第28話 最終対決 後編
※ ※ ※
その頃、一方のエヴァナスタ。
魔王城の大きな螺旋階段を、彼女は必死に走り降りていた。
アークと魔王ルナーアの対決が始まってしばらく経った頃、ようやく螺旋階段の半分を降りたのだった。
「はあっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
全速力のノンストップで階段を降りていたからか、疲れも溜まり息も激しく切れていた。
一度、走ることを止め階段似合う手すりに手を起きながら必死に息を吸ったり吐いたりする。
「………あいつは……大丈夫……かしら……」
アークの事を心配するエヴァナスタ。
しかし、後すぐに彼女は階段を降り始めた。
※ ※ ※
全身を呑み込む紫の炎を相手にオレは同じく炎魔法で対応した。
『
下から現れた魔方陣から紅の炎が回転しながら発生する。その螺旋する炎は徐々に大きくなっていき、後にオレの周りを囲っていた炎はオレの発動した炎と共に消えた。
「ふー。あーぶなかったー」
発動するのが何秒か遅かったら恐らくオレの体は全身火傷だらけのボロボロになっていただろう。
オレが魔王ルナーアの方を向くと、彼女は真顔でしかしどこか怒気がこもっているようにも思えた。
あれ、もしかしたら今気付いた?
「……お主、何故本気をださぬ」
やっぱりなー。
「今更気付いたのか?随分と遅かったな」
「わらわはある程度の実力を出していたからの」
「でも、逆にお前も本気は出してないって事だろう?」
「……質問に答えよ」
「単純に実力を測ろうと考えただけだ。魔王の実力がいかなるモノか気になったからな。まあ、結果的にかなり強いって事が分かったけど」
実際、これが本音である。流石は魔王と言いたくなるほどに強い。戦っていて、それを実感させられた。
魔王ルナーアはなるほどと頷く。
「………ならば、ここからは本気を出せ。わらわも全力で行こう」
「おう、いいぜ」
そう言うと、オレは双剣を握り直す。
堅く、そして強く握り締めると魔王ルナーアも同じように漆黒の剣を構えた。
沈黙の時がしばらく流れた直後、一瞬にして十の飛ぶ斬撃をオレに向かい放つ。それを二つの剣に炎を纏わせそれらを切り刻む。
それが終わると共に次に双剣を彼女に向かい横に回転させながら二つ同時に投げた。
激しく回転し炎の円を描きながら飛んでいき、魔王ルナーアに直撃しようとする。それを難なく斬る。が、これはあくまでもそちらに気をひかせるだけのもの。加速魔法を使い、速度を加速させオレは彼女の目の前に姿を現す。
驚く仕草を見せるが、魔王ルナーアすぐに攻撃に移る。手にあるその剣をオレに向かって上から振るってくる。それに対して硬化魔法の一つ『
魔王ルナーアの口が開き、驚きを口にしようとするが、その前にオレは攻撃を仕掛ける。腹部に拳を当て魔法を発動する。
『
オレの拳の威力と、
「くはっ…!」
吐血すると、オレは力任せに殴り飛ばす。後ろの壁を破壊しその後も勢い良く飛んでいく。壁に空いた穴にまで歩いて近付き、その直後に彼女は背中から大きな羽をあらわにし、その翼で急ブレーキをかけた。
オレはそこから跳躍して飛ぶと風魔法を発動し、風を足に纏い浮遊した。
「おいおい、大丈夫か?まさかこれが致命傷だとかやめろよ?」
挑発じみた口調でそう言うと、魔王ルナーアの額から血管が浮き出る。どうやら憤慨してしまったようだ。彼女はバサバサと翼を羽ばたかせ、城の頂点の遥か上へと飛んでいく。それに合わせてオレが上に飛び城のてっぺんの尖った所に足を下ろした。オレのことを見ながら怒りを込めて言う。
「わらわは魔王ルナーア!お主のような小童にやられる程落ちぶれてなどないわ!」
そう言うと彼女はその暗黒の剣、魔王剣フリードルメアを空に掲げる。すると、それは徐々に渦を描いていき、剣の形が歪んでいく。
なんだ?何が起こってる?
そう考えていると、まるでそれを読み取ったかのように彼女は言った。
「この剣は魔法を形付けて作られたもの。それ故形を崩せば、最強の魔法と化す!」
その渦は巨大な漆黒の闇の玉を創り出す。
『
彼女の最大にして、最強の魔法が完成する。
「わらわの力!とくと思い知れ!」
そう言うと、手をオレに向かって下ろした。その漆黒なる魔法はグォンと唸りながら、オレに向かってくる。まるで、それはブラックホールのようだった。
オレはさっき魔王ルナーアが言っていた言葉、小童に、という言葉が心に残っていた。
確かにオレは子供だ、でもな。
「前世じゃオレはとっくに大人だ」
聞こえるか聞こえないかのような声でそういうと、オレは右腕の肘を折り曲げて腰当たりにまで下げ手を開く。
手から魔方陣が展開しそこに魔力を一点集中で集めていく。火花の如く赤い光玉が魔方陣から溢れると、同時に赤き炎が唸る。
それから徐々に魔方陣はゆっくりと回転しながら、大きくなっていく。そして、時が満ちた。
その頃にはもう、オレのほぼ目の前には闇があった。
だが、近いだけありがたい!
『
紅の煉獄獅子が魔方陣から現れる。咆哮を響かせるとその漆黒に向かい駆け出す、そして激突する。
青いスパークが迸りながら空気を揺らす、互いの魔法がぶつかり合う。しかし、程なくして事は動く。獅子はまるでそれを喰らうかの如く漆黒を赤く染めていく。そして、全ての漆黒が赤く染まり、後に爆発した。
「なんじゃと!?」
魔王ルナーアは驚嘆する。
燃えるその獅子は威力緩めず魔王ルナーアの元へと走り出す。魔王ルナーアはそれを防ごうと魔法を展開するが、それも遅し。煉獄が彼女を呑み込む。
暗き夜がまるで昼になったかのような光を発しながら大爆発を起こす。
後に炎が治まり始める。しかし、魔王ルナーアは健在する。
燃え盛る炎に耐えながら必死に声を出す。
「おぉぉのぉぉぉれぇぇぇ!!」
「どこに向かって言ってんだよ」
「!?」
しかし、そんな彼女の後ろにオレは移動する。
彼女が咄嗟に振り向いたとき頭をガシリと掴み、そして回転し勢いつけて城に向かってぶん投げる。
猛烈な勢いで城に突撃、白い煙を上げながら破壊音が鳴り響く。
オレがすぐに出来た穴にまで向かい、そこから除くと、彼女の炎は城に当たった威力で炎が消えており、またゆっくりと落下していた。
オレは彼女に向かって勢い良く落下する。それに気付き魔王ルナーアはオレに向かって紫電を発する。パリィと音を出しながらオレに向かってくるが、それをオレは炎で防ぐ。そして、炎を出したままその炎を一直線上に炎を絞る。それによって勢いは更に強くなる。
ジェット機のジェットのように燃える炎を手に纏うと、その勢いで落下速度が加速する。そして、あっという間に彼女が眼前に見えた。
そして。
「終わりだ」
燃える拳を彼女の心臓に突きつけ、炎の火力を増させた。そして、城の一階まで勢い良く落ち、彼女を地面に打ち付ける。
炎は紅に唸りを上げていた。
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