大衆浴場

「これが大衆浴場⁉︎」


石造りの大きな建物、


屋根から伸びる煙突からは白い湯気が立ち昇り、外にいても湿った熱気が伝わってくる。


ひとまず今はいつもの頭陀袋にマリーをつめて、肩に担いでいる。

袋の穴から覗いて感想を言っているのだ。



「なかなか大きな建物だけど、どれくらいの広さかしら?」


興味津々と言った様子が伝わってくるほどにマリーの声音は弾んでいる。


「ああ、この建物全部が風呂だからな、そこらの貴族の家の風呂よりはでかいんじゃないか?」


混雑時には千人単位で入れる風呂だ。

相当デカい。

今も視界の限り大勢の人で賑わっている。


皆1日の疲れを癒すために集まるのだ。

一人で来ているものもいれば、家族や恋人と来るもの、奴隷を連れた者もいる。


ちなみにお値段は一人1000円(日本円換算)ほどだ

「料金を払ったらまず、服を脱ぎ、中庭で軽く運動をする」


「は?風呂入りに来たんでしょ?疲れを癒しにきたんでしょ?なんでまた汗流すのよバカなんじゃないの?」


本気で人をバカにした言い方だ。


……この後沈めてやろうか。


「軽く汗を流すくらいに体を動かしておいた方が良いんだよ」


中央は広場になっていて、軽い運動ができるようになっているのだ。


……まあ、運動量は人それぞれなところはあるが、一度中に入れば入浴時間に制限がないので、そこで一日の内何時間と使う人もいる。


「そういうもんなの?」


理解できない様子のマリー。


「ああ、なんなら体育館もあるし、レスリングなんかもやってる奴もいるぞ」


中にはレスリング場もあるのでそこで一日中レスリングやってる猛者いる。


「レスリング⁉︎私見るの好きよ‼︎」


どうやら楽しみができたようだ。


「後は水風呂→微温浴室→サウナ→蒸気風呂→高温浴室→マッサージ……」


「ちょっ⁉︎ちょいちょいちょい⁉︎何それ⁉︎めっちゃやるじゃない⁉︎風呂なんじゃないの?うちの風呂より余裕で楽しそうなんだけど⁉︎」


混乱してめっちゃ早口に叫び散らすマリー。


「すごいだろ?」


自分ちの風呂でもないのにここまで面白い反応をされると、なんだかマリーに勝った気がしてニヤけてしまう。


「……なによそれ、庶民だけズルいわ〜」


むくれている様子のマリー。


「まあ、これからはこっちが普通になるんだし、色々知っていけばいいさ」


そう言ってマリーをなだめ、中へ入っていくのだった。

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