第2話 癒しの聖女
私の名前は北条マキ、私は第3の国イスタムニアに召喚された。
召喚された私はこの国を救う聖女になってほしいと頼まれた。
この世界に来て私が貰った力は癒しの力。どんなキズだろうがどんな病気だろうが治すことができた。
そして、死んでしまった人間までも生き返してしまった。
私は何度も元の世界に反してほしいと懇願した。
その答えはこれだった。
魔王国ティアソムリアには帰還の塔と呼ばれる場所がある。あの場所だけが唯一帰る場所なのだ。と
そして、その魔王国に何回も周りの国が入り、敗れ続けているとの事だった。
勇者と勇者が出会うとその力により爆発が起こり、危険。
故に攻めるときは1国づつという協定ができた。
魔王の軍はとても強く、一人に対して数人でかからなければ負ける。そこで数を揃えるが、魔王国の周りは森林資源が中心で食糧やそれらを確保しつつ進むのは難しく、人数が限られてしまう。
…なんか敵の思うつぼっぽいんだけど…なんなんだろうね?
すごく誘導されてる気がするよ?
とは言っても私はただの高校生。残念ながら3の国の弱い兵士にすら1人では勝てそうにもない。
命令に背けば殺されるだけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回、3の国が魔王国を攻める
魔王国には英雄がいて、勇者の力を無効化してしまうそうだ。
だが、この能力ならば倒せるかもしれないと、玉砕みたいな形を繰り返しているという。
私たちに課せられた作戦はゾンビアタックだ。
なんていうか、FPS系女子だったおかげでそういう事しか浮かばないのだが、戦い続けている兵士を癒し続ける。
私の能力は半径3キロを超えるし、敵と味方を識別することもできる。
私の力はほぼ自分は意識しないで使い続ける事もできる。まさにチート能力ではある。
不死の兵隊を3万人。英雄が無効化できるのは自分に対しての能力だけらしいのでこれを使えば勝てるらしい。
そして私は帰還の塔へ入ることができるというわけだ。
ずさんな作戦だとは思うが、どんなに変でも私は反対する事ができない。
投げやりな気持ちになりながら、行軍が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
国境を越えて2日目、敵の斥候に食糧車を破壊された。人的被害は無いが、余分な食糧が無くなった。
3日目、橋が落とされていた。全員で泳いで渡った。
4日目、食料にできる魔獣は襲ってこない。おなかがすいた。昨日の水泳のせいだ。
いつも魔王国はティアソムニア平野という場所に軍を展開する。
今回もそうかと思いきや、途中の森林で襲われた。
何人も死んだが、全員生き返した。
そして6日目、展開をしていた軍との戦いが始まった。
イスタムニアの兵は弱いのだが、切られても死なない。死んでも生き返るを繰り返して圧倒していった。
かと思ったのだが、徐々に劣勢になる。
生き返らない。
死んだ人間に癒しの力をかける。かけ続ける。
でもダメだ。誰も治らない。
「いてぇ!話が違う!聖女様!!治してください!!」
「ぎやぁああああああ」
悲鳴が聞こえる。私は力を使い続けている!どうして!?
「なんで?なんでなの?」
目の前には大男がいた。
「悪いが、俺にそのチートは通用しない」
私は魔王国に捕まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
捕虜になってから簡単な尋問が行われた。
イスタムニアにあまり義理は無く私は全部素直に答えた。
交換条件は…
「帰還の塔に入れてください…お願いします…」
「ああ、元々入ってもらう予定だったんだ。辛かったなもう大丈夫だぞ」
応対している大男はニコっと笑う。良かった…
街並みも綺麗だし、私はイスタムニアに騙されていたのね。
まぁ資源は豊富そうだし、襲われる理由はわかるけど…。
「何か食べたい物はあるか?こっちのものをお腹に入れて持たれても困るから明日から絶食になるぞ?」
大男はちょっと気まずそうにそういった。
「…ショートケーキってありますか?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、ショートケーキを食べて2日間の絶食があった。
帰れるというのであれば何も辛くはなかった。
そして帰還の塔の扉が開き、絶望する。
「…コールドスリープ…?」
「なんだ、知っているのか。まぁ…もうどうしようもないが」
私は逃げようと暴れるが、大男の前では何もできない
「やだっ!かえして!!いやぁあああ!!どうしてよ!」
腕が、足が拘束されていく
「私何も悪いことしてないじゃない!どうして!?なんでよ!」
眠りの魔法がかけられる。そして意識がなくなっていった。
私は夢を見るのだろうか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつもの執務室で斥候からの報告書を貰う。
「癒しの聖女!?ああ?」
「どうしたんすか?いや、そんなんだったら全然平気でしょー」
呑気な魔法使いの部下、ミカゲが言っていた。
「いや、お前…そうか、過回復ってやったことあるか?」
「あーなんか治癒師みならいがそんなのやるって聞いたことありますよ、治りすぎて傷口が腐るって聞いたことありますね」
「…まさか?」
「おそらくなんだが、この聖女はそれができる」
「は?」
「んで、効果範囲実験の結果もこっちに来てるが、最大5キロメー…5キルメルだ」
「はぁ?」
「これしかも半径でこれをずっと放出することもできて」
「……」
「それでいて敵味方識別可能」
「……亡命していいですかね?」
「したら殺すぞ?」
「すみません」
俺の予想が正しければ過回復で起こるのは細胞の癌化だ。
この聖女は漏れ出した放射能よりも危険な存在である。
「と、とりあえずイスタムニアが馬鹿であることを祈るしかないな」
「大体祈ってますね隊長」
「前回もさらっと「デンシレンジを知ってたら俺たち全滅だなー」とか言ってましたよね」
「…だよなぁ」
まさしくその通りなのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「食糧車に火をつけました」
「了解だ」
「橋は?」
「落としました。」
「暗殺班は?」
「待機できてます」
「今回は簡単ですね」
「…まぁ他にはどうすることもできないけどな」
斥候に命じたのは
聖女から治療をされた人間のその日の食事量を調べることだ。
それによると大けがをした人間ほど食事を多くとる傾向があった。
魔力による治療と違い、その人本人の栄養を使って治すのだ。
ただし、そこはチートなのだろうが、恐ろしく効率がいいな。
カレー2杯で全身細切れから1回は生き返れそうだ。
だから栄養のガス欠を狙う。それが今回の作戦だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして開戦。一瞬で終わった。
ゾンビアタックを期待してれば動きは悪くなる。こっちはヒット&アウェイを心がけていれば何も問題ないしな。
元々周りには鉄があまり普及していない。青銅武器がほとんどだ。
あまり意識はされていないが、こっちにもレベルがある。
このレベルなんだが平均20は敵国と違う。
相手が14程度でこっちは34ぐらいかなぁ。
レベルも装備も違えばまぁ無傷で終わってしまうのだ。
困難を超えし時にレベルが上がる。というのが実証されている。
ちなみに私のレベルは50だ。
それだけ死にそうになっているという証拠でもある。悲しい。
意識はされない理由は仮にレベル99であってもレベル1にナイフで刺されたら死ぬのだ。
だから本当に意味がない。ゲームでのランクとかって言ってもいいかもしれない。
話を戻そう。
俺は帰還の塔の真実を知っている。
真実は本当にごく一部しか知られていないのだ。
だから俺はこれから悪魔になるだろう。
何も知らない高校生の女の子を永遠の牢獄に入れるのだ。
………畜生。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ただいま…」
城下町にある自宅に戻る。
「おかえりなさい、あなた」
金髪ブロンドの美女が出迎える。フィルターはかかってるかもしれないな。
この世界で恋愛結婚できたんだからまぁ悪くないよね…。
妻のソニアはそっと私を抱きしめてくれた。
帰ってきたらいつもそうしてくれる。…雷の勇者の時は無かったけど。
「おつかれさま」
「…ああ。」
暖かさが広がる。これに何度癒されただろうか。
「ショートケーキを買ってきたんだ。一緒に後で食べようか」
悪いが、俺にそのチートは通用しない こむすび @kmsb
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪いが、俺にそのチートは通用しないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます