カレーの作られ方、食べられ方
【台風被害】
この仕事をやって40年、こんなにひどい台風は見たことがない
おかげさまで6か月の苦労が水の泡だ
土にめくりあがるつぶれた中途半端な球根が不ぞろいに虐殺されているでねぇか
ゴミの中で宝を探すなんて昔の貧乏だった頃を思い出す
ギリギリ真ん丸に太ったような玉線に望みを賭けるしかないか
風に勝った黄玉よ価値ある食卓に並ぶことを祈るぞ
【太陽農場】
広大な大地に
今年の実りは
寒い大地に
三人でやってきた
麦わら帽子を被って
これぇめでてぃインカだ
金ぴか太陽みてぇな シトリンさ
【ポーク刑務所】
栄養は与えられ、寝床もあり、常に自由である
しかし、それ以上なく塀の中
僕らはずっと待っている解放されることを
生きている証を取り戻すことを
でも、生きるってどういうことが答えだろう
それは、僕らの人生を歩めることを
今日、ある小人が面会に来たんだ
足が長く羽もあり、塀を通り抜けたんだ
塀の向こうはさぞ綺麗だっただろう
僕らも小人に頑張らなくちゃ
いっぱい食べて、いっぱい寝て、いっぱい運動しなくちゃ
あぁ、僕らは小人にならなくちゃ
そして、自由を手に入れるんだ野道を駆け回り生きていきたい
28日後
僕らは殺された、一部体は切り刻まれ粘りを放ち
一部体は綺麗な断面図となり、一部体は一口サイズになった
腸も4等分にカットされ、牙は捨てられた
【香辛料の母】
18時を回る刺臭
こんな時間まで給料は18万
差し引いては11万の親子
かぼちゃの煮つけを汚す香りが帰ってきた合図
今日はもう、ご飯いらないの?
私たち何年工場のアルバイトやって食いつないできたんだろうね
お父さんが死んでからあんたが働くようになったけど
お金が溜まったから、もう頑張らなくていいんだよ
箸が止まった時、話すわ自動車整備士専門学校のこと
あんた昔から好きだったよね車
だからさぁ、行きなよ
あんたが行っている間もっとパートの仕事取るから
ねぇ、なんでそんなに辛そうな顔をするの
ツンとした匂いが私を寄せ付けないのだろう
どうして私の言葉が迷い始めるの
この香りのせいだ この香りのせいだ
【長く、ランドセルの帰路】
街頭、夕暮れ時に照らす無駄
言葉、願望が詰まった騒音
今日は待ちに待った誕生日
焦げた香りが包まれるように
実り、オレンジを待った夏の頃
カレー、そんな秋の夕暮れが詰まった大好物
ママには言ったよ嫌いな人参さんは会わせないでって
約束してくれたよ早く食べたいな
本日のカレーは君が嫌いな人参さんに会えなかったよ
本日のカレーは台風に勝った玉ねぎさんの勝利の味だよ
本日のカレーはお祭り農場でとれたお芋さんの踊りの味だよ
本日のカレーは刑務所の中で暮らした豚さんの絶望の味だよ
本日のカレーはカレールウ工場に勤める息子の母の悲しみ味だよ
本日のカレーはそれを全て受け取って料理をしてくれたママの味だよ
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