第7話 例え偽の兄だとしても
時は少し遡る。
オレは家を出た後、早速街の中の捜索を始めた。
雨の中なので外に人は余りいなく探すことは簡易だった。
しかし何処を探してもどうしてもキャサルナが見つからない。
最も近い場所が街だからと探してみたが、もしかしたら違う方向に行ったのか?
あっ。そう言えば本で見つけたある魔法があったな。
オレは目を閉じ、魔力をコントロールする。すると、徐々に自分の感覚が広がっていく。
すると、目を閉じているにも関わらず気配が見えた。
この魔法は『探知魔法』である。
魔力をうまくコントロールし感覚を研ぎ澄ます事で見えないモノを見つけたりすることの出来る魔法だ。
と、探しているとキャサルナの魔力に近いモノを感じた。近くの建物からだ。
そこにはその魔力以外に他の反応もある。
……………手は出してねえよな。
「ちっ!」
オレは反応する場所へと急いだ。
※ ※ ※
そして、時は今に至った。
良かった。何とか間に合ったみたいだ。
「大丈夫か?キャサルナ……ってそんなわけないよな」
オレは目の前のゴミ共を睨む。
「んだコイツ?……よく見ると顔が似てるな、兄妹か。お前もいい顔してんじゃねえか。きょうはいい日だ──────」
「黙れ」
オレはありったけの殺気を放った。
大事な妹をオレは傷つけられたのだ。キレない訳がない。
彼女に酷い仕打ちをした後が、傷として彼女に残っている。挙げ句の果てには吐血までしている。
ここまでされてはもう激怒せざるを得ない。
オレの殺気はこの空気を揺らしゴミ共を恐怖させる。
「………な、なんだ?この殺気……本当に子供かよ……」
「ああオレは九歳だ」
「……子供に何が出来る!やれおまえら!」
ボスらしき奴がそう言うと周りの奴らがオレに襲いかかる。
「子供相手に大人げねえな」
「お兄様!」
「大丈夫、心配すんな」
キャサルナにそう言うとオレは襲いかかってくる奴らに対して構える。早速、剣が上から襲いかかる。それを避けるとその男の腹に蹴りを入れる。
「ぐはっ!」
そのまま地面に倒れる。
すると、今度は力任せに横から剣が襲い掛かるが、それを跳躍で避けると今度はそこから更に剣が襲う。それを空中で回転しながら剣を蹴り砕く。
そして着地するとそれぞれの奴らに腹パンを炸裂。
ゴミ共はあっけなく地面に倒れた。
しかし、まだ奴らは死ぬほどいた。流石は量産型のモブ共だな。
流石にこの数を素手で相手するのは骨が折れるのでオレは魔法を発動する。
『聖なる光よ 今罪人に断罪の剣を捧げ 魂の制裁を
すると彼らの周りに魔方陣が現れ彼らを断罪の剣が貫いた。
よし、これで後はボスだけだな。
「お、お前………」
「ああ、安心しろ。急所は外すようにしたから生きてるぞ」
「………」
「でも、今からのお前の行動次第じゃお前も含め全員ぶっ殺すぞ」
「……何がしたい」
「一つ質問な。お前はこんな小さい奴を傷つけて何か思ったことはあったか?」
「あ?あるわけないだろ」
「…………そうか」
そんな奴は生きる価値はないな。
こういう奴は粛正しても何も変わらないタイプだ。
何かを訴えたとしてもコイツの何かが変わることは絶対と言っていいほどにない。
しかし、少しぐらい言いたいことは言わせて貰おう。
「お前らはオレの大事な妹を傷つけた挙げ句、人身売買しようとまでしやがった。ここまでされてその兄がお前らが憎くて憎くてしょうがねえ事くらい分かるよな」
オレは掌を広げ魔方陣を描く。
「まっ、待て、何をす、する気だ。分かった、分かったから、俺が悪かった。そいつも返すし金もやろう。だからな?」
「うるせえよ」
金なんていらねえよ。
「そりゃあ妹は返して貰う。だかオレはこの彼女についた傷の分も返して欲しいからな」
魔方陣からオレは烈火の炎を出した。その炎を手に纏わせると感情任せに、そして自分の全力を賭して魔法をこの場で発動させる。
「キャサルナの傷の代償は大きいぞ!!」
オレの怒りと憎しみに染まったその断罪の炎拳は建物を丸ごと呑み込む。
まるで爆発するかのように建物は破壊されそして燃えた。
※ ※ ※
オレはキャサルナをお姫様抱っこしながら空へと飛んだ。
危なかったーー!
あれ下手すりゃオレも燃えてたわ!
間に合って良かったぁーー!
オレは建物をピョンピョンと身軽に飛びながら建物から離れていった。
後で絶対父さんに怒られるだろうなぁ。
オレは雨に濡れながら家を飛び移っているとすぐ近くから喋り掛けてきた。
「あの、お兄様……」
「ん?どうした?」
「……どうして、その、助けに来てくれたのですか………?」
……………はい?
…………うん、ちょっとこれは、叱るべきだな。
オレは一度建物の上で止まると彼女をじっと見つめる。
そして、彼女のおでこにデコピンした。
「痛いです……」
「キャサルナ、お前は馬鹿か?」
「えっ?」
「オレはお前の兄だぞ?助けないわけないだろう」
それが兄としての義務みたいなもんだ。
「オレは確かに本当のアークじゃない。だけどな」
例え偽の兄だとしても。
「お前の兄でいたいという気持ちがある」
「!!」
オレは前世でも妹がいた。どうしてもオレはそんな妹をキャサルナを見ていると思い出してしまうのだ。
もう、オレはアイツを守ることが出来ない。だから、せめて今ここにいる新たな妹を守らせて欲しい。
「……まあ、無理にとは言わないからさ。仲良くしてくれよ」
「………」
さっきから何故ずっと黙っているのだろう。心なしか少し顔が赤いような……まさか、風邪をひいたのか!
急いで帰らねば!
オレは急いで家に戻った。
父さんは泣いて喜んでくれたが案の定、オレは怒られてしまった。
※ ※ ※
翌日、オレはローナ達に起こされ早速朝ご飯を食べに部屋を移動した。
部屋のドアを開けると、そこには珍しくオレより早くキャサルナがいた。
昨日は、あの後彼女は部屋にずっといてオレはずっと怒られていた。建物は雨のおかげで火がほかの建物に移ることもなく、後でオレが水魔法で消した。
結構な炎も上げていたしちゃんと消せるかどうか少し不安だったのだが、それはどうやら杞憂だったようで簡単に消すことができた。
まあ、そんなわけでキャサルナと合うのは半時間ぶりだ。
オレに気がつくと彼女はイスから降りた。と、思えば次の瞬間オレに飛び込む様にして抱きついてきた。
「うおっ!」
「おはようございます!お兄様!」
「…お、おう、おはよう……」
………一体何が起こったというのだろう。たった一日でここまで懐いてしまうのか?
何故にここまで?
「ははっ。すっかり懐いたようだな」
「あらあら~」
両親の二人は微笑ましそうに見ている。
………まあ、第一段階は突破したのか。
何故か考えることはせず、オレは朝ご飯を食べたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます