第42話 意外な人物


女性の朝の1日というのは、なかなかに大変なものである。いくら美しい女性であっても化粧をしない人は限りなく少ない。そして服のコーディネートについては中々決められないのも女性の特権だ。


今日は獲物を釣り出すために街中をウィンドウショッピングをする計画だ。私がウィンドウショッピングをしてお金を使いボディーガードが後をつけて獲物を捕まえる。単純明快な作戦ほど上手くいくと思う。複雑にすればするほど間違える可能性は増えるのだ。


街中に流れる曲が聴き覚えがある。トオルの声だ。いつもパークで流れている島唄じゃない 。その曲を流している店に入って事情を聞いてみた。なんでもこの曲は全米ビルボ○ード一チャート1位になっていると言う。我ながら、しまったと思った。映像の許可は確かに出しているが歌の著作権については曖昧なままだった。 CNN に一杯食わされたかも知れないが、このままでは気は治らないので文句と言うかお金に換金する行為はさせて貰おう。


そんなバカなことをショッピングしながらやっていると目の前に男が現れた。そう私が探している男 アメリカ軍相談役のジェームズだ。


「あら、ジェームス。久しぶりじゃない。こんな所で何してるの」

「おいおい、これはそちらのお招きじゃないのかい」

ボディガードの方を目配せしながら目がそう語っている。


「お招きはしたわ。でも遅刻ね。遅すぎるわ」

「俺が欲しいのは血液だ。あんたらが探してる女性に俺は感知してない」

ジェームスはぬけぬけとそう呟いた。

「血液だったらトオルが売るって言ってたわよ」

「買えない金額じゃないが必要な量を買ってしまうと軍が潰れちまう」

「値下げはしないわよ」

「だったら力ずくということも有り得ると思うよ。お嬢さん」

「あらあなた交渉が下手ね。ドラゴンをペンタゴンに派遣してもいいのよ。軍の威厳とやらはどうなるかしら」

ジェーンはニィーと口の端を吊り上げてそう話した


「痛いところを突く。ここは腹を割って話してみないか」

「簡単に言うわ。彼女を助けるために軍が協力しなさい。見返りはドラゴンの血液よ」


ここで重要なのは協力するとは言っているがドラゴンの血液をあげるとは言っていない。つまり見返りとはドラゴンの血液を見せることかもしれない。ちょっとした言葉のひっかけたがうまくいくと助かる。


「分かった協力しよう。彼女は血液の分析に役に立ちそうだしな。あんたとトオルってやつはドラゴンを信用しすぎだ。ドラゴンは頭がいいし、何かしらの罠があると俺は思っている」


「ふーん、そんなことだと思ってたの。だからドラゴンの糞なんて盗んだの」

「成果になるとは思ってはいないが DNA から弱点が見えてくるかもしれないとそう思ってただけだ」

「血液を寄越せと女性を脅したのもあんた?」

「それは軍の一部が暴走しただけだよ、その事については詫びるよ」


ジェームスは思っているよりも誠実に話してきた。もっと嘘のやり取りや、上位関係を取ろうと何かを仕掛けてくるかと思ったが何もなかった。まあアメリカ軍は優秀なので手伝ってもらおう。


ボディーガードと私で彼を威圧するようにしてから語った。

「こちらの予想だとエリザベートは Go〇〇gle に捕まってるわ」

「軍の力で調査できないかしら」

「おそらくその企業は軍からの依頼で受けていると思うので、ちょっと探りを入れてみるよ2-3日は時間は欲しいな」


そう言うと彼はボディーガードの肩をぽんと叩いてスタスタと歩いて消えていった。


ジェームスとのやり取りはうまくは言ったがストレスは溜まった。この怒りは CNN にぶつけてやろうと思う。早速 CNN に電話してトオルが歌っている島唄の売上の10%をもらえるように新しい契約を作った


1日もしないうちに機密のために使っている折りたたみ式の携帯が鳴った。出てみるとジェームスだった。

「都合がついたんで明日にでも一緒に例の会社に行こうぜ」

「一応私の弁護士同伴でもいいかしら」

「依頼主は軍つまり俺だから大丈夫だろ」


意外に早い処理の速度と秘密にしていた折りたたみ式の携帯の番号を入手するとはなかなか侮れないと思った。


翌日一緒の車に乗るのは気が引けたが弁護士のリサと一緒に巨大IT企業に向かった。


ウィンドウショッピングをしたのに一円も使わず散財ができないのは不満でもあった。

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