第40話 消えた友人
私は今マサチューセッツ工科大学に来ている。MIT と呼ばれる全米屈指の名門校でもある。ここの教授をしている私の友人のエリザベートにドラゴンの血液の解析と古文書の解析を頼んだ。
アメリカでは仲の良い友人のことをスピリチュアルフレンドとかソウルメイトと呼ぶことがある。やはり友人というものは一生の付き合いが必要で一時限りの彼氏彼女とは事情が異なる。
イギリス移民系のエリザベートは私の数少ない友人の一人だソウルメイトと呼んでもいいかもしれない。もし私が持ち込んだ依頼が彼女をを苦しめているとしたら、私は自分を許せなくなるかもしれない。
大学の入り口で CNN の身分証を見せて、彼女の研究室へ入れてもらった。中の様子は誰かが荒らしたような、そんな後は見当たらなかった。
学校に入れてくれたガードマンの人に尋ねると4日前から彼女が出勤していないという話だ。
「この研究室では誰でも出入りできるのかしら」
私のことを知っていたのだろう。通常は教えてもらえないようなこともこのガードマンは教えてくれた。
「カードキーがないと入ることはできないですね。現在入ることができるのはエリザベートと上司の人間だけです」
「その上司の人間と会うことはできるかしら」
「彼は一週間前からワシントンで研究の発表会に出ています」
「エリザベートは他に部屋を持っていなかったかしら」
「すいません自宅やプライベートについては私はよくわからないんです。お力になれず申し訳ない」
研究室にはサンプルもすでになく、物的証拠と思えるものも見つけることはできなかった。ただ彼女は慎重で非常に重要なものは何処かに隠している可能性がある。
私はロズウェルから 紹介された護衛を連れだって、ともに彼女の自宅住所に向かった。
自宅を開けてもらうために彼女の母親には連絡を取ってある。彼女を早く助け出すためにも部屋を開けてもらう必要があった。
彼女の母親と待ち合わせてアパートの前で落ち合った。やはりアパートは郵便物が大量にポストに入れられており帰ってきている形跡はなかった。
「お久しぶりねジェーン。ずいぶんと綺麗になったのね」
「エリザベートのお母さんも相変わらずお綺麗ですね」
軽い挨拶をかわし雑談をしながら、母親に部屋を空けてもらい一緒に中に入った。ボディガードの二人には外で待つように指示した。
種子島で小島さんを襲った男はドラゴンの血液を欲していた。ということは彼らはまだドラゴンの血液を入手できていない。つまりどこかにドラゴンの血液は隠されている可能性が高いと思う。私は探偵のようなそんな性格ではなかったのだが、トオルと付き合うことによって何かが変わったのだろうか。 以前の自分とは違うようなそんな気分を味わっていた。
「エリザベートは大丈夫かしら」
彼女の母親は目を細めながら心配そうに誰もいない部屋を見ていた。
「わかりません。無責任なようでごめんなさい。でも全力は尽くすと約束します」
そう彼女の母親に伝えた。
「私が彼女に調べて欲しいと渡したものが見つかっていないんです。ひょっとしたらこの部屋にあるかもしれないのですが何か思い当たるものはないでしょうか」
「そうねぇ・・・」
母親はしばらく悩むように考えた後で何かを思い立ったのかのようにベッドの下の辺りを探し始めた。そっから出てきた小さな鍵付きの箱を私に渡してくれた。
「彼女はベッドの下に金庫を隠すの。ゴミだらけのベットの下だと見落としやすいのよ」そう言って軽い笑みを浮かべた
私の力では開けることができないのでボディーガードに開けてもらった。すると血液が入っていた。これが対象のものかどうかははっきりはしないが、ひとまずは大丈夫だろうと思った。一度この部屋を引き上げて考えを整理しないといけない。
彼女の母親には依頼した血液が見つかったことと、それが今手元にあるので彼女の身は安全である可能性が少し高まったと説明した。
誰もいないその部屋を見ながら絶対に犯人は見つけてやると私は神に誓っていた。
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