第2話 魔法、使えるやんけ……
「見れば見るほどイケメンだよな……」
鏡を見ながらオレはそう言った。
そう、このアークヴァンロードは本当にイケメンだった。
整った顔立ちは父親譲りの物があり、髪は赤髪と黒髪が比例するように混ざっている。髪型は短髪で前髪が半分程まで掛かっていて、本当にイケメンだった。
「性格さえ良ければな」
きっとさぞ愛されただろうに。しかし、そんなもう存在しない仮定をしても意味はないか。
さて、ここからどうするかとオレは考える。
実は内心少しがっかりしたことがある。
それは他でもなく魔法を使えないということ。
オレはよくライトノベルで異世界転生系の本を読んでいた。
だからこそ魔法には強い憧れがあった。
しかしオレ、アークは魔法が発源しなかったのだ。
クソゥ、オレも使いたい…
「で、でも、もしかしたら使えるかもしれないよな!うん、そうだ!」
オレは事実を認めるつもりがなかった。
ローナから聞いていた魔法について書かれた地下の図書館にオレは行くことにした。
※ ※ ※
階段を下りてオレは地下の図書館に足を踏み入れた。
周りを見渡せば本、本、本である。
これ、さては全部魔法についてとかじゃないよな。仮にそうだったら骨が折れるというレベルじゃねえな。
オレは取りあえず魔法についての本を探すことにした。見ていたところ、むしろ魔法の本は少なかった。あるのは神話のようなモノばかりで中には論説のようなモノもあった。
1時間ほど散策し魔法について書かれた本を5巻見つけた。
身長が小さいと中々苦労する。
余談だがこの体の身長は145程度だった。
本を見てみると複雑な詠唱や魔方陣の造りなどその他諸々エトセトラ。
ちなみに魔法とは基本五大属性があるらしく、炎、水、木、光、闇の五つらしい。
本を読み進めると貴族というのは魔法がかなり高度なものまで使えると書いてあった。
やはり魔法が使えないというのは彼にとってはプライドが傷ついたのだろう。
さて、本を一通り読み終えた分けだが、結論。
やっぱり魔法使いてえ。
でもなぁ、魔法使えないんだよなあ。まじでなぁ。
「…………………………いやでも、もしかしたら使えるかもしれない。」
もはや悪足掻きに過ぎなかった。
オレはある一冊の本に載ってある炎属性魔法の基本中の基本、『
まだ詠唱は覚えられてないので本を見ながら。
『紅蓮の炎よ ここに宿れ わが心に集いし烈火の魂を 今ここに放て
手をかざしながらオレは詠唱した。
しかし、何も起きない。
「ま、出るわけないわな──」
刹那、オレの掌に魔方陣が描かれそこから炎か出た。
それも大きく。
「どわぁっ!」
必死に掌を上にして魔方陣を神速で消した。
危なかった……………………………………………
…………………………………………………………
………というかちょっと待て。
なんで魔法使えてんだ?
あれ、オレって魔法使えないんじゃなかったっけ?
あれ?
「………もう一回やってみるか」
オレは今度は抑えながらその上で、手を上にかざし手に力を込める。
そして、詠唱しようとすると。
ボォォ!
「いやなんでっ!」
何も言ってないのに炎が出てきたしかもその上に抑えたのに炎の威力変わんねえじゃん!
何がどうなってんだよ!
オレは謎のこの事態に頭が追いつかなかった。
※ ※ ※
オレはあの後、何度も図書館で練習をした。
結果的に魔法の威力のコントロールはお手のものになった。
さて、これで準備は整った。
勘違いしないで欲しいがオレはこの時間、目的なく魔法の練習をしていたわけではない。
オレが練習していた理由はただ一つ、父と母に魔法が使えると言うことを伝えるためだ。
そうすればきっと喜んでくれるだろう。
オレは早速伝えるべく階段を上がっていった。
「お父様、お母様っと…………あ、いた」
オレは建物内を探し回り両親を探し、そして遂に父のフェイトを発見した。
確かローナ曰く父上って呼べばいいんだっけか。オレは叫んだ。
「父上!」
「ん?あ、アーク!」
フェイトは驚きを隠せないようだった。
「父上、少しお時間を頂けますか?」
「なっ、まさか、お前……」
「はい、そのまさかです……」
どうやらフェイトは察してくれたらしい。話が早くて助かる。
オレはフェイトと共に夫婦部屋を訪れた。
ここは寝室とは違い色んな作業をする場所のようだった。
部屋には母のルマもいた。
タイミングばっちしだな。
「実は父上と母上にお伝えしたい事が」
「っ!」
ルマは驚いて口に手を抑えた。
「そんなまさか…」
「はい、そのまさかです…」
すると、フェイトは口を開く。
「そうか、遂にか、やってしまったのだな」
「ええ、遂に………は?」
「ん?だから遂に奴隷に性欲をぶつけたのだろう?」
「…え?」
「違うのか?」
オレはこの瞬間黙ってしまった。
あまりにも刺激の強い一言だった。
九歳児になんて事をとも思った。
というか九歳であの行為わかんの?
それ以前に出来るの?
兎にも角にも、今はこうやって心で叫ばせてくれ。
そこまで元気に育ってねええよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
「そんなわけないじゃないですか」
「何だと?」
「ならば何をしたの?」
「そんな何かやらかした前提で話を進めないで下さい」
むしろお二人に取ってはかなり良い話になるから。
「実は、魔法が使えるようになったんです」
オレは意を決して言った。
目を瞑りながら。
オレはギュッと目を瞑っていたが全く声の反応がないのでオレはゆっくりと目を開けた。
すると、二人はそれはもうショックだと言わんばかりに落胆していた。
ええええ?なんで?
「アークお前……」
「遂に幻覚まで見えてしまうようになったのね………」
オレのせいで親まで可笑しくなってしまっていた。まあ、オレっていうか昔のアークだけども。
「いや、本当なんですよ、ほら」
オレは人差し指を立ててそこからバーナーのように火を出した。
どうだ、オレの努力の成果だ。
フェイトとルマを見てみるとかなりガチで驚いていた。
まあ、それも無理はない。
本来は七歳の内に魔法が使えるようになるのだ。
九歳はかなり例外だろう。
「自分でも最初は驚きました。魔法が使えるとは思いませんでしたし」
「……今日は沢山驚かされるな。アークの人が変わったり魔法が使えたり」
「……でも、良かったですね。何かと私も安心しました」
「ああ、そうだな」
どうやら、何かとオレのことは気に掛けてくれていたらしい。いい親父だなフェイト…。
「明日、教会に行こう。そこで属性と魔力を調べよう」
「はい、分かりました」
オレは部屋を後にした。
しかし、魔法が使えるとなるとこの異世界生活の楽しみが増えるし、それ以前にクズの名を引き剝がす事がかなりやりやすくなるだろう。
オレは内心かなりワクワクしていた。
と、向こうから小さい何かが歩いてくるのが見えた。
それは少し歩き近付くことで分かった。
キャサルナだ。
ポフポフという音が似合いそうな足踏みでこちらに近付いてくるとオレを見つけたのか肩がビクッとなった。
「……よう、キャサルナ」
「あ、あのその、……っ」
そのまま彼女は逃げてしまった。
先程は挨拶を出来ていたがどうやらそれは親がいるという安心感があったかららしい。
一人では挨拶をしてくれなかった。
仲良くなるには少し道が長そうだ。
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