第6話 お昼ごはんと深見くん

 その日は仲良しグループで、お昼ごはんを外で食べようねということになりました。


 場所はね、学校の中庭に植わっている銀杏の大木の木陰です。



 深見くんがいつまで経ってもやって来ません。



「おっせぇなあ、深見のヤツ」



 私たちは深見くんを待ちながら、楽しくおしゃべりをしていました。



「うわぁぁぁぁ……」



 遠くから土埃つちぼこり狼煙のろしのように立っているのが見えます。

 そして絶叫も。


 あ〜っ、あれは深見くん?


 猛ダッシュで走って来る深見くんの後ろから、なんとニワトリの大群がやって来ます。


「わぁぁぁ―――――!!」


 深見くんとニワトリが私たちの横を駆け抜けていきました。



 ニワトリたちが深見くんに羽を広げ襲いかかります。


 たくさんのニワトリのコケコケうるさい鳴き声が騒がしい!


 あたりは大パニック!


 ニワトリたちから逃げ惑う深見くん。


 足がもつれて、深見くんは地面にベッターンと倒れた!


 深見くんの持っていたお弁当箱は空中を舞います。フタが開き落ちたら、中身が全部転がり出てしまいました。


 可哀想な深見くん。


 同情するけど。あー、深見くんは(彼氏としては)ないわあ。


 ニワトリが、地面に落ちて広がる深見くんのお弁当をつっついて食べています。


 ニワトリたちがお弁当に夢中になっているうちに、私たちはみんなでそーっと地面に倒れたままの深見くんを持ち上げ運び救出しました。


 その後はみんなで必死に教室に逃げ込みました。




 あとで先生から話がありました。


 近くの養鶏場で小屋の鍵を締め忘れて、ニワトリたちが大脱走したそうです。


 なんで深見くんが狙われたのか?


 真相はニワトリたちに聞かねば分かりませんが、動物の本能でしょうか?


 深見くんのヘタレっぷりがニワトリには察知出来て、コイツちょろいなとか思われたのではないかと私は勝手に推測している次第であります。


 マジ怖かったわ、ニワトリの大群って。


 でも笑ったけど。


 深見くんは、ハプニング大王なのね。


 面白いので観察を続けます。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る