第41話 データの行方

くたくたになってホテルに着くとボディーガードの二人がホテルの部屋を変えろと言い始めた。これはいわゆる爆弾などのテロや盗聴器対策で行うそうだ。 ホテルの従業員に頼み階段の近くの部屋を新たに取ってもらった。ボディーガードと共にその部屋の前まで行くと、中の確認をするからと私からキーを取り上げてボディーガード達は部屋を調べていた。


盗聴器らしいものを二つほど持って出てきた男たちは携帯電話は私に渡した。今の携帯電話は SIM を外して電源を切っておくらしい。最近のスマートフォンは色々とデータが盗まれやすいので注意が必要だ。


古めの折り畳む方式の携帯でトオルに電話をかけた。


「…というわけでドラゴンの血液と思わしき物は回収はできたけれども、友人のエリザベートの行方はまだ分かっていないわ」

「そうかこちらも思ったほど進展はない」

「明日は血液サンプルのデータを探してみるわ。それじゃあ良い夜を」

そして電話を切った後ぐったりと疲れていたのかすぐに寝ることはできた。


翌朝 CNN に電話をしインタビューに応じる旨を説明した。

これはインタビューでドラゴンの血液を持っている事をわざとばらし相手を食いつかせるための撒き餌だ。いざとなれば、二人のボディーガードと精霊だけが頼りの綱だと思っている。


今日の午後にはエリザベートの上司が帰ってくるので一度話を聞いて血液のサンプルデータいやパソコンの保存データがないか確認をする。残念ながら彼女の上司も疑わなければならない一人でもある。


ホテルの一室でやってきた CNN のレポーターに、友人が行方不明で心配な事と血液サンプルが見つかったという話を伝えた。ところがレポーターの興味は、そんなところにはないらしく、ドラゴンの話やトオルの話を聴きたいらしい。 アメリカはキリスト教の存在が強く日本と違い精霊というものに対して違和感を抱いてる人も多い。ジェーンも以前は生粋のキリスト教徒ではあったが、トオル達と一緒に行動をする事によって違和感は薄れていった。


レポーターはキリスト教の信者らしく、やはり精霊というものに対して違和感を感じているようだ。私は思ったことを正確にしゃべった。元々何かに配慮してあげるというのは得意ではない。アメリカの市民たちの喜ぶ回答では、ないのかもしれないが自分の意見はしっかりと伝えたつもりだ。


インタビューが終わった後エリザベスの上司と会うために待ち合わせ場所へ向かった。エリザベスの上司はボディーガードに持ち物検査をされてとても嫌そうな顔を私に向けていた。その後、彼と一緒にマサチューセッツ工科大学の方へ向かった。サンプルの血液については何も彼は知らなかった。データベースにアクセスするためには職員の ID が必要なので彼にアクセスしてもらい血液のデータの有無を確認したが、残念ながらデータはなかった。


調査の行方は一旦、振り出しに戻った。これ以上はここで何か証拠が出て来るということはないだろう。ロズウェルトとリサに頼んでいた情報がどうなっているか確認しに向かおう。まずはロズウェルからだ。

彼にはコロンビア大学に向かってもらっていたが、彼の話によれば古文書に関する話やドラゴンの血液などのデータはなかったようだ。しかし面白い人物にあったと彼は言っていた。 アメリカ軍相談役のジェームスだ。日本にいるはずの彼が何故ここにいるのかはわからないが確かに意外だった。


「ありがとう助かったわ」


ロズウェルにお礼を述べると颯爽とリサのオフィスに向かった。


「リサ調査の方はどうだったの」

「ダメよ。令状がなきゃ何もできないわ。門前払いもいいところよ」

「そう、ロズウェルがジェームスを見かけたと言ってたので彼を捕まえて行ってみるのも一つの手かもしれないわね」

「大丈夫なの? 」

「分からないけどエリザベートが生きてるとしたら、あの建物の中しかない気がするわ」

「そうね。他の場所や企業からでは無理だと思うわ」


つまり明日からはジェームスを餌で釣り上げなければいけない。少しだけ気が滅入ってきた。軍人相手にうまく先手を取れるだろうか。

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