LOVE AFFAIR〜秘密のデート

微睡から解き放たれ、当日の朝を迎えた

時刻は5:30

なんぼなんでも早過ぎるのでやり直し


再度目を閉じ、いわゆる二度寝を試みるが多分眠れてはいない

6時過ぎには家の中がだんだん慌ただしくなっているのが伝わってくる


そう、今日は木曜日

平日なのだ。皆、仕事や学校にいくための支度をはじめている

そう言う僕も、公的には私服での仕事なので普通に朝食を取る

それでも時間が余るので、コーヒーを飲みながら気持ちを鎮める


少し早いが戸締りをして、崩れる表情をなんとか保ちながら僕は待ち合わせ場所に向かった


11:00 元町中華街


予め調べておいた三渓園行のバス停を確認しながら山下公園へ歩を進める

待ち合わせよりも30分程早く着いたのだが、これは僕としては普通の事

今朝方まで降っていた雨

乾いているベンチを探し、優雅に落ち着いて携帯が震えるのを待つ。気を抜くと崩れる表情を頑張って保ちながら


しかし携帯が震える事は無かった

何故なら、携帯が震えるよりも先に女神の降臨


真 あれ?もういたんですね!

僕 うん

真 晴れて良かった!

真 流石ハレ女


とりとめの無い、内容の無い会話を楽しんでいると乗船受付の時間

受付を済ませ、ついに

ついにマリーンルージュの船内へ

窓際の席に案内され、食前酒を頼む

汽笛が鳴り、ゆっくりと船は動き出す

ランチクルーズが始まる


店 お肉とお魚のコースで承っていますが、どちらがお肉になさいますか?

僕 彼女にお肉で僕は魚のコースをお願いします

店 かしこまりました


真 後ろのカップルも男の人がお魚にしてましたよ

真 うちらと一緒ですね


予約時に魚と肉の選択を求められるので、大抵は両方に頼んでおくものだ

そして当日、魚が鮭である事を知ると、男は女性に肉の方を捧げるのだろう

うちも、後ろのカップルも思考は同じである

ちなみに鮭も美味しい


食事が進むと店のスタッフがテーブルを回り


店 お手持ちのカメラや携帯があれば写真を御撮りしましょうか?

僕 結構です・・・


後ろのカップルは撮ってもらっていたようだが、他所は他所うちはうち


デザートの時だっただろうか


真 この後、三渓園になりましたが、ボーリング場でも良かったかも

僕 そうだね。結構得意だから今度行こうか


他愛無い会話だが、実はこれにはとても深い意味がある

そもそもマリーンルージュに来ているのはサザンの曲がきっかけ

そしてその歌詞の続きに

“ボーリング場でカッコつけて”と言う一節がある

つまり彼女も今日のデートでサザンの曲を辿ろうとしてくれているのだ

これは僕的に感無量な事

僕と同じ感覚、思考を彼女も持ち合わせている、或いは僕に合わせてくれていると言う事

どちらにしても僕と彼女は波長が合うのだ


心配された天候は晴天

マリーンルージュから見るベイブリッジに虹は架かっていなかったが、充分満足な景色を堪能


食事後は展望デッキに上がれる

潮風を全身で感じ、みなとみらいの帆型ホテルや大観覧車を眺めていると


な、な、なんと

なんと、なんとなんと


サザンの秘密のデートがBGMで流れてきた


思わず目を合わせ、微笑みあう彼女と僕

このまま時が止まればいい

もう永遠にここにいたい

マリーンルージュに来て本当に本当に本当に本当に良かった


何か言わなくちゃ・・・

ここで何か言わなくちゃ・・・


彼女を見つめ僕は振り絞るように言った


僕 すごいね

真 はい


気の利いた言葉は出なかったが、通じ合った気がした


デートに行く場所は関係ない

誰と行くかが大切


これまではこう信じていたが、考えは変わった


マリーンルージュ最高!


大黒ふ頭で虹は見れなかったけど、シーガーディアンで酔わされる予定もないけど


マリーンルージュで愛された

確かに愛された


そして、今この時が我が人生最高の時だと感じた

しかし、その記録はこの後いとも簡単に塗り替えられる事になるのだが・・・


90分のクルーズを終え、彼女と僕は三渓園行のバス停へ向かった





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