第23話 ブレスの秘密とオーラ
俺はドラゴンパークの建設やら何やらを一切合切全て博愛堂の山田さんに任せていた。これは別名丸投げともいわれるが、決して会社でやってはいけない事だ。ドラゴンパークは望遠鏡でドラゴンを見れる様に一般開放型の施設を高台に建設予定である。黒竜という名前のナイフも展示される予定であるが展示物が少ないので建設計画は難航していた。
山田さんには我社へのオファーは出していた。商社に知り合いがいれば紹介して欲しいともお願いしていた。人手が足りない我社は社員の増加が一番必要な事だった。しかし種子島の様な地方都市では、中々うんと頷いてくれる人は少ないようだ。
そんな中俺の頭の中に言葉が響いてきた。
『【緊急】トール緊急事態じゃ。今晩ジェーンと一緒に我が元を訪れるように。他言無用じゃぞ』
俺はジェーンに今晩重要な話があると説明しカメラは絶対に持ってこないようにお願いした。 どうやらジェーンは俺の告白だと勘違いしたらしく、怒り狂った彼女に俺は膝蹴りを喰らった。親切丁寧に説明して土下座を繰り返す事30分。ようやくお許しが出たので、皆が寝静まった頃にドラコのもとへ俺とジェーンは向かった。 まぁ…夜中に異性を呼び出せば勘違いしちゃうよね。この時にジェーンにはドラコが念話を使える事を伝えた。
「待たせたなドラコ、 緊急事態っていうのは何だよ」
俺は訝しげにドラコに尋ねた。
「うむ最近アニメとか言う絵が動くものを見て、ついに語彙(ごい)を得たのじゃ。故に今までわからなかった言葉が説明できるようになったのじゃ」
「凄いじゃないのドラコちゃん。じゃあこないだのブレスはどういう仕組みなの」
さすがはテレビレポーターだ。すぐさま質問できるのはある種の才能ではないだろうか。
「簡単に言うとブレスというのは魔法じゃ。お主らの言う内臓器官とかそういったもので吐き出されるものではない。風魔法で空気を圧縮しているだけだ。台風は気圧が低いから圧縮された空気をぶつけると空気中の体積がなだらかになり、台風は消えたのじゃ」
「ええぇ何処でそんな専門用語覚えたんだよ」
「教育テレビを舐めるでない」
俺のツッコミに冷静にドラコは答えていた。
「魔法だったら口じゃなくて指でもいいんじゃないの」
鋭い指摘だ感心して聞いていると質問にドラコもちゃんと説明していた。
「つまりじゃ、呪文を紡ぎ口からオーラを吐き出し具現化するのが魔法なのじゃ人間と違いドラゴンの場合は口が魔力の通りが良いので口から出す」
「なるほどじゃあドラコちゃんはどこから来たの」
矢継ぎ早に質問されるドラコは慌てたように一旦止めた
「まあ待て、順番に説明していこう。まずはトオルお主のことじゃ」
表情は分からないが首をぬっと俺に近づけ真っ直ぐに俺を見るドラゴン。
「トオルお主の動物に好かれる才能というのは実は”覇王のオーラ”というものじゃ」
「「覇王のオーラ」」
俺とジェーンは思わず言葉がかぶってしまった
「覇王のオーラと言われても良くわからない説明してくれ」
「うむ、動物というのは強者に従う。そういう生き物だという事は分かるか」
「ああ、分かるよ。しつけの時に気が付くからね」
動物は強者に従う。そして餌を与えてくれるものに従うものだ。
「そうじゃ、覇王のオーラはその人の資質によって左右されるので一概に言えないが命を奪ったりすると増えることはある。身に覚えはないか?」
酪農関係もやっていたので、当然ながら殺処分したり、病気の際には何万頭と殺処分を手伝う事もある。
「ああ、あるけど、その理由だと畜産関係の人とかがオーラが多いんじゃないのか」
「それはある意味正しく、ある意味では違う。人には器というものがありその器を満たせば若干は増えはするが器の大きさは天の計らいによるものが多いのじゃ」
バンと背中を叩かれジェーンは言った
「凄いじゃないのトオル」
自分の事の様に喜んでいるジェーンを尻目にドラコが言葉を続けた。
「儂が知る限り、歴代の覇王のオーラは王となる人物が持つことが多かったが、危険な側面もあるのじゃ。そこでジェーンがトオルを諫める必要があるのだ。そして彼女には『王佐の才』という才能があるようじゃ」
「『王佐の才』というと荀彧とかが有名だな。確か王を補佐とかする能力だ」
俺は意味が分からないかもしれないジェーンにそう説明した。
「そして、覇王のオーラは精霊を従える事が出来る場合がある。それができれば魔法は習得可能ということじゃ」
「「なんだって!!!」」
俺とジェーンは次に話すべき言葉を失ったのだった…
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