続・「100人の町に」

【100人の町に】

町に100人の人が住んでいた

その内50人は幸福で50人は悲しみを背負っていた

悲しんだ50人が自殺をすると言うと

幸福な50人は知らないフリをした

そして、50人が息を引き取った

50人が死んだ町の人々は全てが幸福ではなかった

25人が幸福で25人は悲しみを背負ってしまった

悲しんだ25人が自殺をすると言うと

幸福のままでいたい25人は説得をしなかった

25人が死んだ町の人々に異変が起きた

12人の幸福人、12人の不幸人、幸福も不幸も感じない人が一人いた

しかし、それが不運だったのかその一人が12人を束ねて自殺を誘導した

12人の幸福人は罪によりその一人を殺した

13人が消えた町に生きるすべがない人達がいた

6人はこれから頑張れると言い、6人は絶望を感じた

6人が消えた町に

3人の家族と3人の一人ぼっちがいた

君たちは幸福だから、そう言って3人は自殺した

町に父と母と息子がいた

父と母は老いで死んだ

この町には君しかいない

だから、現在の幸福人はこう述べる

君たちが不幸になってくれ

私たちが幸福になれるから

  参考文献:「心を欲しがるブリキになる」一遍「100人の町に」著:奏熊ととと


【不幸な一人の男】

男はこの上ない貧しい人間だった

職もなく、金もなく、森の中に家もつぎはぎのものを集めてはそれらしい形で暮らしていた

周囲からは煙たがられ石を投げられる始末でもある

昔、善により大きな借金をしてしまい

人生をやり直したとしても借金があるため職に就けば給料は消える状況だった

彼は毎日幸福者が捨てた贅沢なごみを拾いそれを口にしたり、家の近くで草を育てては調理して食べた

しかし、彼は幸せであった

夢が叶っていたのだから

家庭菜園が趣味で誰一人とも会わない生活を望んていたのだから

濃い空気を肺に抱き、一人で自給自足をする生活は快楽に思えたのだから

だから、彼は常に笑っていた

何をするにも楽しくて仕方がなかったのだ

ある人は変人と呼ばれ、ある人は気持ち悪いと言われ、ある人は病気であると答えた

でも、彼の感情は喜びに満ち溢れていた

なぜこんなことになったのだろう……


【幸福な一人の女】

女はこの上ない裕福な人間だった

職に就かないほど財力があり、町のど真ん中に立派な住宅を建てて暮らしていた

周囲から羨ましがられ花を投げれられ祝福していた

昔、罪により巨額な利益を得てしまい

人生を覆されたとしても権力があるため職に就かなくても増える状況だった

彼女は毎日不幸者を従え贅沢な食べ物を求めたり、高級料理店でフルコースを嗜んだ

しかし、彼女は不幸せであった

夢がなかったのだから

贅沢な食べ物も飽きて、誰かを従わせる生活にうんざりしていたのだから

工場の廃気を肺に抱き、誰かに常に見られる生活が苦しかったから

だから、彼女は常に冷徹であった

何をやったとしても心が燃えなかったのだ

誰かは皇女と呼び、誰かは美しい人と言われ、誰かは才女であると崇められた

でも、彼女の感情は苦しみに満ち溢れていた

なぜこんなことになったのだろう……


【ある先生と生徒との会話】

「っという訳で【不幸な一人の男】と【幸福な一人の女】の詩のように外面的には幸福に見えるが内面的には不幸であることや外面的には不幸であっても内面的には幸福であることがわかる。この二つの詩を見て一見にして人の幸福状態はわからないことが挙げられる」

「先生、では【100人の町に】という詩で自殺した不幸者という言うのはどちらなんですか?」

「いきなり、何をいいだすんだい? それはかなり前の授業の話だぞ」

「気になりまして」

「そうか…… それなら君はどちらだと思う?」

「それはもちろん【幸福な一人の女】の方だと思います。なぜなら、彼女自身が不幸であるからです。個人の不幸に耐えられないくて自殺したんだと思います」

「なるほど、でも私は違うと思うよ」

「どうしてですか!?」

「だって、【幸福な一人の女】はいつだって【不幸な一人の男】を権力で不幸にすることができるからね。自殺に追い込んだり、自殺に仕立てることができるのは彼女の方だよ」

「そうですか、でも僕は【不幸な一人の男】が幸福で居続ける可能性に賭けてみたいと思います」

「そうか…… まぁ、可能性は0ではないね。今にも同じことが言えるかもしれない。社会、生活、国に君臨する【幸福な一人の女】は常に【不幸な一人の男】を不幸の道へと誘っている。それに打ち勝ち、幸福でいられることが【幸福な一人の女】をより不幸の道へと誘っているに違いはないと思うよ。 はっ、いかんいかん今日の授業はここで終わります」

「起立、礼、ありがとうございました」




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