雨上がりの夜空に

彼女の名前は真木眞紀

僕の脳内ではマキマキだった事もある


社内では真木さん

僕は一定した呼び名を決めていない


真木さん

貴方

そっち


稀にふざけて

眞紀ちゃん


鎌倉では眞紀さんと呼ぼうと頑張ってみたが、僕が眞紀さんと言うと、舅が発してるような感じで止めた

真木さんも眞紀さんも音は同じなんだけど、僕的には全然違う

眞紀と呼んでみようとも思うが、それは真木に聞こえてしまい、クラスメイトを呼ぶような感じに思える


今さらながら真木眞紀はマキマキなんだと思う


例の僕の自由な日は12月12日に約束しました

少し日があるので、近場の遊園地のイルミネーションに連れていこうと思い、今回は行く先を教えずに時間と待ち合わせ場所をのみ決めて待ち合わせ


平日の夕方に遊園地へ


僕は昼間のうちに車を会社近くの駅に移動させ、適当な理由を付けて直帰扱いにして眞紀と待ち合わせて遊園地へ


鎌倉デートこそ快晴だったものの、眞紀とのデートはいつも雨

マリーンルージュの時も間際まで雨の心配はあった

今回もご多分に漏れず、当日の天気予報は雨

1mmの雨程度なら遊園地は空いていて、且つ道路がイルミネーションを反射するらしいので、多少の雨なら決行するつもりだった


3日前から、かれこれ100回は天気予報を確認した

雨の確率が上下する都度、株の如く一喜一憂していた

雨を売りに出せるなら即売り


結局雨予報は消えず、移動中も小雨は落ちていた

これ以上降ったら行先の変更もやむなしか


しかし、何と言う事でしょう!

遊園地に着いた時にはすっかり雨はあがってくれた

おまけに悪い天気予報のおかげで来場者もかなり少ない

道路は雨で湿っていて、イルミネーションは反射しまくりだ

多分、これ以上の条件は無いくらいに完璧に整ってくれた


神様 ありがとうございます

これからは弁天様を筆頭に神様を信じます


僕と眞紀は120%のイルミネーションを堪能し、普段は1時間待ちも辞さない観覧車に待ち時間0で乗った


僕:となりに座りなよ

眞:バランス悪くない?

僕:100kgの人が一人で乗る場合もあるから平気

眞:そんな事あるの?

僕:無いとは言えないだろ


とにかく隣に座らせてイルミネーションを上から堪能

前にも後ろにも他人は乗っていない

完全な個室での二人きり


僕は眞紀のマスクに手をかけた


眞:ダメだって

僕:え?

眞:もー

僕:本当に?

眞:うん、ダメだよ

僕:・・・


え?

え?

え?


またも未遂ですか?

眞紀は眞紀ではないの?

鎌倉に一緒に行った眞紀は別の人なの?

それともオレ、何かした?


本当に意味がわからない

気が付くと地上に到着していて、僕と眞紀は観覧車から降ろされた


流石に僕はどうしていいかわからなったが、言葉少なくデートを続けた

すると無言で眞紀は僕のポケットに手を入れて指を絡ませてきた


お詫び?


僕は徐々に正気を取り戻し、遊園地を出る頃には表面上いつも通りにできていたと思うが、どうだったかは眞紀が判断する事


流石に帰路で食事をする頃には表面上は完全に復活していたと思う


しかしだ

こうなってくるとXデー

そう12月12日の約束も怪しくなってくる

案の定、理由は忘れたがその日は都合が悪いかもしれないらしいので日程変更

代替日は未定だった


未だに眞紀の事がよくわからない

積極的に受け入れてくれる素振りを多々見せてくれるのだが、突然鉄壁のガードを纏ったりする

これが女性っていうものなの?


僕は頼み込んで逢ってもらったり、無理やり言う事を聞かせたりするのは性に合わない。そしてタイムリミットが近づいているのは重々承知した上で、1つの決断をした


僕:じゃあもう逢えないって事なのかな?

眞:違うよ

眞:横浜にいる間はまだ逢える

眞:これを機にあなたもたまに帰省して大阪で途中下車すれば?

眞:必ず車で逢いにいくから

僕:そう言う事じゃなくて、当面逢う予定は組めないって事だよね?

眞:私もいろんな人と約束とかあるけど、そんな事ないよ

僕:そうなの?

眞:空く日も結構あるから

僕:わかった

僕:じゃあ空いてる日があったら連絡頂戴

僕:必ず都合つけるから

眞:うん。連絡するね


時間切れ終了は目前だが、僕は伏して待つ事を決めた

僕は少し追い過ぎたのかも知れない

愛情のバランスが保たれず、僕の一方通行だったのかもしれない


それとも眞紀が冷静になって引いてくれたのか?


僕に大きな減点があり、眞紀が冷めてしまったとは思いたくない


一日千秋


待つだけの身は本当に辛い

それにしても女心はわからない


もしかしたら眞紀は双子

積極眞紀と消極眞紀がいるのだろうか?

いや寧ろ、黒眞紀と白眞紀がいる?


マキマキ・・・

マキマキ・・・


会社で外出時にエレベーターホールで偶然会った。今日もにこやかに大きく手を振ってくれる眞紀


年上とは思えない可愛さだ

でも今日は白眞紀?黒眞紀?


そもそもどっちが白なのか黒なのかすらわからない


そしてただ待つ

伏して待つ










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