第36話 地元からの相談

昔、種子島を良い島にしたいなどと言っていたが、とんでもない俺の思い上がりだと痛感させられた。


ドラゴンパークの人気はうなぎ登りだ。そのため早速作っている宿泊施設の整備業者や工事関係者も来るので小さな町に人の往来は信じられない程ある。車の渋滞などは日常化していた。大きなトラックが何本も走っている。元々宇宙航空センターもあるため道路は広く作られているが、それでも車の数は多い。


そんな観光客がお金を落として行くと思いきや、そう都合良くは、いっていない。地元の商店街は閑古鳥が鳴いている。工事関係者の増えた収入も一時的なものでありネットショッピングにお客さんを奪われ収入は激減している。


「トオルさん、どうか島民を助けてほしい」


そんな地元島民の商店街組合からの切実な依頼だった。しかし物事はそんなに簡単ではない。自分がお金を分け与えれば良いようにも見えるが、それは一時的なものであり、住民が自ら稼ぎ安定して収入を得られなければ水瓶に穴が開いてるのと一緒だ。ドラゴンパークで雇っている人もいるがごく少数であり島民全てを賄えるものではない。何らかの事業を起こし島民が儲かるようにしなければいけない。


「ちょっと従業員とも相談しますので2-3日お時間いただけますか」


そう説明すると俺は山田達が雇った従業員と加藤さんとジェーンを呼んだ。

「…というわけで島にお金になる事業が必要なんだ。ドラゴンのお菓子やドラゴンのタペストリーなんかでは物足りないと思っている」

「難しいですね社長。こんな事までうちらがやらないと、いけないんですか」

山田君はあまり納得していないようだ。

「いやいや、これは従業員にとってチャンスだと思うんだ。種子島を使って新しい事業を起こし収入を得る。これを他人の金でできるチャンスはそうないよ」


ざわざわと従業員たちが騒ぎ出した。気がついたのだろう自分のアイデアを社長がお金を出してくれて立ち上げを手伝ってくれる。利に聡く先を見通せるものならば手を挙げるはずだ。


「明日の朝まで時間を与えるのでいいアイデアを期待している。もちろん俺も考えてみるよ。では解散」


そういったあと従業員たちは散り散りに消えていった。


「当然私も参加していいのよね」

ジェーンは自信たっぷりに人がいなくなった後にそういった。

「もちろん構わない。アメリカ流を見せてくれれば嬉しいよ」

そう自信なく笑うのだった。


翌日の朝早く基地内にあるミーティングルームにいってみた。すると従業員達は既に集まっていたようでホワイトボードに色々と書きながら議論していた。


ホワイトボードにはこんなことが書かれていた

・Ah○azonを倒す

・Go○gleをぶっ壊す

・新SNS

・ググってもカス

・セキュリティネットワーク

・新たなる運送ネットワーク

・社長は女たらし

・社長はドラゴンだけしかないのに偉そう

・社長の口座残高はありえない。

・島ごと買えよ


全部愚痴じゃねえか。いや、新SNSとセキュリティネットワーク、新たなる運送ネットワークは使えるかもしれない。 簡単に要約すればググってもカスなアフィリエイトサイトばかりで使えないので、検索ロボット新たに作り有害なサイトは除外していく。セキュリティなネットワークを構築することお金はかければできそうな気がしてきた。


また Ah○azonのようなプラットフォームは中間搾取をしているだけなので運送ネットワークと販売業者が直接取引を行うことによってこの中間搾取を減らせるはずだ 。従業員に説明させてみるとそんな内容だった。これらのことを実現するにはドラゴンの鱗があってもちょっと難しい。


どでかい人脈が欲しい。政府や経済界にどでかい人脈があればこれらの事は実現するかもしれない。そして島民のみならず日本という国経済を良くすることもできるかもしれない。まずはこれを周知することから始めないといけないかな。小島さんにこの新たなビジョンを一冊の本にして売り出すように指示をした。 上手くいけば産業が地産地消となり日本の経済は安定していくと思う


こんな無茶苦茶なことができるのかという思いと、俺ならできるはずだという自信がグチャグチャに混じった感情を制御するのは難しかった。まずは周知とリサーチから始めていかないといけない。D対策本部の偉そうな人をこき使ってやる計画も立てなければならないな


新たに周知させる本はドラゴンネットワークにしようか思案中だ。


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