仮面舞踏会

イルミネーションデートから1週間


連絡は来ない

僕も意地を張り連絡はしない


ただ、その間も眞紀は僕のブログにイイネを付け、あろうことかコメントまで残してくれていた


そんな中、僕は1つの仮説を立てていた


眞紀=魔性の女説、である

それも天然の魔性


要因として


美人

特徴的な顔立ち

軽そうで身持ちが硬い

姿勢が良い

真摯な態度

思わせぶり

かわいい

仕事ができる

友達が多い


魔性の女説で片付けるしか無い、と思い始めていた矢先


土曜の深夜に携帯が震える


眞 お知らせがあります

眞 来週の土曜日の午後から空いてます

僕 待ってました

僕 勿論OKです

眞 良かった

眞 その日は娘が大阪に行ってるから

眞 夕食作らなくて良いの


は?

なんか前にも似たようなことがあったような・・・

僕は馬鹿だが、天然魔性説を確信しつつ


眞 何処に行きましょうかね?

僕 まかせる

眞 なんか行っておいた方が良い所あります?

僕 お茶でも飲みながら相談しようか?

僕 平日の休みは予定詰まってたかな?

眞 火曜は空いてます

僕 ではランチか夕食でもどうかな?

僕 最寄り駅まで行くよ

眞 ではランチで

僕 OK、午前中の用事終わったら連絡する

眞 わかりました

眞 おやすみなさい

僕 おやすみ


僕としては今から車でお茶しに行っても良かったのだが、眞紀からの望みでなければ行くとは言わない


正直、眞紀と逢うのに場所はどうでも良い

ただ、横にいてくれれば良い

心からそう思うが、今回は眞紀に主導権を委ねてみる


魔性の女で上等

眞紀が望むなら、残りの寿命の半分を取られてもいい

デスノートかよ?


馬鹿は死ななきゃなんとやら

いやいやいや・・・

死んでもいいとは思わないけど

残りの寿命の半分くらいだったらいいかな・・・

そんな事を思う自分にドン引きしていた




そして火曜日

僕は午前中の仕事が片付いたので、ラインで連絡して眞紀の最寄駅へ向かった


眞紀が選んだのは洒落たイタリアンレストラン

店の見栄えの割にリーズナブルなランチを提供してくれる

ランチをする時は僕が支払うのが常だが、眞紀はいつもリーズナブルなお店を探してくる

僕はその心遣いが嬉しい


と、言うよりも眞紀のする仕草・言葉・表情・反応

全てにおいて好きなんだと思う

嫌いな相手が何をしてもムカつくのと同様、好きな相手なら何をしても加点になる事を改めて知った


お上品なパスタを食べながら仕事合間のランチタイムは過ぎてゆく

僕は強烈に後ろ髪を引かれながら仕事に戻った

駅に向かう僕をいつまでも眞紀が見ていてくれた

こういう可愛いところが本当にいい


これが天然の魔性の女たる所以なのか?

僕を騙すならそれでいい

揶揄っていたとしても構わない


突き出されたジョーカーを僕は喜んで選ぶ

そして僕が引こうとしても、眞紀は指先に力を込めて引かせない

それが眞紀


そう言えば今日のランチは土曜のデートの相談だったはずだが、そんな話題一切互いに出さず、とりとめのない普段通りの毒にも薬にもならない話しをしただけだった


僕はそれで充分

眞紀もそうであればいいと願う


その日の夜、結局僕からデートの候補地を眞紀へ投げていた


僕:思いついた場所並べます

僕:花やしき

僕:スカイウォーク

僕:ズーラシア

僕:本牧ふ頭

僕:シーパラ

僕:ディズニーランド


思いつくままに並べた


眞:シーパラ


僕はいつものように、眞紀が選んだ場所について下調べを始めようとした刹那、追撃のラインが送られてきた


眞:やっぱり熱海

眞:多分二人で出かけるのは多分最後だから


僕:熱海にしよう


脊髄で反応して、秒で返信する僕


眞:ありがとう

僕:急だから選べないと思うけど

僕:宿取るよ

眞:お願いします


ん?

いいの?

マジで?


とりあえず深く考えるのはやめた

そしてなんとか宿を確保


僕:宿取ったよ

眞:ありがとう


僕は会話をどう続ければ良いかわからなくなったので


僕:おやすみなさい

眞:おやすみなさい

眞:楽しみにしてるわ


時計の針は天辺を指している

明日も仕事なので寝る時間だ







寝れる訳がない


何だこの急展開?

温泉泊まりデートだと?


僕は自分の頬をつねってみたが、全然痛くなかった

やはり夢だと認定し、念の為もう一度渾身の力を込めて頬をつねってみた


少し痛かった


つまりこれは夢ではなく現実

宿から届いた予約確認メールも現実

眞紀とのラインを何度見直しても、僕の暴走ではない


魔性の女、眞紀


その魔力は凄まじく、僕は朝まで殆ど眠れなかった

眠れる訳がない


それでも平静を装い翌朝、僕はいつもの時間に布団から這い出た

普通に身支度をして、普通に出社した


フラフラになりながらも、どうにか仕事を終え帰宅


ちなみに眞紀は、有給休暇の消化らしく出社していなかった


帰宅後、眞紀と簡単な挨拶ラインを交わし、僕は溶けるように眠りについた








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