Missing
僕は部署の中でも割と早めに出社する
ゆっくりと落ち着いてコーヒーを飲む時間が必要だから
その時間で仕事モードに切り替えるのだ
それだけでは無く、事情通の女史といろんな情報交換をする時間でもある、もっとも僕が持っている有益な情報など殆どなく、女史からいろいろと教えてもらったり、相談を受けたりしているだけなのだが
ある日、女史が言うには
近々あの藤田さんが復帰するらしいとの事
あの藤田さん、と言うのは現在産休中の女の子なのだが、冠に“あの”が付いちゃうような子なのだ
僕はもう慣れているので、さほど困る事はないが、女史的には“あの”藤田さんが復帰してうちの部署に戻るのはチョット困るらしい
“あの”が付く理由は少しお仕事に対して不器用なだけで、人間関係を壊すような振る舞いをするわけではない
そして女史はさらに困った事があると続ける
それは・・・
真木さんもご主人の仕事の都合で地元に帰るらしいから、年内で辞めちゃうのよ・・・
本当に彼女に辞められると困るわよ・・・
は?
は?
はぁあああああああ???????
なんじゃそりゃああああ?
脳内では両手が松田優作の如く血で真っ赤に染まっている
必死で平静を保ち
そうなんだ・・・
それは困ったね・・・
と返し、PC立ち上げながら脳内で状況整理
つまり年内
あと3か月弱で
真木さんいなくなるの?
ご主人が単身赴任されてて、地元に持ち家あるのは知ってたけど
そりゃあいつかは帰るんだろうけど
今?
何故今?
とりあえず強制的にクールダウンさせて
落ち着き冷静に冷静に考えをまとめる
僕はパパであり、彼女もママであるから、帰る場所は当たり前に違う
そんなに深い関係では無いけど、のぼせている僕に対して神が道を塞いでいるのか?
そもそも彼女を辛い目に合わせるのは絶対回避
そしてはっきりと、僕は彼女が好きだ
矛盾
矛盾
矛盾
では、思い切り突っ走ってなりふり構わずいく?
NO
NO
NOである
今、僕が一番好きなのは彼女だ
彼女もソレに気づいていると思われる
それでもデートに応じてくれているのだから・・・
憶測
期待
都合の良い解釈
希望
節度
我慢
結局明確な方針は決まらない
脳内文書もまとまらない
事実は2つ
①彼女は年内しかここにいない
②僕は彼女が好きだ
ならば・・・
成就する事は決して無いが、彼女は最後の恋人
相思相愛じゃなかったとしても、僕の最後の思い人
年明け以降は二度と逢えないかもしれない
でも、その事に抗ってはならない
うん
今まで通りに接して、最後の時まで楽しもう
自己満足でも構わない
カッコ良くいこう
僕は通常運転に戻る
そして夕方
地下鉄の中からライン送信
僕:お疲れ様
真:おつかれさまでした
僕:来週食事でもしない?
僕:今度の木曜(彼女の定休日)代休取るし
真:では水曜の夜ごはんか、木曜日にマリンルージュでランチとかいかがですか?
僕:両方
僕:と言いたいところだけど、断腸の思いで
僕:マリーンルージュにします
僕:予約取っていい?
真:お願いします
~5分後~
僕:予約取った
真:ありがとうございます
僕:待ち合わせとかあとで連絡するから、当日行きたいところ考えといてね
真:了解です
やはり彼女は最高だ
マリーンルージュは前回のデートの時に、僕がサザンの曲に出てくる横浜の名所として話題にしたスポット
こういうのをキチンと拾ってくれるところが僕を夢中にさせる
それから当日まで僕は、彼女がどんな場所を指定してきても対応できるように、山下公園付近のデートスポットを調べ尽くした
これが凄く楽しい
ついでにサザンに秘密のデートを毎日何回も聞いて、無限大に盛り上がった
気持ち悪いとか思わないで欲しい
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