第18話 乗るために必要な物
その日は朝から晴天と言っていいほど軽やかな風と強い日差しのことだった。散歩と称してドラコを建物から連れ出して色々と会話をしてみた。
ドラコと会話できることは未だに誰にも言っていない。
「なぁードラコって歳いくつ? 」
大きな首をゆるりとまわして顔を近づけながら俺につぶやいた
「ドラゴンはなあー、歳なんて数えていないよ。100は過ぎたと思うけど、よくわからないのじゃ。封印されておって出てきたら人に攻撃されておった」
言われてみればそれもそうかと思った。人でさえ、今何歳だっけと思い直すことは度々あるものだ。
ん・・・封印されてたとか聞いちゃダメなことが聞こえた。聞こえない、俺は聞いてないと言い聞かせて忘れる事にした。
「そんじゃどこから来たの?」
「あっちじゃ、どこと言われても説明はできん。空の上からあの辺とは説明できるぞ」
「俺を乗せて空を飛ぶことはできるの?」
「お主のような小さい物を乗せて飛ぶことは簡単じゃ」
そうなると馬具の様な物を作る事になるかも知れない
普通は馬に乗る時は鞍(くら)や鐙(あぶみ)は必要だ。これらが無いと足がパンパンになってしまって普通の人では馬に乗ることは厳しいと言わざる得ない 。ちなみに鞍(くら)とは乗るための場所で鐙は両足を支えるところを言う。手綱や風防なども必要だと思った
「なぁ飛ぶのにドラコの体に道具をつけてもいいか?」
「どんな道具が分からないから何とも言えんのじゃ布ぐらいならいいぞ」
よくよく考えてみると会話ができるので手綱はいらないと思った。風防についてもフルフェイスのヘルメットで代用できる可能性がある。そして特注の鞍や鐙は革製になるのでドラコのサイズのものを作るのは難しいのではないかと思えた。なので、ドラコの体に巻きつける布に手をかける場所と足場を作ればいけるのではないかと考えた。
「…という訳で布が必要なんですが自衛隊にそんな丈夫そうな布ってありますか」
自衛隊の加藤さんにそのことを相談してみた
「ありますよ加工したいのであれば測って特注のものを繊維会社に作ってもらいます。空を飛ぶのであればワイヤーとかが混じっている物が良いでしょう」
「ありがとうございます加藤さん。これで残るはフルフェイスを買うだけですね」
「自衛隊のヘルメットでよければヘルメットとパラシュート一式服と一緒にお貸ししますよ」
「ホントですか。マジで助かります」
「どの辺を飛ぶ予定ですか?近隣の施設と飛行機に注意を促しますので教えてもらえると混乱が少ないと思います。あと可能であれば GPS を持って飛んで頂けるといいんですがね」
おそらく飛行機などとのニアミスを防ぐためにあらかじめ手を打ってくれるのだろう。俺はそのことについて了承し、メジャーでドラコの乗る場所の寸法を測るのだった。
そのことを聞きつけたジェーンが現れた。
「ねえトオル私もちょっとドラゴン乗ってみたいんだけど・・・」
「えーどうだろうなあ」
ちらっとドラコの方を見てみると首を横に振っていた。
「まだ安全上にもいろいろ問題があるみたいだから、悪いけど今は駄目だな。乗れるようになったら一番に教えるよ」
ふてくされて踵を返すジェーンには申し訳ないが、しょうがないと手のひらを併せて謝罪のポーズをとるのだった。
しかし翌日ジェーンは肩に付けるカメラとヘルメットに付けるカメラを持って現れた。
「次回のドラゴンの放送はこれで決まりね」
にっこりと笑う彼女に俺は拒否する事など出来なかった。自撮りのカメラは芸人の人のを見ると俺の拒否感と抵抗は大きかった。
飛行ルートについてはフィリピン海を渡って沖縄の東側を回り、台湾北部を通過した後に東シナ海を経由して帰投してくるルートを考えている。そのことについて加藤さんに相談したら絶対にダメだと言われた。台湾は残念ながら他国の領土であり同盟国以外である領土での飛行は困難であると言われた。ハワイやグアムの方を飛ぶ分には問題ないとのことだ。しかし GPS を持たされるのでレーダーのテストを兼ねているのかもしれない。そのことについては多少お世話になってるので黙認しようと思った。飛行ルートは初めてのこともありグアムに決定した。そのことについては CNN や国営放送がニュースにして報道していた。
『ドラゴンを見ようツアー』がグアムで出来上がっていることについては俺はもう何も言わないことにした…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます