戦いと記憶と旅立ちの準備

「キシャアァァァァァァァァッ!!!!」


暁陽あかつきよう、化物に出くわし早くも命の危機。


「なっ…なにこれ!?」

「セルリアンだ!こんなサイズの奴はしばらく出なかったんだが…」


そうなんだ…てかあのセルリアン?何だか見覚えがあるような…?

気のせいかな…?


「とにかく…ここはオレとスナネコがなんとかする、お前はその辺へ隠れていろ!」

「えっ…わっ、分かった!!」


人間じゃないとはいえ、女の子に戦わせて僕だけ見ているというのは何だか申し訳ない気分になった。

本当に大丈夫なのか…?


「スナネコ、そっちへ回れ!」

「わかりました…!!」


スナネコは素早い身のこなしでセルリアンの背後に回り込んでいった、元動物というのは本当みたいだ。


「ギイエェェェェッ!!!」


セルリアンが叫んで、その長い脚で二人を蹴散らそうとした。


「よっと、お返しだ!オラァッ!!」

「しょおっと…邪魔ですっ!」


二人はさっと交わしてカウンターアタックを叩き込んだ。

ツチノコは蹴りで脚を粉砕し、スナネコは爪を立ててもう一つの脚を斬り裂いた。


「つ…強い!」

「まだまだァ!!」


ツチノコはさらにラッシュ蹴りを炸裂させた。


「カッコいい…!!すごーい!」


なんでだろう…強い二人を見ていたらじっとしていられなくなってきた…


「僕も戦いたい!うおォォ!!」

「バッ…バカ!なんで出てきたんだ!」

「大丈夫!僕だって戦え…へぶッ!?」


出た瞬間…セルリアンの残った脚で蹴り飛ばされた。

やっぱこうなるよね、人間だもの。


「なにやってんだァァァァ!!!!!ヴォレー!!」

「ツチノコ、セルリアンがヨウを蹴飛ばしてるあいだに隙が出来てますよ…!!」

「何っ、でかした!その隙をついて石を壊せ!」

「やってみますね!しょお!」


〈パッカーン!〉


「ふう…終わりましたね。」

「ヨウ…」

「はいっ」

「なんであんな事をした?(圧)」

「はい…ごめんなさい」


本当に申し訳なかった…戦っている二人を見ていたら体が勝手に…

記憶をなくす前の僕はかなりバトルマニアだったのかな?

それとも、野生の本能ってやつ?


「まったくお前って奴は…(なんかサーバルみたいだな…)」

「ヨウはかなりのドジっ子ですね。」

「ひどいよー!」

「でもまあ…ヨウがセルリアンの囮になってくれたおかげで倒せました。」

「そうだな…そこは感謝しておく…」

「へへ、照れるな」


そんな会話をしながら次に進もうとしたら、地面になにか落ちてるのに気がついた。


「なぁにこれぇ?パズルのピースっぽいけど…」


僕が拾いあげた瞬間、金色のパズルのピースみたいなそれは光の粒になって僕の体に吸い込まれていった。

その時…


「ヴッ…なに…これ…頭が…!!」

「おっ…おい!どうした!?」

「頭痛いのですかぁ?」


頭が痛い、電気を流し込まれているように痛い…

意識…が…




➖➖➖➖➖➖➖回想➖➖➖➖➖➖➖


ヨウは目の前で中年くらい男性が戦っている様子が見えた。


「よっしゃあ!!」


〈パッカーン!〉


その男性は、勢いよく小さなセルリアンの群れを蹴散らしていた。

その男性はどことなくヨウに似ていた。


「パパすごーい!」


9歳くらいの小さな子供がトコトコと男性に歩み寄ってきた。

髪色はヨウと同じ金髪、おそらく昔のヨウだろう。


「だろ?なんたってパパは昔スーパーヒーローだったんだぞー、悪い奴をいっぱいやっつけてたんだ。」

「ほんと!?すごーい!」


嘘なのか本当なのか怪しいことを言って子供、もとい昔のヨウを喜ばせている。


「ボクも大きくなったらパパみたいになりたい!」

「ははっ、きっとお前ならなれるぞー、その時にはこのジャケットが似合う大人になってるかな?」


……

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「ヨウ…ヨウッ!!」

「はっ!?はい…!?」


ツチノコに呼ばれて目が覚めた。

今のは…夢?


「頭、痛くないですかぁ?」

「大丈夫…ありがとう…ところでここは?」


気がついたら僕たちは洞窟?のようなところにいた


「僕ん家ですよー?」

「へえ…ここ、スナネコの家だったんだ…!!」

「普段、昼間はここでじっとして…夜になったら動くのです…」


夜行性…やっぱネコなんだなぁ…


「ヨウ、もう大丈夫なのか?」

「うん!大丈夫、ありがとう!」


ただ…気を失っている時に見たアレはなんだったんだろう?

僕は自分が気を失った原因であろうピースの話をした。


「パズルのピースみたいなものを拾った瞬間気を…」

「その時に夢を見た…ですか…」

「うん、だけど夢にしてはハッキリと覚えてるんだ…」


そう、夢ならいつかは忘れるはずなのに…今でも見た内容が記憶にあるんだ…


「それってもしかして、お前の記憶なんじゃないか?」

「記憶…?多分そうかも。」

「記憶の欠片…ですか、まるでとしょかんの本にあったおはなしみたいですね!」


図書館…?


「博士がいるところです。」

「僕の考えてたことがわかったの?」

「そういう顔してました。」


やっぱ僕って顔に出るタイプなんだ、こりゃ隠し事はできないなぁ…(笑)


「お前文字読めないだろ、なんで知ってるんだ?」

「博士に読んでもらいました。」

「そういう事か…」


とりあえず、その図書館ってところに行けば博士がいるのか…それなら…


「僕、その図書館ってところにいこうと思う!」

「おー」

「大丈夫か?さっきのお前を見ているとどうも放っておけねぇな…」


たしかに…さっきの件で僕一人ではいける気がしなくなってきた…


「俺がついていく、放っておいて死なれちゃ寝覚めが悪いからな。」

「僕もついていくです、なんか面白そうなので。」

「お前もついてくるのか?途中で飽きても簡単には帰れないかもしれないんだぞ?」

「うーん、多分すぐには飽きない気がするんです。」


二人がついてきてくれるなら心強い…正直さっきのでかなり不安だったからね。


「よし、そうと決まれば早速出ぱ…」『グゥ〜』


そういえば…起きてから何も食べてなかった…


「…の前に何か食べよう…」

「ジャパリまんでも食べますかぁ?」


スナネコが中華まんっぽい何かを出した。


「なぁにこれぇ?」

「ジャパリまんだ、俺たちフレンズはこれを食べて腹を満たしたりサンドスターを補充するんだ。」

「へぇ〜…めっちゃ美味しそう…」


試しに一口食べてみた、ものすごく美味しい。

それになんだか懐かしい感じがする…


「おいしい…」

「そうか、良かったな。」

「ヨウ、ツチノコ、こっちも食べますか?」


これは…チョココロネ…?


「な…なんだこれ!?今まで見たこともなかったものだ…!?」

「ジャパリコロネ…って言うみたいです、はかせが古い建物から見つけてきたのですー。」


食後のデザートか、なかなか充実した食事だ…


「よし、それも貰う!」

「おっ…おい!一人一つだぞ!?」

「わかってるわかってるぅ!」


こっちもやっぱり美味しい!

砂漠Desertで食べるデザートは格別…ってか…


➖➖➖➖➖食事を終えたあと➖➖➖➖

「いやー食べた食べたぁ…」

「まんぞく…」

「こんな珍しいものを食べられるなんてな…」


さて、食事も済んだところだしそろそろ出発…


「おいちょっと待て…」


スナネコの家から出ると灼熱の砂漠が…


…寒ッ!?


「寒いんですけど!?」

「だから待てって言ったダルォォ!!」

「夜の砂漠はとっても寒いですー。」


そうなのか…これは不用意に出て行こうとした僕が悪い。


「ごめん、迷惑ばっかりかけて…」

「気にすんな、お前みたいなトラブルメーカーは初めてじゃないからな。」


トラブルメーカーな知り合いがいるのか、仲良く出来そうだね…


「まあ、ショボくれてても仕方ない。今日はもう寝ようぜ?」


あっ…寝る場所どうしよう。

女の子二人に挟まれちゃ眠れる気がしない!


「よし、それじゃ僕はこのへんで寝よう。」

「どーしてちょっと離れてるんですー?」

「今日会ったばっかりだからな、緊張してるんだよ。」

「ほぉー。」


ナイスだツチノコォ…


「そんじゃおやすみ。」

「おやすみなさーい。」


そして僕たちは眠りについた…


〜・〜・〜・夜の砂漠にて〜・〜・〜・

セルリアンが倒された地点の近くの岩山に、黒い人影が立っていた。


「実験ハ成功〜♪セルリアンがとってモ強くなったヨ…」


その人影はニヤリと笑うと、何処かへ去って行った。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


「んごぉぉぉぉ…ぐごぉぉぉ…」

「すう…すう…」

「スヤスナァ…」



〜次回へ続く〜

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