転生したらクズ認定された公爵家長男だった件
宇治宮抹茶
第一章
第1話 プロローグ
今日からオレは高校生になる。
高校生活はオレの憧れであった。
そんな憧れの生活が遂に始まる………はずだった。
信号を待っていたとき、男が突如ぶつかってきた。
刹那、腰に謎の違和感をかんじた。その違和感は痛みだ。
その痛みは徐々に徐々にと広がる。
オレは腰に目を向けると、そこにはナイフがさされてあった。
腰が熱い、痛い、熱い、痛い。
すると、力が抜けていく。
腰を落としバタッと倒れてしまった。
腰の痛みはいつの間にかなくなり体が冷たくなっていく。
高校生活、憧れの生活が待ってると思ってたんだけどな………
オレの意識はぷつりときれてしまった。
※ ※ ※
………ん?
……………何処だここは?
オレが目を開けたとき見えたのは見慣れない風景だ。
周りが囲んであって全く何もわからない。
周りがカーテンに囲まれている。天蓋付きのベッドだろうか。
マジでここはいずこですか?
えーと……オレは通り魔に殺されて………目が覚めたら謎の場所にいると………いや意味分かんねえ。
ここ、さては病院か?とも思ったがそんな医薬品のような匂いも全くしない。
一体どうしたものだ?
しかし、ここでふと気がつく。
体がやけに小さい気がするのだ。
手を見てみると、あら可愛いお手々。
髪もさらっさら。
これはもしかして………
と、ドアの開閉音が聞こえた。
左に首を傾けるとうっすらと透明なカーテンからメイド服を来た若い女の人がいた。
え、めっちゃめちゃ可愛いじゃん。
え、じゃあここ新手のメイドカフェ?
いや、可笑しいでしょ。なんで腰に刺されて行く場所メイドなんだよ。
もしかしてメイドという名の冥土?
いやつまんなっ!
「アークヴァンロード様、朝ですよ」
アークヴァン…なんだ?オレの名前だろうか。
随分と変わった名前だ。
てことは起きなければならないのだろうか。
「ほら、早く起きて下さい」
考える時間もなくオレはとりあえず返事をして起きることにした。
「はーい」
「!?」
オレがカーテンを開けて出てくると何故かメイドさんは驚いた様子。
なんでや?
ひとまずオレは朝の挨拶をする。
「おはようございます」
「!!??」
更に驚いた様子。
だからなんでやねん。
「あ、アークヴァンロード様が………朝の挨拶を…………した……………?」
「あ、あの?」
「あ、は、はいなんでしゅか!?」
少し落ち着けよ。
「アークヴァン……ロード?とは自分の名前であってますか?」
「え、あ、はい、そうですよ?当たり前です。あなたの名前は公爵家、ジュリネオン家の長男、アークヴァンロード・ジュリネオン様です。皆アーク様と呼んでいますが」
なるほどね。
オレは多分わかったよ。
もしかしなくてもこれはあれだ。
今話題の異世界転生ってやつですね。
ん、今どんな気持ちかって?
………………………………なんでだよぉぉおぉぉおぉぉぉぉお!!!!!!!
………………………………見たいな感じです。はい。
「えと、自分は何歳ですか?」
「え、もう九歳ですよ」
ほら、異世界転生確定だよ。
「ちなみに、あの、お、お姉さんのお名前はなんですか?」
「え?あ、はい、私はローナですよ……ってなんでですか?もしかして、少し寝ぼけてます?」
「え、あ、はい少し」
「というかいつもは敬語じゃないですよね?」
「え?あ、は、はい……じゃなくてう、うんそうだな」
「あと……今日は………ないんですね」
「ん?な、なんの話?」
「………いえ、なんでも……」
なんだろう、朝の体操でもしてるのだろうか。
まずは足のうんどー的な。
「それじゃあご飯の用意が出来たので行きますか?と言っても無駄だと思いますが………」
「え、あ、うん、じゃあ行こうか」
「え!?」
もう、何がなんなんだよ。
とりあえずオレは部屋を出た。
部屋の外はかなり広い、廊下でさえ10メートルは軽々ありそう。
そういえばさっき公爵家とか言ってたな。
オレがローナだっけか?、ローナと廊下を歩いていき、着いた場所は大きな部屋。そこには大きなテーブルがあり食事がならんでる。
うわっ豪華。
そして一番向こうには大人の男女が二人、恐らく先程言っていた両親なのだろう。
男の方は黒髪短髪のかなりのイケメンで女の方は赤髪ロングの超美人だ。
というか、やはりこの二人もかなり驚いた様子だった。
このアークヴァンロードって昔どんな人だったんだ?
「ほら、お二人にご挨拶して下さい」
「?あ、ああ。おはようございます」
「「!?」」
この両親の二人も大分驚いていた。
もう、反応になれたわ。
「あの………アークが…………」
「一体何が………起こったというの………?」
「ローナ、朝もこんな感じだったのか?」
「はい、朝の誹謗中傷の言葉も全くありませんでした。」
どうやら先程のいつものとは誹謗中傷することだったらしい。
コイツは今までどんな人生送ってんだよ。
正直、九歳児が粋がるなとしか思わない。
今度はまたドアが開いた。
そこから現れたのは赤髪の女の子。
身長は130に行くかどうかと言ったところで少し小さめの印象深いがあった。
「っ!!………お、お兄様……」
どうやら妹らしい。
しかし、妹まで怯えているとなるとオレはもはやクズとしか言いようがなくないか?
「お、おはようございます……」
「ん、おはよう」
すると、またまた驚いた様子。
いや、もうこの下りいらなくね?
オレ達はイスに座り食事を始めた。
話を聞くに父親の名をフェイト、母親の名をルマ、妹をキャサルナと言うらしい。アークヴァンロードのように長ったらしくもないようだ。
というか、食べていて思ったのだがこの食事が旨すぎる。
旨いのだ。旨い旨い旨い旨い旨い旨い旨い旨い旨い!
と、ガツガツ食べていて流れと勢いで言ってしまった。
「おかわり!」
言った後、はっ!と我に返り周りを見渡すと皆がオレに目線を向けている。
公爵家がここまで行儀悪くてはダメなのかもしれない。
しかし、そんなことはオレの思い違いであった。
「あ、アークが……残すどころかおかわりだと?」
「たった一睡するだけでこんなに人が変わるモノなの?」
「ま、まあともかくローナ、用意してやってくれ」
「は、はい」
またこんな感じかよ。
一体今日はこの下りをどれだけやることになるのだろうか。
※ ※ ※
食事を終えた後、オレは自分の、このアークヴァンロードについて、改めて調べることにした。
そのためにまず呼んだのがメイドのローナだ。
オレの部屋に呼び出した後、色々と建前を建ててオレは彼女から話を聞いた。
まず、生まれたての天才だったらしい。
三歳で読み書きを全て覚え五歳になった頃にはこの世の秩序を知ったとか。
凄いね。
しかし、彼には一つ欠点があった。
それは性格が悪いこと。
ようは粋がっていたと言うわけだ。
たまに外に出たときは威張るようにしたり、この屋敷では亭主関白の如くメイドやらなんやらに誹謗中傷といった暴言を吐いていたらしい。
ローナもその被害者の一人だ。
そんなオレは徐々に街の皆にも色々言われ始めたらしい。
そんな中、七歳になった頃だ。
七歳は魔法が発源する年らしく七歳の何処かで魔法が使えるようになるらしい。
しかし、彼には魔法が目覚めることがなかったらしい。
それを聞いて街の皆は笑ったという。
自業自得でもあるが、彼はそれが原因で更に性格が捻くれた。
街の奴隷を女子全員を買って家に持ち帰り、地下牢に閉じ込めたという。
そこでストレス発散に彼女らを痛めつけたという。更には街に行っては暴言を吐きまくり、また色んな建物を噂を流すや色々して潰したりもしたらしい。
八歳児がやるような偉業ではない。
しかし、結果的に街の皆にはクズと認定された。しかし、顔だけは王子のようなイケメンだったので「クズ王子」と呼ばれるようになったらしい。
父親や母親にさえも暴言を吐き妹には手を出すようになったという。
食事も手につけずもう、両親は諦めつつあったらしい。
「と、こんな感じです」
ローナからの話を聞き、一つ分かったのはマジのクズだと言うことだ。
ここまでやるのをまだ年二桁にも行かないような子供がやったというとむしろ憐れだ。
最初はこれからが大変だという思いしかなかった。しかし、話を聞いていくと徐々にオレはある方針を固めていた。
話を聞いて魔法を使えないことはよほどの辛いことだったのだろう。
魔法はこの世界では当たり前らしくそれがプライド高き貴族の、それも公爵家だ。
やはり、八つ当たりがしたくなったのだろう。
「うん、分かった。ローナ、ありがとう」
「いえ、気にしないで下さい」
「それと、」
「?」
「今までごめん」
オレはローナに頭を下げた。
「!?そ、そんな公爵家の王子が何をしているんですか。それも私のような下級の者に」
「身分なんてどうでもいい!」
オレは決死に叫んだ。
それはオレの気持ちのまんまだった。
「結局、オレがやってきた事は謝ることが当たり前なんだ!身分なんて概念はいらないんだよ!頭を下げて口にするだけで許して貰えるかはわからない。それでもせめてこれだけでもさせてくれ」
オレはローナに必死に頭を下げた。
それはもう必死に。
彼女が頭を上げろと言おうと自分の気が済むでは頭を下げた。
そして、頭を上げると改めて言った。
「今までごめんな」
「……もう、いいですよ。私はもう気にしてません。これから今のように生きてくれればいいです」
「当たり前だよ。あ、ちなみにこれからはオレのことはアークヴァンロードだと長ったらしいからアークでいいよ」
「え、いや、でも!」
「頼むよ、もっと仲良くなりたい」
「…………分かりました。アーク様」
「うん、それでいい」
人が変わりすぎですよ…とローナは言った。
だって人違いますから。
ローナがいなくなり、改めてオレの方針を固めた。
それは他でもなくクズの名を引き剝がすことだ。
オレはもうクズ王子なのだ。
だからまずはクズの名を剥がす事に努力するとしよう。
これからのオレ、アークヴァンロードは身分を気にしないお人好し貴族になるとしよう。
それがいつかきっと、オレの、そして本当のアークの何かの救いになるだろう。
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