大切な、大切な家族の夢 1
日課を終わらせた鏡介は、一階に下りて、リビングに入る。その途端、入って来た鏡介を、それはもう大きな声で「おはよー!」と、もはや挨拶という名の爆音が迎えた。
「・・・・・・あぁ」
遺影の前での微笑みは一転、暗雲など比較にならない程に顔を
タッタッという軽快なリズムを奏でながらこちらに来たのは妹だ。正確には鏡介の後ろ手の洗面台が目的地だろうが。
妹の二科
鏡介と頭一つ分の身長差。鏡介は平均くらいなので、虹架がかなり小さいのだろう。黒い髪を胸まで伸ばし、同じく黒いゆったりとしたパジャマを着ている。
虹架は、鏡介とは正反対の性格で、昔はよく友達と談笑しながら帰ってくるのを見かけた。しかし、聞いた所に依ると虹架は、クラスの中では静かな方、というか空気らしい。
まぁ、
人間関係、主にこの年の時期はそんなものだ。
一方で虹架は、俗に言う『廃ゲーマー』というヤツらしい。和輝越しに聞いたのだが、『VR』というものが発売されてからは更に傾倒しているそうだ。実際、最近になって特に夕食まで部屋に引き籠る様になった。
昔は、これでも兄妹仲は
なので、日常会話くらいは簡単にこなせるし、年下な分親よりは楽だ。
結局鏡介と似ているのだ。学校では空気として振る舞い、家ではムードメーカー。大体の人にはこうした二面性があるんだと鏡介は誠勝手に信じている。
「そういや虹架、昨日夜に
大銛クンとは、虹架のクラスメイトだ───多分。なにせ顔を知らない。
「あー・・・・・・・・・放っといて良かったのに〜」
不満そうに声を上げる虹架。いや、放るって・・・
「いや無視したいけどさ、
「・・・・・・ま、まさかそんな即答で無視したい宣言を食らうとは───大銛も可哀想に」
「大銛クンの件名分かってるか? 頭が可哀想なお前も同レベだ」
彼氏では多分・・・ないのだろう。電話を無視しているが、絶えずかかってくるのならケンカではあるまい。恐らくは、普通に虹架のわがままに巻き込まれているのではないだろうか。
なにせ件名は、『二科さん・・・虹架さんに早く
来るように言って下さい!』だ。その内容の電話がかなりの数掛かってくる。鏡介の母も、虹架に専用のスマホを持たせようか真剣に悩んでいた。悩んでいたのは大銛クンも同じ、いやそれ以上だろうが。
それにしても。
『恋人』か。
鏡介も欲しい時期はあった。告白したい人も決まっていた。当然知花で、三年前だった。
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