第27話 最終対決 前編

「エヴァナスタ。先に下降りてろ」

「え、えっ?」

「下に続く螺旋階段がある。そこを降りれば一階に着く。そこから外に出て待ってろ」

「で、でも、なんで……?」

「これから、もっと激しくなるぞ」


何をとは言わずにそう口にした。

手にある剣を強く握り締めると足を踏み込み、地面をめり込ませるとそこから蹴った。

相手に近付くと縦に剣を振るった。そして、オレは見事に切った。


どこに消えたかと思えば答えはすぐ右。

瞬きするまにオレのすぐ横に着くとかどんな速さを持ってんだよ。

すぐに剣を振ろうとするが、その前に相手が蹴りを入れてくる。見た目は細い腕にスタイルの良い体。どこからそんな強さを引き出しているのかと思ってしまうほどに強い蹴りだった。  


何とか腕で防御することは出来たモノの、そのままオレを蹴り飛ばし未だ逃げることの出来ていないエヴァナスタの横の地面に。キャッ!と女の子らしい悲鳴を上げる彼女を横にオレはすぐに起き上がる。 


「早く逃げろ!」

「え、ええ!」


エヴァナスタは後ろに向きを変え、走り出した。

よし、これでちゃんと戦えるな。

見た感じでは、彼女を縛っていた鎖は魔法を使えなくさせるためのモノだ。恐らく、彼女の実力なら魔族がでても頑張れば倒せる。

まあ、自分の探した限りではもう魔族はいなかったけど。

その後、蹴り飛ばしたその女に口を開く。


「お前、やっぱり魔王か?」

「如何にも。わらわが魔王ルナーアじゃ。崇め讃えよ」

「やなこった。なんだって人族のオレが魔族のお前に対して謙譲しなきゃなんねえ」

「ほっほっほ、冗談じゃよ」


真面目なのかそうじゃないのかさっぱり分からないな。スキをつこうと思っていても、つくスキがない。流石は魔王といった所だな。


「ま、おしゃべりはここまでにして。そろそろ──」


加速魔法を発動し、今度は一瞬にして魔王の前に。体だけでなく、振る速度も上がった剣を繰り出す。しかし、それも彼女の五指で受け止められてしまう。すぐさま拳を打ちこもうとするが、それも難なく手で受け止められ、力任せに掴まれたその二つを振り払い、跳躍して後ろに下がる


「ふむ、剣には剣をじゃな」


彼女が手を空に挙げると、そこから暗黒物質が渦のようになりながら集まっていき、それが剣の形を形成していく。そして、創られたのは黒い剣だ。それは未だに暗黒物質を吹き出しており、まるで帯のようなモノも無数に出ている。


「『魔王剣フリードルメア』あらゆる全てを切り裂く、魔王にしか使えない固有の魔法じゃ」


その剣をオレに向けると、その剣を上に振り上げるようにして切った。

すると、黒い剣撃がそこからオレに向けて一直線に襲った。


「危ねっ!」


飛んで避ける。

横を見ると、見事に地面は一刀両断されている。

切れ味やべえ!

オレは空中で体を螺旋させると、剣をその回転の勢いに任せ魔王ルナーアに向かい投げつける。勢い良く投げられた剣は真っ直ぐ魔王に向かっていくが、その剣を自身の持つ暗黒の剣『魔王剣フリードルメア』で軽々切った。


態勢を変え空を蹴り、魔王の元へ向かう。その合間に創り出した双剣で彼女に攻撃する。

ガキィ!と鈍い音が鳴り響く。

地面に着地すると、尚も剣撃を連続で与えるが、それも剣で防がれる。

そこでオレは超至近距離で魔法を発動する。


断罪光剣ギルティシャインセイバー


数多の魔方陣が魔王の周りに描かれ、そこから光る剣が現れる。そして、それが彼女をめがけ放たれた。光の爆発が起こると共にバク転し距離を取る。


結構な威力が出る魔法だけど、どんなもんかな。

と、思っていれば光るその空間は一瞬で漆黒に染まる。一閃されればそこからコツコツとヒールの音を立てながら魔王ルナーアが現れる。


「先程のは中々効いたぞ。褒美をやろう」


空の手を上に挙げれば無詠唱で魔法を発動する。


魔王獄炎ルナーアス


四つ大きな魔方陣が描かれ、そこから紫と黒の炎の巨大な玉が四つの魔方陣からそれぞれあらわれる。

それは迷いなくオレの元へと襲いかかる。

あくまでもオレの勘だけど、これはやばい!


そうしてる間に四つの巨大な炎はオレを呑み込んだ。








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