救出
「待て‼︎」
ピタッ、
俺の声に反応してか、マリー胴体の動きが止まった。
マリー胴体は、「なんだ?」とでもいいたげに上半身だけこちらを向く。
首がないから向いているかは分からないが、
「エドモンドぉ〜〜〜」
マリー胴体が担いだ頭陀袋からマリー首の声が聞こえた。
よほど怖かったのか、泣きそうな声になっている。
だがこれではっきりした。
マリー首を連れ去ったのはマリー胴体で間違いないようだ。
「マリー‼︎無事だったか‼︎」
「??、??」
また俺の声に反応してマリー胴体が自分が担いでいる頭陀袋を見る。(見えてるかは分からないが)
「マリー胴体‼︎お前に一つ聞きたいことがある‼︎」
何度もこちらと自分が担いだ頭陀袋を見比べているマリー胴体がこちらを向いて止まる。
そう、マリー胴体には聞かねばならないことがある‼︎
「耳がないのになんで聞こえるんだ?」
「そこじゃないでしょうが‼︎!(◎_◎;)」
頭陀袋が元気に跳ね出した。
元気そうならよかったとホッと胸を撫で下ろす。
「そうだったな、ならマリー胴体、改めて問おう、普通に走って踊ってしてるようだが、見えてるのか?」
「だから違うでしょうが‼︎‼︎」
たしかに今聴くことじゃないかもしれない。
だが気になって仕方ないのだ。仕方ない。
「…………」
「…………」
無言の睨み合い。(向こうは目がないから……いや頭陀袋から物凄い視線を感じる。)
「どうした?答えてくれ」
「…………」
よほどのことがあるのだろう、言いづらそうに固まって微動だにしないマリー胴体。
「言えないことなのか?」
「…………」
「言えない……」
うん、
「喋る口ないんだからそりゃ言えないでしょうよこのアホ‼︎」
頭陀袋から待っていた突っ込みが来たから満足して本来の問いに戻る。
「どういう原理か分からないが、俺の声は聞こえているんだろ?ならなぜ逃げる?マリー首を連れて、一緒に来ないか?」
一歩詰めると一歩下がるマリー胴体。
約5メートル、
それが俺とマリー胴体の距離らしい。
「ほら、お前の今日の稼ぎもここにあるぞ?」
ジャリ、
大量の硬貨が詰まった小銭袋をマリー胴体へ向けて差し出してみる。
「…………」
すると、マリー胴体に反応があった。
少し悩んだそぶりののち、脱力したかのように両腕をだらんと下ろしてこちらへふらふらと歩いてきた。
頭陀袋は地面についているし、ゴツン鈍い音がしたからマリー首にはいいダメージが入ったことだろう。
こちらへ歩いてくる間も頭陀袋は地面を引きずられているし、かなり痛そうだ。
ピタッ、
マリー胴体は、ついに俺の目の前に立った。
すると、今まで引きずっていた頭陀袋をこちらへ差し出してくる。
「おお、分かってくれたか、なら一緒に……」
……それは一瞬だった。
俺が頭陀袋を握ると同時、反対の手に持って差し出していた小銭袋を目にも留まらぬ速さで取り去られた。
マリー胴体は、それをさぞ大切そうに抱えると、再び俺に背を向け、走り出してしまった。
「「えっ……?」」
俺とマリーの声がきれいにハモった。
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