第四章 アメリカ編
第39話 アメリカへの帰還
※主人公目線からジェーンに変わります
私もちょっと日本に長く居すぎたのかも知れない。通常であれば疑うようなことも日本にいると信じてしまうことがある。これから向かう先はアメリカのボストンである。心を引き締めてかからなければ危険が潜んでいる。
トオルには隠してはいるがCNNをまだ退社しておらずに未だVIP扱いの取締役になっている。いわゆる兼任業務だ。なのでCNNのプライベートジェットで帰還することにした。CNNの取締役での収入が年間1億ドルとインセンティブ6億ドル程度あるので、 ボストンについたらホンダジェットでも買おうと思う。価格は6億円程度なので専用のパイロットと一緒に雇い各大学や企業を回りたい。 何故なら時間が行方不明の彼女の生死を分けると思うからだ。
本当はアメリカにいる私の家族の為にも一度実家に帰り、トオルのことや、いろいろ相談したいことはあったが、それをするだけの時間がなかった。 マサチューセッツ大学の友人であるエリザベートが非常に心配な状況だ。
プライベートジェットから降りるとそこは記者が取り囲んでいた。どこから漏れたのかはわからないが、ジェーンも今ではアメリカでは英雄扱いされている。 もちろん精霊については秘密にしてあるが、それを除いても、今話題の人物と恋仲と噂されているだけでパパラッチの対象には十分だ。
彼らには帰って来た目的を簡単にメディアに話した。
友人を探すために戻ってきたと素直に説明した。メディアを使って友人の安否を確認できるのであればそれは一つの戦略としては間違っていないと思う。メディアのネットワークは広いのだ
五つ星のホテルに宿を取った後 にCNN のワシントンの支局に向かった。
「あら、ジェーン久しぶりね。いつ帰ってきたの」
「ごめんね。急いでるから、偏屈者の彼、ロズウェルはいるかしら」
「角の部屋にいるわ。頑張ってね」
久しぶりに会った同僚は気さくな感じで接してくれた。少しホームに帰ってきたようなそんな気がした。
「ロズウェルいるの?ジェーンよ扉を開けて」
ガチャリという鍵の音が鳴り響きボサボサ頭の男が現れた。
「よかったわ、ロズウェル。あなたに大至急頼みたいことがあるの」
「…というわけでマサチューセッツ工科大学とコロンビア大学を調査しなければならないの。もちろん結果とデータも必要よ。私一人では人手が足りないし護衛も必要だわ。頼める相手があなたしか見つからなかったのお願いできるかしら」
そうジェーンは語り終わると100ドル札の束を本と机の上に置いた 。
「当面の期間の活動費よ」
「わかった護衛は俺の方で何とかしよう。プライベートジェットで来てるんだろう。2時間後にそこに動かせるように配置する。凄腕のボディガードが2-3人で限界だ。人員については我慢してくれ」
フンとふんぞり返ってソファーに座ると話を続けた。
「あんたの話を聞くだけじゃ相当にきな臭い。コロンビア大学の方は俺が調べるから、マサチューセッツの方はジェーンが行った方が良いだろう。じゃあ健闘を祈っているよ」
そう言うと彼はシルクハットの帽子をかぶり足早に去っていった。
ワシントンにいる間に弁護士を雇う必要もあった。知り合いにリサという女性弁護士がいるので彼女に頼もうと思う。私は早速彼女のオフィスに向かったのだった。
「お久しぶりねリサ」
私はオフィスの受付を無視してリサとさっさと話を始めた。
「あら、世界一有名なCNNのレポーターさんじゃありませんか。こんな貧乏な弁護士の部屋に何の用かしら」
そうなのだ、まだ彼女は独立したばかりで部屋も小さく薄汚い。だが、彼女を知るジェーンは見かけで人は評価しない
「リサごめんね。あんまり時間がなくて冗談を交わしている時間がないの。何しろ相手は世界最大級の IT 企業 Go○○gle よシリコンバレーに行ってもらうわ」
そう冷たく話した後に来客用の椅子にどかっと腰掛けた。
「なにやら物騒そうな話ね。私で大丈夫かしら? 」
「当座の資金は渡すわ。必要な人は雇って合同弁護でも全然問題ないわ」
そう言いながら100ドル札の束を3個テーブルの上に放り出した。
「…というわけなのよ。必要なのは失われたデータと現物。そして行方不明の教授。黒幕が分かるのであれば黒幕とその狙いなど必要かしらね。訴訟相手は世界有数の企業よどんな手を使ってくるか分からないわ。気を付けて」
「そう、日本という平和な国で攻撃を受けたというのであれば、よほどな事態になっているわね。できるかどうかは約束できないけど、全力は尽くすわ。それにこんなビッグチャンスを逃すアメリカ人は変人よ」
大企業相手に戦い勝利をして名声を得る。弁護士といえども食べる為には名声や人脈は必要なのだ。
そう言って差し出した右手を握り返し握手した。
「頼むわ。私はこれから一度マサチューセッツ大に行くので何かあれば電話でちょうだい」
すぐにとんぼ返りでマサチューセッツ大学へ向かうのだった
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