第20話 次席の実力

翌日から、早速授業が始まった。

あの脳筋で戦闘狂なヤンキー資質のアイツが授業など出来るのだろうかと考えていたのだが、思いの外、授業が上手い。


言葉遣いは荒くとも、基本的な魔法術式からその応用までしっかりと一から説明し、またその場で実戦したり見せたりもして実に分かりやすい授業だった。そこに関してはメレナを少し侮っていた。


そして次の授業はいよいよ実技授業、というわけで外の校庭に訪れていた。服装は制服である。理由はこの間言ったとおり、動きやすく出来ているからである。また、付与魔法が着いており汚れが出来ないようになっていた。


すると、メレナがツカツカとやってきて皆を整列させた。


「うし、そんじゃ実技授業を始めんぞ。今日は始めっつー事で、ペアを作りそれぞれ対戦形式でやる。と、いうわけでまずはペアをつくってくれ」


はい出た!オレが圧倒的不利なやつ来た!

今日初日で、未だに友達が出来ていないオレにペア作れるわけがねえだろうが!

そんな風に思っていたのだが。


「私と組みなさい。アークヴァンロード」


案外すぐに見つかった。

オレが後ろを向くと、そこには鞘を腰につけて腕を組みながら佇むエヴァナスタがいた。

おおぅ……神よ……


「……どうしたのあなた……」

「いや、声を掛けてくれたのが嬉しかったから……」


友達いないぼっちってこんな気持ちなんだなって良く分かった。まあ、意図的なぼっちもいるかもしれないけれど。


「ふんっ、勘違いしないでくれるかしら。貴方よりも強いということを証明する良い機会だから仕方なく組んでやってるって言ってるの。本当なら貴方みたいなクズ、組みたくないんだから」

「いや、もうクズじゃねえから。まあいいや。理由はともかく組んでくれるなら助かる」

「気にしなくてもいいわよ」


だって、と言って彼女は続ける。


「貴方はこの後私にやられて絶望するんだから」


そう言って不敵に笑った。

こりゃまた大層な自信だ。だがしかし、次席という事実があるのだから実力があることに代わりはない。


入学試験の時に見た動きも良く出来た動きだった。実際に戦うのは初めてだから実力がどんなモノなのかは知らないけれど。


「それじゃあ、一組だけ皆の前で戦って欲しいんだけど、誰かやりてー奴いるか?」


すると、一人が名乗り上げる。

それは誰だか、言わずもがな。


「おお、エヴァナスタ・エピソード。誰と組んでんだ?」

「アークヴァンロードです」


すると、オレの方をメレナが向く。そして、ニコッと爽やかに笑った。

あぁ?


「よし。二人とも前に出ろ」


エヴァナスタは自信満々と言わんばかりに前へと出てくる。オレも仕方なしに前へと出た。


「うおっ、首席と次席の一戦か」

「そう言えば昨日、エヴァナスタ様、宣戦布告したらしいよ」

「私も聞いた!首を洗って待っていなさいって。カッコいいわ!」

「頑張れー!エヴァナスタ様!」


エヴァナスタの人気が絶頂である。

オレを応援する奴なんていないだろうな。

すると、メレナがオレの元へやってきて肩に手を置いた。


「負けんなよ」

「…当たり前だ」


メレナは肩から手を離すと一定距離に離れそして言った。


「魔法も使って良し、剣も使って良し。ただし相手に致命傷、または殺す様な魔法は使うなよ。そんじゃ、始め!」


オレは収納魔法で剣を取り出す。と、同時にエヴァナスタは走り始める。猛烈な勢いでオレの目の前にまで走り、次に剣を振るった。それを自身の剣で受け止めた。そして、次々と剣の連撃が繰り出されるがオレはそれを受け流していく。

うおっ、結構速いな。


何秒間か剣を振るい続けていたがダメだと分かったのか、舌打ちをして距離を取った。

すると、今度は詠唱を始める。小声でまた早口だったからか全然言葉は聞こえなかった。しかし、すぐに魔法が発動される。


『炎魔法 炎剣フレアソード


否、魔法を。剣が紅の炎を纏い、赤き剣と化す。その剣を遠くから振るえばそこから、燃える斬撃が飛んでくる。それも無数に。


幾多の飛ぶ斬撃は異常な速度でこちらに飛んでくる。うおっ!

剣を振るってそれらを切り裂いて行くが、数が間に合わずそして遂に攻撃を食らってしまう。

しかし、止まることがない斬撃が次々と襲いかかる。視界が赤く包まれていく。


一方、エヴァナスタは。


「さあ、さあ、どうしたのかしら!首席さん!」


調子に乗っていた。

あの野郎……

すると、彼女は空へと高く跳躍する。


「食らいなさい!」


そう言うと彼女は燃える剣を上に上げる。そして、剣先から炎の火球が作り上げられ始める。それが大きくなるとオレに向けて放ってきた。火球はそのままオレの元へ。すると爆ぜ、大きな炎がオレを襲った。


炎魔法、『火球フレアボール』。これは火炎フレアと同じ初級レベルの魔法だ。しかし、それでここまでの威力を出せるのだから、流石は次席、大したものだ。彼女はそのまま地面に着地する。


「あら?アークヴァンロード?この私に為す術もないかしら?貴方の実力はそんなものなの?」











あ?









刹那、オレは炎を一瞬にして凍らせた。先程の炎が大きいだけあって氷も大きくなってしまった。

そして、オレは氷を蹴るとそれが砕け散った。氷の欠片が空中を舞っており、オレが息を吐くと白い吐息が吐かれた。

オレの目には口を大きく開けて驚くエヴァナスタの姿がある。


「エヴァナスタ。お前、なめてるみたいだな」


一息置いてオレは言う。

息を吐くとまたも白い吐息が口から吐き出た。


「首席の実力見せてやるよ。お前との差を見せつけてやる」

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