ズルい女

僕の乗り換え駅にもできる日吉駅へ

目についた居酒屋で二次会スタート


若い二人を撒いてこっそり飲む

こっそりしてはいないが、今夜二人で飲み直した事を彼等に言う事は無いので、やっぱりこっそりなのだろう


向かい合って座り、いつものとりとめの無い話しをする

店も酒も肴も、特にこだわりは無い

とにかく彼女と過ごせれば、僕にとっての至福の時間


ある程度話したところで、僕に妙なスイッチが入る

蓋が外れ想いが溢れてしまった


僕:わかっているとは思うけど、僕は貴方の事が好きなわけですよ

真:え?


時間が止まった

彼女は僕を見て、小さく頷いた

頷きを機に時は動き出す


僕:でも、これ以上どうにもならない事もわかるわけですよ

真:そうね・・・

僕:しかも、もうすぐいなくなっちゃうわけですよ

真:そんな死んじゃうみたいに言われても

僕:福山ロスとか、安室ロスとか世間では騒ぎますけど、僕の場合は現実に目の前にいる貴方がロスなわけですよ

真:もー・・・そんな事言わないで!

真:その気になれぱ私もこっちにはそれなりに来るから、逢えるよ

真:あなたも帰省する時に、途中下車してくれれば新大阪まで逢いに行くから


ほう・・・

そんな事言ってくれるんだ・・・


僕:お互いにアレだから無茶は言わないけど

僕:もし環境が整ったら、その時に互いにどんなに年をとってても

真:うちの旦那とあなたの奥様が死んだらって事?

僕:ま、それも含めて

真:そっか

僕:うん


恐い内容だが、僕は至って真面目


そして僕は、よく耐えたと思う

少しでも気を緩めたら、涙が流れただろう

決壊寸前だった事は気付かれていたかもしれないが、とにかくこの場は凌いだ


沈黙の割合が増える

彼女の化粧直しをきっかけに店を出た


コーヒーを求めてカフェへ

これも今や彼女とのデートの恒例


明るいカフェの店内で並んで座り、何事もなかったかの如くコーヒーを飲む

しかし話題は変わらない


僕:頼みと言うか、お誘いしたい事があるんだけど

真:なーに?

僕:温泉デートがしたい

真:え?・・・


・・・何言ってんだろうか?

・・・僕はどうしちゃったんだろう?


真:日帰り?泊まり?

僕:勿論泊まり希望だけど、日帰りでもいい

真:私、江ノ電に乗った事ないから乗ってみたいわ

僕:江ノ電で温泉?

真:ちがうちがう

真:江ノ電の食べ歩きがしたいの

僕:わかった。それ行こうか

真:楽しみだわ


サラリと躱されてしまった

僕如きの攻撃など、彼女にしてみれば竹槍に過ぎないのだろう


でも鎌倉デートも間違いなく楽しそうだと、僕は妙に納得且つ満足していた

また一つ楽しみが増えたと素直に喜び、その日に向けたお勉強を始めるのだろう


なんだかんだ言っても、彼女のこんな振る舞いに僕はメロメロなのだ

時計の針は確実に進むけど、その事ばかり気にしていても何も解決はしない


解決?

そもそも解決って何だ?

とりあえずわからない事を考えるのは止めよう・・・


ただ、確実に大きく進んだ事が一つある

今日、僕は彼女に好きだと直接言葉で伝えた

好きの感情はなんとなく伝わっていただろうが、今日は明確に言葉で伝えた


「僕は貴方の事が好きなわけですよ」


こんな台詞を言った事があったかな?

こんな台詞を発するような人間だったかな?


思い返すと恥ずかしい


なんて事は全然なく、寧ろ男らしくキチンと伝えた事を誇らしいと勘違いしていた

そう、勘違いである


だって愛を語る資格は僕にはなく

愛を語られても応えられない制約が彼女にもある


一体僕は何を求め、何に向かっているのだろう?


家に帰りついてからも、その答えは出なかった

出るわけもない


仕方がないのでとりあえず

僕は鎌倉デートの王道をパソコンで検索した

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