シチュエーション大喜利企画、第二段!
第1話 あれ、君たちさっきまで険悪じゃなかった? 犬猿の仲だった二人が意気投合した意外な理由とは。
僕は勉強が得意だ。学年ではいつも一位。だけど運動は苦手。
逆にアイツはスポーツは何でも得意だけど、勉強はできない。
音楽や美術など他の教科の成績は大差がないので、タイプは違うけれど、ついライバル視してしまう。相手もこちらを苦々しく思っているようだ。何となく気に食わない、お互いにそんな存在だった。
僕たちの中が更に険悪なものになったのは、同じ女の子に恋をしていると察してからだ。同じクラスで、美化委員の佐藤さん。笑顔が可愛くて、委員の仕事を真面目にやる女の子。
僕が落とした物を拾ってもらってから、なんとなく気になるようになった。見ている内にすごくかわいい子だなと感じ、同時に同じように見つめる視線に気づいたのだ。
アピールしたいけど、恋のアプローチってどうするんだ?
アイツは試合見に来てよ、なんて誘ったりしてる。焦りすぎてダメだ。とりあえず文房具を余分に持っておこう。彼女が忘れたら、貸すよと言えるかも知れない。
ある日。アイツに話しかけられた。
向こうもこちらの出方を気にしていて、どうせなら一緒に告白して、恨みっこなしでいこう、という提案だった。スポーツマンらしい。気がする。
しかしいい提案だ。僕一人だとどうしようもないし……
僕は受けて立つと答え、ついにその日がやって来た。
「……どうしたの、二人とも?」
目の前には佐藤さん。困惑した表情をしてる。
「佐藤さん! 好きです、付き合って下さい!」
「……ぼ、僕も……前から気になっていました」
アイツが先に告白し、僕も負けじと精いっぱい思いを告げた。そして二人とも頭を下げて、右手を彼女に向けてピンと差し出す。
なんかのテレビ番組みたいだな。
彼女はしばらく戸惑ったまま。
漫画なんかだと、勉強が得意なヤツか、運動が得意なヤツでヒロインを争奪するんじゃないの? いや、チョイ悪がいいという可能性もあったか?
どちらかが選ばれると思っていた僕は、長い沈黙にだんだん心臓が痛くなってきた。
しばらくして、突然ガバッと頭を下げる佐藤さん。
「ごめんなさい! 私、声フェチなの。二人とも歌もうまくないでしょ、だからゴメン!」
……え? 声?
「ほんと、ゴメンね」
彼女はくるりと後ろを向いて、走って行ってしまった。
ポニーテールが跳ねて、彼女の姿が見えなくなる。
僕たちは頭を上げて、顔を見合わせた。情けない表情してるなあ……
「なあ」
先に口を開いたのは相手の方だった。
「うん」
「……カラオケ、行こうぜ」
「……練習しよう。そんな大事な要素だとは思わなかった」
それから失恋の痛みを乗り越えるかのように、二人で毎日カラオケの練習をした。話してみると悪い奴じゃないし、自分に出来ない事が出来るから、嫉妬して意地を張っていただけなんだな。仲良くなり、ラインでやり取りまでするようになった。
歌が上手くなったころには、彼女は声楽部の一つ上の先輩と付き合っていた。
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