第3話 オーストラリア政府

国際ニュースでは、ドラゴンによる被害が存在しないので敵とはせずに生体見本として捕獲すべきだと意見する保護団体並びに権威ある学者たち。対して危険なので殺処分すべきだという保守系団体と意見が真二つに分かれていた。


そんなニュースを見ながら俺とお義父さんは家の借金問題について話し合っていた

「こんなことを言うのは、なんだけれどもトオルくん無理して田舎に残って農業しなくてもいいんだよ」

お義父さんは優しく微笑みながらそう言ってくれた


「そうよトオルちゃん! もう娘はいないんだから好きにして良いのよ」

お義母さんも賛同するように併せてくれた


「そんな水臭いこと言わないでくださいよ。俺だって家族の一員なんです」


俺の本音の部分で逃げたい気持ちは少しあった。しかし借金の名義は俺なので逃げるわけにはいかない。


農地の名義はお父さんだが、建てたばかりの家の名義や借金の名義は俺になったままだった。 嫁と結婚した時に拡張した農地と建て直した家や農機がここにきて重くのしかかっていた。

嫁に先立たれて一年。既に生命保険で支払われたお金も借金に消えていった。

ここ最近は不作のため収入も大きく減っている。 農地法により農地は農家にしか売れない。その為に拡張して夫婦でやる予定の土地が大幅に手をつけれない状態で居た。嫁を交通事故で亡くしてすぐに農業をやる気にはなれなかった

農家は働かないとあっという間に干からびてしまう。


「臨時ニュースをお知らせしますオーストラリア政府が未確認生物に対しライフル隊を出動させました。捕獲作戦を行う模様です」


ニュースで流れるアナウンサーの声に借金問題は一時棚上げして話題のニュースを3人で見入っていた。


「現地に特派員が入ってるようです。それでは現地の鶴見アナウンサーさんお願いします」

「はい現地の鶴見です。ダーウィン市役所前からお送りします。政府関係者によりますと、どうやらオーストラリア政府は害獣駆除ライフル隊を出動することを決定した模様です」

「ということは殺処分するのでしょうか?」

「いえ、どうやら麻酔銃で対応するようです」

「はい、鶴見さんありがとうございます。それでは新しい情報が入り次第、現地と映像を繋いでお伝えしたいと思います」


国営放送のニュースのコメンテーター達は「英断だ」とか「捕獲するのが当たり前」と好き勝手な意見を述べていた


「速報です。前日未明から立ち入り禁止になっていたカカドゥ国立公園ですが、オーストラリア政府が捕獲に失敗したことを発表しました」

女性アナウンサーがA 4用紙を持ちながら発表した


「鶴見さん。現地から何か詳しい情報は入っていますでしょうか」

「はい鶴見です。現在オーストラリア政府から映像は入っていませんが、どうやら麻酔銃、及び実弾共に効かないようです。睡眠薬入り食肉も投入されましたが失敗したようです」

「実弾も投入されたのでしょうか」

「はい。麻酔銃が効かない段階で実弾による殺処分を決定したようです」


その夜に発表された国際ニュースのドラゴンの映像コメント欄はお祭り騒ぎになっていた

ニュースの映像はパンパンと銃弾の音はするが悠々とカカドゥ国立公園の湿地帯の中を闊歩して歩くドラゴンの姿とひしゃげた弾丸と麻酔弾の映像が映し出されていた ------


ID:いわゆるニートさん |30分前・・・

ドラゴンさん強すぎワロタ

黒龍カッコイイです!


ID:全てのなろうさん |25分前・・・

ドラゴンは世界最強です。現代兵器では勝てません。

これは全ての異世界でも共通です。求ム勇者:時給500円 也

テンプレでは此処で俺のスキルが発動するはず。ステータスオープン


ID:俺がカッコヨムです |20分前・・・

映像が荒すぎてわからない。つーかこれどうすんの?

肉何で食べないの?


ID:私はライトノベル |15分前・・・

日本まで攻めてくるまでお約束よ。当然ミサイルも効かないわ。


ID:通りすがりのニュースキャスター |10分前・・・

オーストラリア政府に任せましょう。


ID:有名になりたい外国人 |5分前・・・

きっと米軍が何とかしてくれるさ


------


掲示板を見ながらまるで他人事のようにノートパソコンを閉じて借金返済について考えている当時の俺だった。


翌日明朝にはオーストラリアの首相M・リードによりオーストラリア空軍ダーウィン基地より複座型のF/A-18Fスーパーホーネットが3機発進したと発表された…





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