三日月と花火

【し忘れ花火】

夏に消してくれなかった怠惰なご主人だのぅ

足が冷える三日月にやるとはたまげたもんじゃ

お月様が綺麗ですねが皮肉に聞こえるかもしれんが

今日、私を成仏してくれたことを感謝するぞ

午後7時の温かさにわしが似合うなら秋の花火もまんざらではない

アスファルトに消えいく細胞がお主の足にかからぬよう

三日月状に染まるのも悪くわないかな

あぁ、わしの体が地面に消えていく

このまま捨てられ大きな炎に包まれるよりも

小さな炎に灯してくれたお主よ

今は温かいだろう



【少女】

きょうはね、花火をするの

パパが買ってきた花火

でも、今はお外は寒いってママが言うから

あったくして近くでやるんだ

それでね ろうそくの火に花火をつけたら

足がさむくてあったかかったの

よくわかんないけど

さむくてあったかかったの

んでね わたしおつきさまだったの

よくわかんないけど そんなね かんじだったの



【居続けるアスファルト】

すぅふぅ すぅふぅ 夜が僕を冷たくする

すぅふぅ すぅふぅ 熱い火の玉の次は白い糸玉がやってくる

僕はずっと耐えている重いもの、熱いもの、冷たいもの、汚いものも

こんなに耐えているのに見つめている君は何だい?

憎いなぁ、消えたと思ったらまたやってくるのだから

あぁ、今日はなんか来たようだ

しぅぅぅパチンパチン 熱い火の結晶が僕らを打ちつける

しぅぅぅパチンパチン 寒い僕に暖かい星がやってきた

そうか、君が伝えたかったことはこういうことか

僕は常に耐えて感じているそれが羨ましいんだろ

君は見つめるだけで冷たいだけで我慢しているんだ

ざまぁみろ、だから消えてくれ、そしてまた会おう

今日は何て言ったって心が温かいのだからさ

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