Side Episode 1【親友の苦労 2】

「返事を下さい! いつでも待っているので!」


 一応。と、俺が便箋を受け取ると、山崎さんが笑顔に駆け足で友達の輪に戻っていく。


 ………今思ったけど、あの輪の中にいるショートヘアーのヤツ、一週間前に告白されたヤツに似てる気がする。


 ──まぁ、さすがにそんなわけないか。気のせいだろ。


 そのままボーっと、去っていく友達五人組を見送る。


「うわー………。モテるんだねー」

「うぉわっ!?」


 完璧に油断しているところへ、またもや後ろから声をかけられた。


「お前………えと誰だっけ」


 まだ十時なのに本日二回目のそのパターンで若干イラついた。


 またも女子だ。ただ、さっきの山崎さんみたいに告白してくるヤツ特有の緊張感が見当たらない。


「ひっどいなあー。って言っても、二人きりで話したことないし当然かー」


 なんか言ってんだが。


 てか「誰だっけ・・・」って今言ったけど、超分からない。思い出せない、じゃなくて。


 俺が黙ると、必死に思い出そうとしてるとでも思ったのか、体を左右に揺らして待っている。


 グイグイ来られるよりは超マシだけど、鬱陶しいことには変わらねー。


 首を傾げる度に黒く長い髪がバッサバッサ揺れながら、思い出したか聞いてくる。


 ………ウザくならねぇのかな、あれ


「ねーまだー?」

「五月蝿い。髪切るぞこのアマ」

「ヒドい!」


 今朝コウが新峰に言った様なやりとりを繰り返しているとも露知らず、科白通り超五月蝿かったし軽く脅す。


「思い出してくれた?」

「悪い。そもそも知らなかった」

「……………」



 超睨まれてるけどスルー。



「私だよ! 分からない? ほら、美澤蒔菜みさわまきな!」


 いや知らん。


「え、えっと………」


 超知らないです。超存じ上げませんでした。


「うそ!? これでも『現御うつしみ三美人』っていわれてるのに!」


 やべー。その単語すら超初耳だ。


「もう誰でも良いや。何の用?」

「………ここ現御高校入って一年経ったけど、こんなヒドい扱いされたの今日が初めてだよ……」


 俺に言うなよ。


「用が無いんなら俺は教室に戻るぞ。次の授業の準備がある」


 超見覚え無いし、少なくとも俺のいる一組、よく会う二組じゃねーだろ。


 なら帰られたら困るはずだ。


「うわぁ待って! 話す、話すから!」

「よし、何だ?」

「切り替えはや! 帰る気無かったでしょ!」


 ──女子って皆こんなテンションだっけ。

 超高いよな。


 なんかしんどいよ。俺頭痛くなってきた。


「あの………さ……」


 俺が密かに頭痛を催していると、そんなことは知らない美澤が話を始めた。


 どこか煮詰まった様な、もっと言えば苦しそうな、そんな雰囲気を感じた。


 俺はこんな境遇だからか、人の感情とか気持ちの機敏に聡い。

 そんな俺は、俺じゃなくても分かるほどに苦しそうな美澤を見て一言、


うつんな。超暗いだろうが」

「えぇー!?」


 バッサリと、超冷酷に言い放った。






「───んで用とは」

「……二科君のことなんだけど………」

「トーンが重い。んでウザい。=この話終わりな」

「なんでそうも私に冷たいのっ!」


 どうも何も。俺も女子はなかなか嫌いな方だからな。


 俺の場合、話しかけてくる女子はだいたい告白してくるパターンだから、そう冷たくあしらってもマズイ。


 コウと違って、女子に冷たくすると女子を敵に回すと恐ろしいことは分かってるからな。


 半端に頭が回る知識がある分面倒だなー。

 ただ、それでも精一杯関わらない様にしてる。さっきの『将来設計風熟考』とか。


「分からないなら説明してやる。俺は見ての通りこのナリで、難しい話は超嫌いなんだよ。それにアンタに話振ってもなかなか言わねぇし、これこそめんどーな話の予感がしたんだよ」


 美澤の目が点になる。


「………え? 待って、聞いてくれないの?」


 何言ってんだ。


「俺も暇じゃねーんだ」


 だが、それでも食い下がってくる。


「でも、響谷君に関係あることで───」

「それは俺が決める。───い、い、それに

劫だ。以上の3オーにより却下する」

「再審希望!」

「棄却」


 心なしか、美澤の目がウルウルしだした。








───泣いてくれんなよ。マジでめんどいから。

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【祝☆400PV】前世の君と、また見る夢。 水無月 驟雨 @highttick

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