オーソドックス

【詩、はじめての出会い】

空気が濃すぎる群青は

快晴だけ、幼い言葉に溢れる可愛さで

詩を綴っていた それだけで天才だった

通勤途中の5分間の細道は学がない僕にとって素敵に見えた

僕と一緒に下校した年下の子供たちは

僕の詩の一部となって消えていった

小学校5年生の最後に告げた児童詩の運動会は

2位だったよ 悔しいか嬉しいかわかんないから続けることにした

これからも詩を書くのかい? と言われても

これしかないわけでもなく

これ以上にないからだ

あのままでいられたらよかったのだろう


【詩、綴りゆく青年の頃】

凡人、言葉と音とともに嫌う

花なら目立っているわかっている?

テーマがあるなら何でも書ける

題目がないから尖っている

いい言葉が書きたい四六時中

タイトルは所詮パセリ

ハンバーグ食ってろ

最新の麻薬盛って

君らに食わせてやる考えろよ 感じろよ 喜べよ

楽しそうな気分にしてやるよ

でも、殺さなかったよ

自分の手をナイフに突き刺して

デミグラスソース腹に垂らして犯人は僕です

一生詩を書けないよう檻に入れてください

詩が怖くなったんです


【詩、今】

勝てる芸術が欲かったよ

なかった、おぞましいほどなかった

追い抜かれたランナーは細道に逃げていく

限界だった負けたくなかったから隠れて消えよう

死のう

僕と詩の道はここで終わり、思った

細道に残されたデミグラスソースがついたナイフ

砂利と一緒になめたよ

戦えることと甘くはないことが

しょっぱい気持ちになった

書くだけ、走るだけ、ペースを保つだけ

それだけで限界だ

でも、進んでいるかもしれない

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