第6話 ママがしょっちゅう傾いていた話・前半
ママの異変を感じた2006年秋から、3か月後。
2007年頭。
ママはありとあらゆる意味で目が離せなくて、私たちはしばらく生活がぐちゃぐちゃになりました。
覚えてる?
お風呂にひとりで入れないしトイレも失敗することが増えて、洋服の着方もわからなくなった大人を世話するのは、お兄ちゃんと私のふたりだけでは無理でした。ふがいなくて申し訳ないけど、毎日が手探り戦闘状態でした。
私が家事をしている間、お兄ちゃんがママを見ているとなると(逆のパターンもあり)、私たちは自由になる時間がまるっきりなかったんです。
生活に必要なものを買いに出かければ、その間、残ったひとりはママの面倒を見て、自分がトイレに行くこともできないのです。
赤ちゃんと違って、「まだ自分がしっかりしている」と思っていたママは目についたものならなんでも触れるから、余計気が抜けませんでした。
コンロの火、ハサミやカッター、危険なものは家の中に山ほどあるし。
ある日突然、黙って銀行に出かけてしまったこともありましたへ。あのときは、娘は本気で寿命が縮みましたよ。
私が料理しているとやってきて、熱いフライパンに触ろうと手を伸ばしてきたことも、まな板の上の包丁を触ろうとしたことも。
真冬の真夜中に転んで窓ガラスを割っちゃって、大騒ぎになったこともありました。
ママは「寒い」と文句を言ってましたが、こらこらこら。
ケアマネさんが家の様子を見かねて、ママがデイケアに通えるよう、緊急に手配してくれました。
週に2回、朝9時から午後3時まで。
どこに行くのかもわかっていないママの身支度を整えて、送り出して。
ママが帰ってくるまでの間、ひたすら眠りました。
ママはママでレクリエーションで切り絵や塗り絵をして、それを「おみやげ」だと言って持って帰って見せてくれたでしょ。あれが、なんだか涙がとまらなくなるくらい嬉しかった。
でも、デイケアに通えたのはたったの数回。
パパが誤嚥事故の挙句の低酸素脳症で意識不明の四肢不全状態に陥り、ママが胆のう炎を起こして緊急入院する5月、あの怒涛のような5月が迫ってきていました。
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