

「それではキいてください…」

「「ホシをつなげて!」」


と二人で一緒に言うと、スピーカーから綺麗な曲が流れてきた。




〜♪〜・〜・〜・〜♪〜・〜・〜・〜♪〜


〜星をつなげて〜


暗い空の 一等星なら

待ち合わせに ちょうど良いから

帰り道を 間違った時は一緒に探そう

夕暮れから 青空まで

空の色は たくさんあるから

今日の特別な空に名前をつけよう

いつか きみと眺めた地図に輝いていたマークを ほら

指先で そっと確かめて

消えないように 辿っていく

どこか 遠く離れちゃう時も

寂しくならないように

きっと ずっと まわる 星は

まあるく つながってる


きみに出会える 毎日が

ずっと続くと良いな

今日がまた 踊るように 歌うように

眩しいくらい 煌めいて

悲しくて 涙が出ても

この手を 握りながら

『変な顔!』って 笑ってくれる

きみのことが 大好きなの



だから一緒の今日が

きみと同じくらい大好きなの

〜♪〜・〜・〜・〜♪〜・〜・〜・〜♪〜

「「パチパチパチパチ!!」」


おお…!!

やっぱり上手いなぁ、さすがアイドル!


「ありがとう、これからよろしくおネガいします…!」

「キンチョウしたね、カタカケ…」


あっ、緊張してたんだ!?

緊張していたとは思えないくらい上手かったけど…

すると、ペパプの五人がステージに上がってきて…


「ゴクラクの二人、上手かったわね!」

「期待の新人だ!」

「最高だぜー!」

「これから一緒に頑張りましょう!」

「もぐもぐ…あっ、よろしくね〜。」


とゴクラクの二人を歓迎した。


「今度は私たちも一緒に歌うわよー!」

「はい!それではキいてください…」

Gothic×Luck&PPPゴシックラック アンド ペパプで…」

「「ようこそジャパリパークへ!!」」


〜♪〜・〜・〜・〜♪〜・〜・〜・〜♪〜

Welcome to ようこそジャパリパーク!

今日もドッタンバッタン大騒ぎ

うー!がぉー!

高らかに笑い笑えば フレンズ

喧嘩して すっちゃかめっちゃかしても仲良し

けものは居ても のけものは居ない

本当の愛はここにある

ほら 君も手をつないで大冒険

(ワン・ツー・スリー)

Welcome to ようこそジャパリパーク!

今日もドッタンバッタン大騒ぎ

姿かたちも十人十色 だから魅かれ合うの

夕暮れ空に 指をそっと重ねたら

はじめまして

君をもっと知りたいな


うー!がぉー!


ララララ ララララ Oh, Welcome to the ジャパリパーク!

ララララ ララララララ 集まれ友達

ララララ ララララ Oh, Welcome to the ジャパリパーク!

ララララ ララララララ 素敵な旅立ち

ようこそジャパリパーク!

〜♪〜・〜・〜・〜♪〜・〜・〜・〜♪〜


「「パチパチパチパチパチパチ!!」」


ライブは大成功…だね!

いやーよかったよかった…





〜〜ライブ終了〜〜

出発するスタッフカーを、マーゲイさんとペパプの五人が見送りに来た。


「みなさん、ありがとうございました!」

「おかげで上手くいったわ!」

「これからも二人と私たちをよろしく…」

「雪山、寒いから気をつけろよー!」

「どうかお気をつけて!」

「今度みんなでジャパリまん食べようね〜」


六人の見送りの言葉を聞いてから、スタッフカーを走らせようとしたそのとき…

エカルさんが向こうから走ってくるのが見えた。


「ヨウさーん!ツクヤさーん!!」

「あっ、エカルさん!」

「見送りにきたのか?」

「はい!」


エカルさんはそう返事をすると、さらに続けた。


「お二人が助けていただいたおかげでここまで来れました。…それに、ヨウさんの言葉で『特訓は無駄じゃなかった』と思えて…自信がついたんです!」


へへ、そんなに?

なんだか嬉しくなるよねー…


「ヨウさん、いつかまた…!」

「うん!またね!」


そしてエカルさんは、後から来たアルシノさんたちのところに戻ろうとしたけど…


「おーい、あなた…ちょっと待って!」


プリンセスさんに呼び止められて、急カーブで戻ってきた。


「はいっ…なんでしょう!?」


あー、めっちゃ緊張してるねこれ。

まあ仕方ないか、憧れのアイドルの前だもの。


「実はね、あなたがセルリアンを蹴散らしてたところを見てたの。

それで…」

「ありがとうございますぅぅぅ…」

「あなた、私達とゴクラクのSPになりなさい!というか、決定よ!」


えすぴー?

わからない事はー…ツクヤ先生ー!


「ツクヤ、えすぴーってなに?」

「SP…簡単に言えばボディーガードだ…まあ、少し違うかもしれないが。」


それを聞いたエカルさんは、目を丸くしてビックリした。


「ええっ!?それって…?」

「イワビーから聞いたわよ?『みんなの笑顔も守りたい』って言いながらステージに走って行ったって…

だからね、私達と一緒にみんなの笑顔も守っていきましょう!」


エカルさんは、目に涙を浮かべて返事をした。


「はい!よろしくお願いします!!」

「よかったねエカルさん!」


そう言われたエカルさんは、僕の目を見て言った。


「あなたのおかげです…本当にありがとうございます…!!」


エカルさんが感謝の言葉を何度も言っていると、アルシノさんたちがこっちに来た。


「エカルさん…もしかして?」

「はい、そのもしかしてです!」

「すごーい!エカル、おめでとう!」

「成長したんですね。」


オニコさんはエカルさんとハイタッチをして、アルシノさんはエカルさんの頭を撫でた…

本当にこの三人は仲が良いとわかるね!


「それじゃ、行こうか!」


僕はそう言ってスタッフカーに上がって行った。

ツクヤも僕に続いて行こうとしたけど、フルルさんに呼び止められて…


「ん?ああ、貰っておこう…」


なにかを貰ってからスタッフカーに上がってきた。


「それじゃあ出発するぞ、頼んだラッキー。」

「マカセテ…」

「「バイバーイ!!」」


みんなに見送られて、水辺地方から雪山地方へと目指した。




〜移動中〜


「そういえばツクヤ、何貰ってたの?」

「これだ。」


そう言ってツクヤが見せたのは、金色に光るピース…『記憶の欠片』だった。


「あっ…それ…」

「フルルがステージの端っこで拾ったそうだ。」


ツクヤから欠片を受け取ると、欠片はいつものように光の粒になって僕の体に吸い込まれていった。


「ううっ…」

「やっぱり始まったか…さあ、ここに。」


ツクヤが僕の体を寝かしてくれた。

これで安心して記憶を見られそうだね…


➖➖➖➖➖➖➖回想➖➖➖➖➖➖

「——!!」


ヨウが目を覚ますと、小さな頃の自分を襲おうとしているセルリアンの姿があった。


『危ない!』


思わずヨウがそう叫ぶと、どこからか…


「おりゃっ!!」


と飛び蹴りが飛んできて、小さなヨウを守った。


『あれは…デオキシ!?』


小さなヨウを守ったのは、ヒーローショーに出てきた『仮面フレンズデオキシ』だった。


「よ…キミ、こんなところに居たら危ないぞ!?さあ、早く逃げるんだ。」

「わー!デオキシだぁ!」


小さなヨウは、彼の心配をよそにぴょんぴょんと喜んでいた。


『デオキシ…本当に居たんだ…』


デオキシが小さなヨウを逃すと、ちょっとため息をついて言った。


「やれやれ、『アイツら』の件が片付いたと思ったら今度はセルリアンか…俺はいつになったら休めるんだろうな、なんちゃって…ハハハ!」


と冗談交じりに言って、セルリアンを倒しに向かった。


『長い独り言だなぁ…あっ、僕もか。』




突然時間が止まったかと思うと、場面が変わった。

今度は小さなヨウとその母親らしき人が話していた。


「ほんとだよ!僕仮面フレンズに会ったの!」

「よかったねー、でも一人で危ないところに行っちゃダメだよー?」

「はーい!」


小さなヨウは、無邪気に目を輝かせていた。


『昔からヒーローとか好きだったんだね…』


そして、記憶の映像はここで終わっていた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「う…ああ、もう終わり…?」

「目が覚めたかヨウ、お前が気を失ってる間に雪山までだいぶ近づいたぞ。」


なんだってそれは本当かい!?

防寒着とか持ってたかな?


「雪山…寒そうだなぁ…」

「温泉楽しみですねー、一度行ってみたかったので…」

「絶対寒いよな雪山…」


なんかツチノコが不安そうだけど…

温泉はめちゃ楽しみ!


「どうしたのツチノコ?」

「オレ寒いの苦手なんだよなぁ…」

「なるほど、大体わかったよ…」


そういう事ね?

もしあったら、防寒着はツチノコに着せてあげたほうが良いね。


「なんか無い?防寒着とか。」

「あるぞっ、ほら。」


ツクヤに防寒着を貰って、ツチノコにそれを渡した。


「ツクヤが持ってたよ、これで少しは楽になるかな?」

「いいのか?」


ツチノコはちょっと遠慮気味だったけど、防寒着を受け取るとそれを羽織った。


「それじゃあ雪山に…レッツゴー!」


スタッフカーは雪山を目指して走って行った。


〜次回に続く〜

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