第7話 異世界からやってきた女騎士さんがこっちの世界の食べ物を気に入ったみたい。いったい何?
なぜか私の部屋に、異世界から女性の騎士がやって来た。
そのまま外に出られるとコスプレと思われるだけじゃなく、剣を持ってるから明らかな銃刀法違反になっちゃう。外へは出ないようにお願いして、食べ物を買いに行くことにした。
お腹が空いているようだし、出かけている間におやつでも食べていてもらおう。
今日は寒いから、カップのおしるこを出して、お湯を入れてかき混ぜる。
「これは何?」
「おしるこ。甘いし、体が温まるよ。食べ物を買ってくるから、これを食べて待ってて」
上着を着てカバンを用意していると、彼女は蓋を剥がして一口飲んでいた。
「甘い、美味しい! こんな色だけどチョコレートじゃないのね。何を使ってるの?」
「確か、豆を甘く煮た……、とかそんな感じじゃないかな?」
「豆? 豆をデザートにするなんて、不思議ね」
言われてみれば不思議だ。普通、豆を料理するならスープやおかずにするよね。日本人の発想って面白いんだな。よし、せっかくだから日本らしいものにしよう。
私が選んできたのは、スーパーで手に入る焼き鳥、たこ焼き、ポテトサラダ、天ぷら、いなりずし、菓子パン。お寿司だと生魚が食べられるか解らないし。
焼き鳥はこのたれが美味しいと喜んでいた。菓子パンも、こんなにパンの種類があるなんてと楽しそうに選んでいる。いなりずしは珍しがっていたけど、ポテトサラダは似たような物があるみたい。天ぷらも好感触。
そしてたこ焼き。ちょうど焼きたてだった。熱々の丸いそれを口にほおり込んで、熱いと少しずつ息を吐いている。
「美味しいわ、このたこ焼き! ウチの方にあるソースと味が違う、とってもおいしい! それにこの生地も、中に入った弾力のある具もいいわ。丸い形も可愛いし」
やっぱりたこ焼きは美味しいよね!
「その具、海で獲れるものなのよ。タコって言うの」
「タコ……。聞いたことがないわ。ウチの方では採れないのかしら、残念ね」
たこ焼きのタコだけ抜き取って爪楊枝に刺し、色々な角度から眺めている。
「海と言えば、一週間前に悪魔の魚と呼ばれる、グロテスクな海の生き物に似た魔物と戦ったのよ」
「悪魔の魚? 怖そうな名前ね」
どんな魚だろう。毒のある魚? 刺々した魚? ヒレが刺さるほど固いとか?
深海に住むのかな、そんなのに似た魔物と戦うなんて、大変なお仕事なのね。
「赤い生き物でね、頭が大きくて八つもの足があるの! 吸盤がついてて、闇のブレスを放つのよ。ぬるっとするし、危険で気持ち悪いわ」
「へ、へえ……、怖いですね」
「でしょう!? あんなのが出るんなら、港町なんて行くんじゃなかったわ」
それ……タコ? タコが悪魔の魚?
今、貴方が喜んで食べてますよ……?
タコの正体については、教えないことにした。せっかく美味しそうに食べてるのに、可哀そう。彼女は次の日帰って行った。
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