第3話 覚醒アーク

「凄いな………」

「綺麗だろう」

「はい…」


教会の中は綺麗でカラフルな色のステンドグラスに覆われておりそこから指す光がオレ達を照らしている。

オレはフェイト……オレもアークだ。これからは父上と呼ぼう。


オレは父上と共に教会に訪れていた。

勿論のこと、ここに来るためには歩く必要があったわけだが、その際父上はフードを被れと必要以上に言ってきた。顔丸出しで歩いて反応を見たかったという本音があるのだが、そこまで言われるとしたくても断念せざるを得なかった。

一体、何処までオレの評判は悪いんだ?


「……ようこそおいで下さいました」


そんな中、奥から現れたのは僧侶のような格好をしているえらく老いている人だった。

その顔からは感情を読み取ることも難しい。それに何かしらのオーラも感じるので只者ではないだろう。


「私はクスマと申します。本日は何用で?」

「私の息子の魔法属性と魔力を調べて欲しく今日ここに来た。よろしく頼む」

「ふむ。して、汝の名は?」

「アークヴァンロード・ジュリネオンです」


オレが答えるとクスマは言う。


「ふむ、噂のクズ王子様ですか」

「ええ、そうですね。この街では、というか周りではそう呼ばれています」

「しかし、私からしてみればそれ程のような残酷性をあまり感じませんな。まあ、わたしは別にどちらでもかまいませぬ」


そう言うとオレを奥へと手招いた。

奥に行くとクスマがオレの方へと体を向け、そして懐から本を取りだした。

本を広げるとオレに手をかざす。すると、赤い魔方陣が開かれ、オレの体をそれが上から飲み飲んでいった。


痛みは全くなくむしろ気持ちが良い。

魔方陣が消えると今度は青い魔方陣が開かれ、オレの上にかざされた。

そして、そのまま数分ほど経った。

すると、クスマは驚くように目を開ける。


「なっ、な………?」


クスマはそのまま動かない。

一体何があったんだ?


「………アークヴァンロードは神の使いであられるようだ」

「えっ?」

「今から言うことは他でもなく事実。まずは父上をお呼びしなさい」

「は、はい」


オレは父上を向こうから呼び、こちらに招く。

一体これから何を告げられるのだろうか。

オレも父上も心の準備は整っていた。


「クスマよ、一体どんな結果が出たというのだ?」

「………まずは魔力量ですが、ランクはX《エックス》すなわち測定不能です」

「な、それは少ないということか?」

「いえ、逆にございます。あまりの魔力量に私の魔力では測ることが不可能でございます」


それだけでもオレは驚きだ。

今までは魔法を使えない者だとされてきたにも関わらず、

使えるようになり挙げ句の果てには魔力量が凄いのだ。正直、オレは驚かざるを得なかった。

しかしオレはこの後、さらに驚くことになる。


「続いて、魔法に関してですが…………五大属性は勿論のこと他にたくさんの属性をお持ちになられます。また、使える魔法も百を超える数を使えるでしょう」

「なに?」

「嘘だろ……」


流石にそこまでオレも求めてねえよ。

正直オレはもう驚くことも出来なかった。


「……どうやらアーク、お前は恵まれたようだな」

「……ええ、そうみたいです」


自分でもそう思う。

転生した身とはいえここまで恵まれるとは思いもしなかった。

しかし、これはある意味良かったのである。皆の役に立つことが増えるのだ。

オレからしてみれば嬉しいことこの上なかった。


「しかし、不思議な事に魔法の適性があるにも関わらずなぜ左手の甲に紋章がないのでしょう?」

「確かに、言われてみればそうだ。何故かないな」

「紋章……ですか?」


そんなの聞いたことないぞ?


「そう言えばお前には言ったことがなかったな。実は魔法を使える者……というか人々には紋章という魔法が使える証拠が入っているはずなのだよ。しかし、お前には入っていないからな。まあ、それだけお前が異例なものなのだろう」


うーん。そんなのものなのだろうか。

オレはそれを聞いて頭を悩ませた。なぜ故に紋章がないにも関わらず魔法が使えるのだろうか。やはりそこは転生が関係していると考える事が無難なのかもしれない。

兎にも角にも今は魔法が使えることだけ感謝だな。


オレ達がクスマに礼をし帰ろうとした。

すると、オレはクスマに呼び止められた。


「待ちなさい、アークヴァンロード」

「はい……?どうしました?」

「………汝は神の使いであるかもしれませぬ。しっかりと励むようにしなさい」


その言葉は何処か説得力がある言葉であった。

オレは自然と頷いていたのだった。



     ※     ※     ※



オレと父上は城に戻った。

そこで唐突に言われた。


「訓練をしないか?」

「…………はい?」

「お前もいつか学園に入学する身になったのだ体術から魔法まで鍛えておいて損はないだろう?」

「まあ………そうですね」


父上曰く、今までは魔法が全く使えず仕舞いには運動神経も悪かったため学園の入学は諦めていたらしい。

ローナ…運動神経悪いって教えてよ……

しかし、魔法が使えるようになった場合は話が違うらしく、鍛えておこうというわけだ。運動神経は悪くともね。

まあ、自分としても言い分は分かるので結局頷いたのだった。


そんなわけでやってきたのは家の中にある庭である。父上曰く、ここは訓練に打って付けなんだとか。

やってくると早速渡されたのは木刀だ。


「それじゃあ早速始めるぞ」


一定の距離を取った父上は木刀を握りそう言う。

オレは頷いた後に構える。


すると、父上はかなりのスピードで走ってきた。

速い…………あれ?そうでもなくね?

すると父上は剣を振るう。


「はっ!」


オレはそれを普通に避ける。

あらよっと。

そしてそのまま今度は背中に木刀をポンと当てた。


「っ!」

「あれ……これで終わりですか?」


あまりにも弱すぎやしないか?

これじゃあ父上の威厳が危なくないか?

すると、父上は驚く表情を薄くしどこか覇気を纏うような姿になった。


「……………アーク」

「は、はいっ」

「…………本気で行くぞ」

「は、はいっ?」


刹那、風の鋭い音がなり父上の姿が消えた。

すると、すぐに後ろに気配を感じオレは軽く跳躍した。

軽くである。

すると、オレはいつの間にか上空に、それもオレは頭を地面に向けている。


「うわっ!」


自分の跳躍力にも驚いたのだが何より驚いたのは父の振るった剣である。

振った場所は見事に地面ごと削られている。

ちょっとお父様!?本気すぎやしませんかね!?

オレが空中でうまく体をよじり地面に着地すると父上はえらく驚いているようだった。


「………私の渾身の一撃を簡単に避けるとは。お前、いつからそんなに動けるようになった?」


こっちが聞きたい。


「それにあの跳躍力はなんだ?私でもあそこまで跳べる自身がないぞ?」

「……自分でも良く分かりません。いつの間にか、ですから」


軽く跳んだ、ということは墓まで持って行こうとオレは決めた。

オレも正直驚いている。先程跳躍した時なんて四階建てマンション位跳んでいた。転生に最強は付き物だが、ここまでとは思いもしなかった。

オレ、アークは覚醒アークと言っても良いのではないかと思うオレ、覚醒アークだった。

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