ボールはトモダチ
僕達のスタッフカーを止めた二人組、その筋肉の凄い方がスナネコとツチノコを見るなり口を開いた。
「おお、よく見たらスナネコとツチノコか。久しぶりだな。」
「かばんのパーティー以来ですね〜」
「で、後ろの奴は新しいフレンズか?」
「僕はヨウ、フレンズというか…多分ヒトだね。」
「「おお!ヒトか!!」」
『ヒト』というのはこのパークでは珍しい生き物なのだろうか、行く先々で驚かれる。
「んで、臨時メンバーってどういう事だ?」
細い槍を持った方が説明する。
「実はな、我らライオン軍とヘラジカ軍で分かれて『さっかー』というのをやるんだ。」
サッカー?サッカーなら知ってる!
「『さっかー』ってなんですかぁ?」
「何かこう…『ぼーる』っていうまんまるを蹴って相手のゴールに入れたら得点が入る…みたいな?」
ボールを相手のゴールに…
「それってお前たち、前からやってなかったか?」
「あれとは違う、本格的な競技…とか言ってたな、としょかんの奴が。」
このパークにはサッカーの文化があまりないのかな?楽しい競技なのに…
「で、臨時メンバーっていうのはな…こっちの軍は明らかに人数が少ないだろ?」
「確かにな。」
「だからお前たちに助っ人を頼もうと思って。」
「そういう事ね!良いよねスナネコ?」
「いいですね、面白そうですし。」
たしかに人数が揃わなきゃ出来ないよね、サッカーって。
「大将、私達、ツキノワ…そしてお前たち…」
「おお、足りるんじゃないか?」
ツチノコの言葉に屈強な筋肉の方が答えた。
「いや、最初は大将が助っ人を呼ぶって事になっていたんだが…ヘラジカが謎に張り合ってあっちも助っ人を呼ぶ事になってな…」
「相変わらずだなあの二人…」
それじゃあ案内して貰おうか…ってんん?
「そういや二人の名前聞いてなくない?」
「あっ…」「ごめん!」
二人とも熱くなってて忘れてた…のかな?
最初に筋肉の方が答えた。
「オレはオーロックス、ウシの仲間…と聞いたことがある。」
「私はアラビアオリックス、ラビラビと呼んでくれ。」
「よろしく!ロックスさん、ラビラビさん!」
そして僕達は大将の所へと連れられた。
ライオン大将…どんな感じなんだろう…
➖➖➖➖へいげんちほーの中心➖➖➖➖
「大将、連れてきました。」
「…」
大きい…それに凄いプレッシャーを感じる…
「お前らが助っ人か…?」
「は…はいィ…」
ものすごく怖い、今にも喰われるんじゃないか…
「役に立たなかったら…喰う…!!」
「それだけはァァァァ!!(泣)」
終わった()
「ふっ…」
「…?」
なんか空気がパッと変わった…?
「あははは!冗談冗談!いやーめんごめんごー!」
「へ…へえええ…!?」
いや冗談キツいよぉー…
「忙しいとこありがとねー、来てくれて!」
「ライオン、部下の前なのにこわい喋り方しないんですかぁ?」
「そうだねー、かばんが来た後からかな?」
『かばん』、よく出るね…
きっと凄い有名人なんだ。
「それで、ライオンが呼んだ助っ人ってのは?」
「もうすぐ来ると思うよー、あっ!来た!」
向こうの方をみると、ライオンさんにそっくりな見た目のフレンズが二人こっちに来るのが見えた。
片方は茶色のタテガミをしていて、もう片方は雪のように白いタテガミをしていた。
「『さっかー』というのはここでやるのか?」
「はわわ〜、楽しそうですね〜」
「紹介するね、バーバリーライオンとホワイトライオンだよ!」
おお、頼りになりそうな二人…
「今日は宜しく頼む。」
「楽しい遊びにしましょ〜ね〜!」
〜そして紹介タイム〜
「ヨウくんですね〜、よろしくです〜」
「ヨウか、良い名前だな」
「ホワイトさん、バーバリーさん、よろしく!」
「もーすぐ来るかなーヘラジカ…」
ライオンさんがそう話していると、向こうから6人くらいの一団がやってきた。
「やあやあライオン、今日この日を楽しみにしていたぞ!」
「来たねヘラジカ…お互いいい勝負をしようか。」
「ふふふっ…私たちは腕の立つフレンズを助っ人につけることが出来たんだ…さあ、来い!」
ヘラジカさんが合図を出すと、双子のような二人がこちらへ向かって来た。
「私はジャガー!ヘラジカに頼まれて来たよ!そしてこっちが…」
「ブラックジャガーだ、一撃で勝つ…!!」
二人とも強そう…これは凄い試合になりそうだぁ…
〜ヘラジカ軍&ジャガー姉妹と自己紹介〜
「ヨウって言うんだね、よろしく!」
「ヒトだからといって手加減はしない、一撃で倒す…!!」
「お…おてやわらかに…」
その後、ヘラジカさんが言った。
「ハシビロコウは審判をやるから、そっちから一人こっちに来てくれないか?」
「それじゃあオレが行こう。」
ツチノコはあっちのチームで入るみたいだ。
➖➖➖➖➖チーム表➖➖➖➖➖➖➖
百獣の王チーム
ライオン
オーロックス (キーパー)
ラビラビ
ツキノワグマ
バーバリーライオン
ホワイトライオン
ヨウ
スナネコ
森の王チーム
ヘラジカ
アルマー (キーパー)
シロサイ
パンカメ
ヤマアラシ
ジャガー
ブラックジャガー
ツチノコ
審判
ハシビロコウ
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「それじゃあ…試合開始!」
ハシビロさんの合図で試合が始まった。
「よし!」
ラビラビさんが先制してボールを取った。
そしてツキノワさんへパスした。
「お願いします!」
「がんばりますよ〜」
ホワイトさんにパスされたボールはそのままゴールへと向かった。
「そぉ〜れ〜!!」
おっとりした掛け声からは想像つかないような速さでボールが飛んでいった。
「き…来たー!!でも大丈夫!うーん必殺!『フェンス・オブ・アルマー』!」
なんか…止められなさそうな名前してるけど大丈夫…?
「うわーっ!!」
やっぱり?
「1−0 !」
次に攻撃を仕掛けたのはジャガーさん、そしてブラックさんが続く
「一撃で決める!!」
しかし、ボールは『スッ』と消えてしまった
「なにっ!?」
「一撃で決めさせるわけには行きませんからねー、えいっ。」
「さすがだよ!スナネコ!」
スナネコがブラックさんのボールを奪って僕にパスした。
「よしっ、このままバーバリーさんに…」
「そうは行くかよ!」
ツチノコ!?しまった!
「よっ…ほっ!」
「なっ!?」
「よし、この距離なら…オラァッ!!」
ここからこっちのゴールまで結構距離があるはずだけど…
ボールは弾丸のようにゴールへ向かって行った。
「やべぇよ…ツチノコやべぇよ…」
ロックスさん!?なんか震えてない!?
「くっ…ぐわぁ!!」
「1−1 !」
「あ…脚の力ハンパね〜…」
〜その後も〜
「こっちでござる!」
「はわわ…急に現れましたね…!?」
「1−2 !」
「サイサイサーイ!お待ちなサイ!」
「待てと言われて素直に待つ奴は…居ないッ!!」
「2−2 !」
「僕だってやってやる!」
「ヨウさん速いですぅ…」
「そりゃあ!!」
「3−2 !」
「本気…出そうかな?」
「来い!ライオン!」
「「ぬおおおぉぉぉぉ!!」」」
「はあ!残念だったなライオン!」
「なっ…油断したー!」
「3-3 !」
…とこんな具合で同点続きの白熱した試合だった。
「休憩ー!」
休憩の合図が出た、みんなでジャパリまんを食べながら休憩した。
➖➖➖➖➖平原の近くの森➖➖➖➖➖
フレンズたちがサッカーで遊んでいる間、森の中で様子を見ている人影があった。
「へエー、楽しソうじゃん。だーケーどー…」
それはふっとため息をつくと
「ちョっとつまラないかなァ?どうしヨっかなー?」
不服そうにゴロンと寝転がると、再び起き上がり
「そーだ、先回りさせテた『オトモダチ』と戦わセてみるか!」
それは『ピィーッ』と指笛を吹くと、ボールのような形のセルリアンを呼び出した。
「ボクのオトモダチが戦イ始められルように、先に行ってフレンズたチをかキ乱してくれない?」
セルリアンは「わかった」とでも言うように揺れると、ゴロゴロと転がっていった。
「ふフふ…ヒトの漫画で言ウそうじゃないか、『ボールはトモダチ』…っテね。
まあ、ボクの場合は本当にオトモダチなンだけどね…はハははは!!」
幼くも残酷なそれは狂気じみた笑い声を上げてどこかへ消えた。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
「いっくぞー!そりゃー!」
「ぐっ…さすがだな、ライオン!」
「5−5!」
休憩を終えて、僕たちは試合を再開していた。
まさに『一進一退』という状況だった…
「よーし!僕だって!」
勢いだけならみんなには負けない自信があるからね!
で、一方スナネコは…
「まんぞく…」
途中で飽きたのでリタイア。
転んで擦り傷をつけたヤマアラシさんと休んでいる。
「これが入れば…えーい!」
そして、ゴールの前まで来た僕は、足に力を込めて思いっきりボールを蹴った…けど…
「あらーどこ行くんだー!!」
ちょっとコントロールをミスってボールはまるで明後日の方向へ飛んでいってしまった。
「ごめん!取ってくる!」
僕は近くの森まで入っていった…
〜森の中〜
「多分この辺に…あった!」
僕はボールを拾い上げ、森の外を目指した。
〜平原〜
「ごめーん!ただいま!」
「お帰りー…あれ?なんでヨウの後ろをボールがついて来てるの?」
「え?ボールはここに…うわっ!?」
ライオンさんに言われて後ろを見たら、ボールにそっくりなものが3、4個ほどついて来ていた。
「待て…これはボールじゃない…」
『———!!!!!』
「「セルリアンだーっ!!」」
なんでそうなるんだ!!??
…だけど、それだけじゃなかった。
『ギィエエェェェェエ!!!!』
「ウソォ!?地面からセルリアン!?」
「はわわ…どうなってるんですか…?」
「くっ…マズイな…」
ライオン族トリオも流石に困惑していた。
その時、ハシビロさんはセルリアンを見て言った…
「気をつけて…見たことないセルリアンだよ…!!」
そのセルリアンはファンタジーなどに出てくる「ゴブリン」の姿に似ていて、手には剣や棍棒や盾などの武器を装備していた。
しかもそれがたくさん…
「なるほど、ボール型で撹乱してその隙に攻めようって魂胆か…」
「さすがですねツチノコ、僕もそう思います。」
「どうしよう…この数相手にどうやって…?」
僕が焦っていると、ヘラジカさんが
「どうするかだって?決まってる!全員でセルリアンに突撃だ!!!」(バァーン)
と言った。
それにジャガーさんがこたえる。
「いや、真正面からいっても仕方ない!ここは分かれて戦おう!行こう、姉さん!!」
「ああ、ぜんぶ一撃で倒すッ!!」
本当に頼りになる人たちだ。
「それじゃ…行くよ!!」
ライオンさん、ジャガーさんに続いてフレンズ達がセルリアンと戦いに行った…
「そりゃ!!」「はあっ!!」「いきますよ〜!」
「無駄だぁ!!」「仕留めるッ!!」
みんなやっぱり強いよ、本当…
…と感心していると、パンカメさんに話しかけられた。
「こっちでござる、早く安全なところへ!」
「えっ…ああ、うん!」
パンカメさんに手を引かれて僕はセルリアンが居ないところまで来た。
「ここでじっとしていれば安全でござるよ!では、拙者はみんなのサポートに行くでござる!」
という事で僕は安全なところからみんなの戦いを見ていた…けど…
「こんなんで良いのかな…?」
誰も聞いてもいないのにそんな声が漏れた。
いわゆる独り言ってやつ?
「みんなが戦っているのに…僕だけ見ているなんて…」
また一つ独り言を言ってしまった。
その時…
『戦う意思はあるか?』
どこからか、フレンズと同じ、女性の声が聞こえた。
〜次回に続く〜
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