第4話 国連軍とオーストラリア空軍
オーストラリアの首相M・リードは良くも悪くも政治家である。ドラゴンから住民を守るそのスタンスで対応をとることを決めたようである 。記者会見の内容は以下のような形だった
「誠に遺憾ながら捕獲作戦が失敗したことにより空軍での対応をせざるを得ない状況である。本日3機のスーパーホーネットにより攻撃することを決定した。また合わせてダーウィン市民の避難についても検討していきたい」
記者会見場で首相は拳を握りながら力強くそう語った
オーストラリア軍のダーウィン空軍基地はダーウィン国際空港の横に設置されている。そこより3機のスーパーホーネットが3本の白い飛行機雲をひきながら発進した。
スーパーホーネットはマッハ1.6での飛行が可能であり、長い航続距離を誇る。空での給油や 空母での着艦も可能で米軍でも採用されている。その様々な武装を搭載することも魅力の一部である。F 3 5 のようにステルス性はないものの十分な飛行性能を持っている現役の戦闘機である
「こちらアルファワン、只今より未確認生物体に対しての攻撃を開始する」
「こちら作戦指令本部、アルファーワン攻撃を承認する。ブラボーワン、チャーリーワンは続け」
「「了解」」
ちなみによく使われるアルファ、ブラボー、チャーリーなどはNATO軍フォネティックコードと呼ばれている
「こちらアルファーワン目標を視認これより作戦行動を開始する」
「こちらは作戦本部了解攻撃を直ちに開始せよ」
「しかしどういう原理で飛んでるんだかね奴さんは」
パイロットは不思議そうに呟いた。
「知りませんよそんなことカメラ準備できたんで初めてください」
複座コックピットでカメラを持ちながら副操縦士は答えた
「本部へ。こちらアルファーワン敵生命体レーダー及び画像赤外線センサーに映りません。AIM-120中射程空対空ミサイルによる攻撃は中止する」
「アルファーワンへAGM-154JSOW滑空誘導爆弾を使用せよ。GPS誘導はこちらで行う」
「了解上空より発射します」
三機のスーパーホーネットから複数のミサイルが発射され、そのうち約半数が対象から外れて逸れていった。残ったいくつかのミサイルは着弾したものの平気な顔でドラゴンは空中を悠々自適に飛んでいた。
続けられる攻撃に対しドラゴンはホバリングを始めミサイルに対しブレスのようなものを口から発射し空中で次第にミサイルは溶けていった
「こちらアルファーワン、ターゲットへの着弾を確認。敵対生命体損傷軽微、いえ無傷です。作戦本部へ本機武装での攻撃は通用しないと判断し中止を要請します」
「こちら作戦本部中止要請を認める。アルファ、ブラボー、チャーリーはすぐに帰投せよ」
こうして空軍の攻撃失敗のニュースはその晩に動画と共に世界中を駆け巡った
国際ニュース各社は驚きとともに動画を公開しその鱗の特異性について地球上のどの鉱物よりも硬い可能性があることを有識者が語っていた 。またブレスの仕組みについては現代の科学分野では説明できないと専門家が匙を投げていた
オーストラリアの首相M・リードは幕僚会議の後、記者会見を行った。
「空軍の打撃作戦が失敗したことは誠に遺憾に思う。核を除いた現有の保有戦力では打撃を与えるのは難しく国連軍、アメリカ軍とも協議し打開策を見つけていきたい。また、侵攻上のルートにある住民はダーウィン市への避難を開始することを勧告する。また侵攻北上ルートにある西パプアと日本に対して注意を伝える事としたい」
この発言に対し無責任とするEUと生物の所有権を主張する中国、協力を申し出るアメリカと内容は分かれた。中国に対しては損害賠償責任がある事を告げると押し黙った
アメリカはファイブアイズと日本とパプアニューギニアに対し情報公開を約束し主導権を握った。また横田基地にある国連軍指令本部を活用し対応に当たると発表した
国連軍は1950年に勃発した朝鮮戦争において組織された多国籍軍である。2018年現在も組織は存続しており、日本の横田飛行場に後方司令部を置く。現在の国連軍総司令はオーストラリア将校がしている為、オーストラリアにとっても利点があった
「ファイブアイズ」の意味はUKUSA協定と呼ばれる、英米を中心とした5ヵ国の諜報に関する協定の通称のことを指している
日本はアメリカと協力して対策するとともに、緊急対策本部を立ち上げ広く対策を公募し、これに当たりたいと発表した。またドラゴンの進路として西パプア経由後日本の九州へ上陸の可能性があることも併せて伝えられた…
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