僕がやらなきゃ誰がやる

『戦う意思はあるか?』


誰かがそう尋ねてきた。


「だれ…?どこに居るの…?」

『私は…お前の石の中に宿るもの…』

「石…?」


首から下げているお守りの中心に付けられた石が光っていた。

やっぱりこのお守りはただのアクセサリーではなかったんだ。


『もう一度聞こう、戦う意思はあるか?』

「ある…戦って、みんなの役に立ちたい!」


僕は、光るお守りに向かってそう言った。


『なら戦え、お前にはその力があるはずだ…』

「力…?ただの人間の僕にそんなものは無いと思うけど…」

『はあ…色々と忘れているようだな。』


なんか呆れられた。

お守りの中にいる顔も知らないその人(?)に…なんか悔しいなぁ?


『なら思い出させてやる、何か武器の絵は持っているか?』

「絵…は無いけどカードならある。」


僕は、本型のカードホルダーから剣のカードを取り出した。


『そうか、じゃあそのカードに描かれた武器を持っているようにイメージしろ。』


イメージ…?

言われた通り、カードに描かれた剣を持っている自分をイメージした。

すると…


「うおっ…!?なんだこれ!?」


僕の手には、絵に描かれたカードと同じ武器があった。

モンスターの力を打ち払う大剣、それが今僕の手にあるんだ…


「すごい…僕ってこんな事出来たんだ…!!」

『お前に限った話では無いが…まあ、お前はサンドスターを体に取り込めるヒトだからな。』


サンドスター…動物をフレンズに変えたあの物質…?

それが僕の中にはあるの…?


『そうだ、気をつけた方がいい。』

「何を?」

『無駄に武器を出しておくとサンドスターが尽きるぞ。』

「出来れば早く言って欲しかったなそれ。」


僕は大剣を手から離した。

手を離して暫くした後、大剣はキラキラと光って消えてしまった。


「消えた…」

『サンドスターの塊だからな、当然だ。』


いけない、こんなところで話してる暇は無いんだった。

早くみんなのところに行かなくちゃ。


〜平原の中心〜

「クソッ…なんだこの数…!!」

「はわわぁ…倒しても倒してもキリがないですね〜…」

「あっちゃあ…ちょっと油断しちゃったかなぁ…」


僕が行った頃にはライオン族トリオは限界を感じていた。


「ライオンさん!ホワイトさん!バーバリーさん!」

「ヨウ!?危ないよ!早く逃げて!」

「僕はもう逃げない!!」


そう、僕はもう見ているだけなんて嫌だ。

僕も戦って、みんなを助けたい。

僕がやらなきゃ…誰がやる…!!


「来て!!」


僕はもう一度、剣の姿をイメージした。


「行くぞ、セルリアン!!」

『ギシャアァァァァ!!!!』


大剣を構えて、セルリアンの群れに突っ込んで行った…


「おりゃあぁぁぁぁぁ!!!くらえ!!」

『ギャオエェェェェ!!!!』


セルリアンに足蹴にされていたこの間からすれば想像もつかないような勢いで蹴散らしていく。


『キイィィィ…!!』


セルリアンは悲痛な叫びを上げて次々と切られていく。


「な…なんだそれ!?」

「武器が出てきましたね〜」

「よくわからないけど、僕にも戦う力があったみたい!」


休んでる暇なんてない、早くスナネコたちを助けに行かないと…


「まってて、今行くよ…!!」


〜スナネコとツチノコのところへ〜

「畜生…なんだこの数…」

「しかも手に武器を持っていますね…いたたた…」

「サイサイサーイ!二人から離れなサーイ!」


スナネコはすでにセルリアンに怪我を負わされていた。

シロサイさんも一緒にいた。


「僕の友達を傷つけることは許さない!!」

「ヨウ!?なんで逃げて無いんだ!」

「危険ですよ…早くどこかに…」

「大丈夫、今度は僕が守る番だ!!」


そう言って、今度は違うカードを取り出してイメージした。


「行くよ!!」


大剣の次に出たのは機械仕掛けのドリルとノコギリだった。


「ド…ドリル…!?よし、やってみるか!」

『ガアァァァァッ!!!』


興奮した様子のセルリアン達が、こちらに向かって突進してくる…

よーし、まとめてかかってこーい!


「くらえ!!」(ガリガリガリッ!!)

『エ"エ"ェェェェッ!!!!』


セルリアンが反撃しようと武器を振り下ろしたが、武器をノコギリで真っ二つにしてやった。

どうだっ!


「おりゃおりゃおりゃあぁぁぁぁぁ!!!」


いやー、凄い…

こんだけ戦えるならもう安心…


『ガツン!!』

「いったぁ!?後ろにいたのか!?」


…は出来ないね。

しかし不意打ちとは卑怯な!


「男なら正面からこーい!!…あ、性別わからないかごめん。」

「オレもいることを忘れるな、セルリアンども!!」(パッカーン!)

「残りもわたくし達がやっつけますわーッ!!」(二度目のパッカーン!)


残りのセルリアンもツチノコ達と連携して倒した。


「ほかにセルリアンは!?」

「ヘラジカのところに親玉みたいな奴がいた!行けるか?」


任せろぉい!!今の僕は…負ける気がしない!

〜城のアトラクションの前〜

「そんなところに陣取って、将軍にでもなったつもりか?」


城の前についた時には、ブラックさんがセルリアンを挑発しているところだった。

ジャガーさんとは別行動のようだ。

『…!!』


他のセルリアンより一回り大きな個体は、周りのセルリアンを手下のように扱っていた。


「何体けしかけてこようが、私たちが吹き飛ばす!!」

「一撃で吹き飛ばす!!」


よし、僕もこの意外なコンビに助太刀をしよう。


「ヘラジカさん!ブラックさん!僕も戦います!!」

「お前…戦えるのか?」

「戦力は多いに越した事はない!3人で突撃だぁ!!」


今度も違う武器にしようとカード本のページをめくろうとした時…


『まて、いちいち選んでいたら手間取るだろう?私が選んでやる。』


なんて優しいお守りだぁ!

ではありがたく…


『ほら、取れ』

「よしきた!って…うぇ!?」


選ばれたのは鎌でした…

鎌か、どうやって使えば…?


『どうした、私のセンスに問題でもあるか?』

「いえ、何も!」


うーむ…まあいい!!


「よし!この鎌でザックリ刈り取ってやる!覚悟しろデカい奴!!」

「準備は出来たようだなぁ!!」

「一撃で仕留める…!!」


心強い二人…今の僕は負ける気がしない!!


「えぇぇぇぇぇぇい!!!!いけぇ!!」ザクッ

「ぬおぉぉぉぉ!!!」シャキン

「決める!!」スパーン!


僕たちの連携攻撃は綺麗に決まった…んだけど〜…


『ゴアァァァァアァァァァ!!!!!!』


ダメだ、こいつ硬いすぎる!


「来るぞ!避けろブラック!」

「くっ…ヨウ、お前だけでも逃げろ…」


セルリアンが振り下ろした巨大な武器を二人が止める。

だけど僕は逃げるわけにはいかない…


「二人から離れろ!」


セルリアンを斬りつけるが全く腕を離さない。

セルリアンの力も強まってそろそろ二人も限界を迎えたその時。


「私もいることを忘れないでね…っと!!!」バキッ

「ライオン!」


助太刀に来たのはライオンさんだった。


「ライオンさん!?さっきの戦いで疲れてるんじゃ…?」

「仲間がピンチだってのに疲れたなんて言ってられないよ!」


さすが…大将と呼ばれてるわけだよ。


「ヘラジカ!ブラジャガ!ヨウ!四人でキメちゃおう!!」

「わかった、任せろ!」「うむ!」


僕も戦闘メンバーの一人として見られてるのはかなり嬉しかった。


「よしっ!来て!」


また、カード本からカードが出てくる。

お守りの力だろう。


「ロケット…?よし、やってみよう!」


総攻撃ターイム!!


[け も コ ー ラ ス ♪]


「ぬおぉぉぉぉ!!突撃ィ!!」

「これでどうだぁ!!」

「この一撃をくらえ!!」


三人の攻撃に続き、僕の渾身の攻撃が炸裂する。

せっかくだから技名とか考えようかな…?


「名前…えーっと…」


こういう時に限って思いつかない…

あーもう!適当でいいや!


「パイルダーロケットぐるぐるパーンチ!!!!」


ロケットの噴射で回転して、その勢い(遠心力って言うのかな?)で強烈な強烈なパンチをお見舞いした。


『ギエェェェェェ!!!!!!』


ゴブリン型セルリアンの親玉は、ナタデココのような結晶をこぼしながらキラキラと消えた。

そして…また「あのピース」を落として。


〜ほかの仲間たち〜

「おお、セルリアンが消えていくでござる!」

「きっとヘラジカ様がやってくださったのですわね!」

「いーや、きっと大将がやったんだ。」


どうやらほかの所にいた手下のセルリアンは親玉が居なくなって消滅したらしい。


〜平原の中心〜

「いやぁー、お疲れー」

「皆、よい戦いっぷりだった!」


ライオンさんとヘラジカさんがみんなを労う。

ツチノコもスナネコをおぶって歩いてきた。


「お前ら、大丈夫か!!?…っと、意外と重いな。」

「ツチノコォ…(怒)」

「いてててて…やめろ、つねるな!」


重いと言われてちょっと怒ってる…?(笑)

スナネコはツチノコの頬をつねっていた。

女の子やぞ。


「とにかく、みんな無事でよかったですね〜…」

「ああ、みんなが頑張ったおかげだ。」


ライオン族コンビもみんなを労う。

そして、不意にツチノコが尋ねる。


「ところでヨウ、さっきお前がやってたアレはなんだ?」

「アレね、なんかこのお守りが教えてくれたんだ。」

「お守りが?」


お守りが喋るなんて普通は信じられないか…


「このカード、これに描かれた武器を具現化?って言うのかな?それで使えるんだ。」

「ヒトってそんな事できるのか…?」

「じゃあさ、かばんも出来るのかな?」


ジャガーさんがそう尋ねる。

それにツチノコが


「どうだろうな…?」


と返す。

その後、ブラックさんも質問してきた。


「オレもいいか?ヨウ。」

「ドウゾォ!」

「お前がその力を使ってる時…『耳と尻尾』が見えた気がするんだが…」


耳と…尻尾?


「そうか?私は見えなかったが…」

「気のせいじゃなーい?」

「そ…そうか?」


〜いろいろ会話が終わった後〜

「ヨウ、あれってもしかして…」

「またあの欠片だ…」


親玉がいた所には、例によって記憶の欠片が落ちていた。


「なんだ?そのキラキラ…」

「はわ〜…綺麗ですね…」


僕は、バッタリ倒れても良いように座ってからそれを取った。

例によって、パズルのピースのような欠片は光の粒になって吸い込まれていった。


「う"っ…」

「だ…大丈夫なの!?」

「多分…今まで通り行けばヨウは無事だ。」


➖➖➖➖➖➖回想➖➖➖➖➖➖➖➖

ヨウはまた記憶の世界にやってきた。

そこで見たのは、今の自分とそう変わりない見た目の自分と…

赤髪のフレンズだった。


「やっ!!はぁ!!」

「その調子です!それっ!!」


昔のヨウとそのフレンズは、『組み手』のような何かをやっていた。


『戦いの…練習…?』


赤髪のフレンズは昔のヨウの攻撃を全ていなした後、不意にこう質問した。


「ヨウさん、あなたに会ったばかりの頃に教えた言葉、覚えていますか?」

「えーと…『力とは、誰かを守るための物』!」

「大正解!–––あげちゃいます!」


途中、声が途切れてよく聞こえなかったが、そのフレンズは昔のヨウを褒めていた。


『この人が…先生?』


「それともう一つ…『困難は群れで分け合う』事も忘れないでくださいね!」

「はーい!先生!」

「へへ…やっぱり先生って呼ばれるのは照れくさいですよー…」

「いやいや、先生は先生だよ!」


どうやら、昔のヨウとそのフレンズは仲の良い師弟だったようだ。

終始『先生』呼びのせいで、名前だけは思い出せないが。


『僕は…武器だけじゃなくて肉弾戦も出来たのか…?』


また一つ思い出した…

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「ヨウ、大丈夫か!?」

「ハッ…ここは…へいげん?」

「今回は早かったですねー。」


ツチノコとスナネコが見ていた。

今回はそんなに時間が経ってないみたいだ。


「気がついたか、今回は何を思い出した?」


僕は二人に、今回思い出した事を説明した。


「ほー、先生か…」

「ヨウに師匠がいたんですねー。」

「師匠ってか、姉って感じもしたなぁ…」


なんだか優しそうなフレンズだったな…

…あっ!そういや…


「サッカー…どうなった…?」


僕の言葉にパンカメさんが答える…


「実は…ツキノワ殿と拙者がボールをセルリアンと間違えて壊しちゃったんでござる…」

「あらま」


そしてハシビロさんが言った。


「という事だから…今回は引き分けなの。」

「引き分けか…じゃあ、機会があったらまたやろう?」

「いいですね!」「賛成!」「またやろうぜ!」


みんなも口をそろえて賛成しているし、またいつか…


「それじゃあ僕たち、図書館に行かないと。」

「そうか!気をつけて行け!!」

「ありがとねー、私たちの都合で」

「こちらこそ、楽しかった!」


僕は楽しそうだからここに来たわけだからね!


「ヨウさん、気をつけて行ってらっしゃいねぇ〜」

「今度は他のライオン仲間にも合わせてやりたいな。」


と、みんなで別れの挨拶をしていた時…


『ブルルルル…』


「ヨウ、ツチノコ…何か聞こえませんか?」

「うん、なんか聞こえる…」


この音…エンジンの音?


『ブルルルルルルルルルゥ…』


だんだん音が大きくなって…そして…


『ブルゥゥゥゥン!!!』

「な…なにこれ!?バイク!?」



僕たちの目の前に、バイクが現れた。

そのバイクから、僕と同じくらいの背の人物が降りてきた。


「この辺でセルリアンが出たって聞いたが…お前たち、大丈夫か!?」


僕と同じ『男』の声をしていた。

その人は、長袖の黒いライダージャケットを着てジーンズを履いていた。


「セルリアンなら、ヨウがやっつけたぞ!」


ヘラジカさんが自慢げに答える。


「ヨウ?そんな動物聞いたこと…」

「…」


ヘルメットを脱ぐと、僕と同じくらいの男の子?の顔があった。

髪は僕と違って、真っ黒な髪をしていた。

そして、僕とその人はお互いに目が合い…


「君は…?」「お前は…?」


「「ヒト…?」」


〜次回に続く〜

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