第15話 反省会

早苗side


私がゆかちんの店から出て家に着くとシャワーを浴びて部屋着に着替えると同時に着信が鳴る。この間1時間、どうやら皆があと十分くらいで私の部屋に着くみたいだ。今は一緒に来た若ちゃんがシャワーを浴びている。本当はお客様優先なんだが若ちゃんが準備もあるだろうしどうしても私に先に入ってくれって。まぁ今日は別に気を使うつもりはないんだけどね。


ピンポーン、インターホンが鳴り私は玄関の戸を開ける。


「お邪魔します。さなちゃん」

「さっちゃん待ってたよー。2人は?」

「美夢ちゃんは隣のコンビニで買い物、由香ちゃんは今店の片付けが終わってこれから向かうとこだって。」

「そっか、それじゃあがって。お風呂入る?」

「そうだね、多分今若菜ちゃん入ってるんだよね?

その後入ろうかな?」


ピンポーン、またインターホンが鳴った今度はみーちゃんだろう。


「さなちゃんお邪魔しまーす!」

「みーちゃんさっきぶりー」


ジト目で返事するとみーちゃんは「怒ってる?」と察しの良さそうな事を聞いてきたが「まぁ座ってよ」とソファーに促す。


しかし更に察しがいいのかソファに座らず下の床に正座をする。そしてみーちゃんはさっちゃんに目を向け顎を使いこっちに来い!と言わんばかりの目線を送る。さっちゃんも察しが良くみーちゃんの隣に正座をする。


「これ、なに?」


私は膝立ちになったみーちゃんにソファーに座らされた。そして2人は深々と頭を下げて


「「先程は誠にお騒がせして申し訳ありませんでした。」」


2人に土下座された。2人の胸元がガラ空きになっている。2つの谷間の破壊力は胸に自信のある私ですら目を向けてしまうほど、もし私が男なら文句なしで凝視していただろう。そんなことより…


「私はいいんだけどさ、ていうかなんで頭下げてんの?」


「だってさなちゃん怒ってるかなって」

さっちゃんからそう言われたのは意外だったが。

「本当に申し訳ない…」

みーちゃんはただ平謝り。


「まぁ、私は関係ないんだけど…」


すると2人はこの後とてつもないことを口にする。


「ううん、1番謝らないといけないのは私だよ。」

さっちゃんも

「ううん、私が1番謝らないとだよ」

話が見えない。


「だって…」





「「さなちゃんも雅(君)が好きなんだよね?」」


私は呆然とする。


「は?」


その後着信がなる。かっちゃんからだ。


「もしもし…」


もしかして、もしかするとだけど…


「ごめん早苗、こないだの事言っちゃったわ」


「おい、てめーなに言いやがった?」


私は2人がいるのにもかかわらず言葉を選ばずかっちゃんに問う。


「いや、あのさそろそろ限界だったんだよね。俺達が『とっくに別れた事』隠し続けるの。美夢ちゃんが鋭くてさ」


「いや、それは…」


「てか沙織ちゃんからは俺の好きな人まで当てられたよ」


「え?誰なの?」


「雅の義理のねーちゃんの彩さん、こないだ一緒に雅の家で飯食うことになって買い出ししてるとこ偶然に沙織ちゃんに見られちゃって問い詰められたからまぁその…」


「あー、彩さんかぁ。でもみーくん超大好きなブラコン姉さんがなんで…」


「いや、それがさぁ。雅君は倍率高いから諦めたって。それで俺で手を打ちませんか?って冗談で言ったら二つ返事で「いいよ」って。なんかすぐ振られそうだけど一応その日から付き合うことになりました。」


「彩さんもあんたも軽いね」


私は心底呆れていた。まぁかっちゃんとの距離感は恋人と言うより気の合う友人でいた方がいいなぁと思って別れたんだけどね。だから気まずくはならなかった。もしお互いまた恋しくなったら戻ろうって話だったし、まぁ今の話を聞いてもそこまでショックを受けなかったのも事実だし。ただ一言


「あたしに気を使えよ!」


「いやぁ、そう言われてもなぁ」


「なに?」


「いや、彩さんがさぁ『さなえちゃんって一番タチ悪いよね。かっちゃんがいたのにもかかわらず気が付いたら雅の事ばっかり見ててさ。』だって。まぁ俺は気づいていたから良かったんだけど…他の人にまで気づかれるほど好き好きオーラ出てるっても言われてたぞ」


私は顔を真っ赤にする、両頬が熱くなるのが自分でもわかる。ああ、やっぱりな。あたしやっぱ好きなんだなって。


「そっか…」


「気にすんな、俺はお前が幸せになってくれればそれでいい。もしお互いダメだったら俺の相手してくれればいいさ。それで俺で幸せになれるなら最善は尽くすさ」


言ってる事自体は最低な事言ってるのかもしれないけどあたしにはそれでいい、気休めでもいい、あたしにとっては元気になる言葉だったのだから。


「ありがと、かっちゃん」


「ああ、もう我慢すんな!がっつり戦場で暴れてこい!」


「ら、ラジャー」


私は電話をしながら克義大佐に敬礼したのであった。そして電話を切る。


「あのぅ、すみません。2人で電話で盛り上がってるなか悪いんですが…」


そしてあたしは静かにソファーから降りてみーちゃんとさっちゃんに向かって地面に頭を擦り付けながら土下座した。


「すみませんでした。もうあたしもみんなの手助けはできません。みーくんが好きです。好きで好きでたまりません。」


あたしはどんな罵詈雑言も受けようと思っていた。が予想とは反した言葉が返ってくる。


「うん、わかってたよ、さなちゃん。小学生からずっと雅君の事見てたもんね。なんかごめんね、気を使わせちゃって」


さっちゃんは全てわかっていたみたい。小学生の頃から気づいていたんだなって。


「やっぱりね、こないだベランダいた時も雅と喋ってたんでしょ?なんか戻ってきたあと恋する乙女みたいな顔してたからもしかしてと思ってたよ。」



2人にはバレバレだった。私ってそんなに顔に出るかなぁ?いつもニコニコしてポーカーフェイスしているつもりだったんだけど…その時はどうやら顔に出ていたみたいだ。そりゃあさぁ、みーくんってすごくイケメンってほどでもないけど中性的な顔立ちで可愛いところもあるっていうかどこか安心してしまう顔だし、たまにカッコいいって思ってしまう時もあるしクセのあるというよりクセになる顔というか何というか…


「そう、今みたいな顔してた。雅の事思ってたでしょ?」


「っっっ!!!」


私が声にならない声をあげると「ピンポーン」とインターホンが鳴る。


「どもどもー、今日の仕込みの余った料理持ってきたよー!」


ゆかちんが今日の賄いになったものをオードブルとして持ってきた。ゆかちんの両親の料理は本当に美味しいんだよなぁ。


「あっ美味しそう!」


「美夢ちゃんにはあげなーい!」


ゆかちんが舌を出しながらそういうと


「由香ちゃんのいぢわるー!」


みーちゃんはムキーっ!と猿のような声をだす。


「冗談よ、みんな遠慮なく食べてね。」


「うん、いただきます。」


私は何食わぬ顔して料理を食べているゆかちんに話しかける。


「あのね、ゆかちん」


恐る恐るゆかちんにさっきあったことを話そうとしたが…


「あー、さなちゃんが雅を好きって話?」


「え?」


私は驚いた。


「いやー、私雅の事大好きじゃん?それだけじゃなくて雅が好きな女の子ってなんとなくわかるんだよね。ここにいる人は若菜ちゃん除いてみんな雅が好きなんでしょ?なんとなくわかるよ」



「ま、まぁ私も嫌いってわけじゃないけど」


ちょうどタイミング良く若ちゃんが浴室からこの部屋に戻ってくる。


「そうだよね、だって若菜ちゃんって…」


なにやらゆかちんは若ちゃんの事をなんか知っているみたいだ。


「あー、やめてやめて。私の話はいいから」


「はいはい」


私は若ちゃんの好きな人なんとなくわかるけどね。


「あ、幸太君から連絡だ。ちょっとベランダ借りるね」


はいはーい、私は何事もなく若ちゃん。眼鏡地味子から高校生デビューを果たしたという斎藤若菜さんは眼鏡地味男子の狭山幸太君に恋をしているというわけだけどどうやら彼からお呼びがかかった様だ。






















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ヤントーセー雅 なっとー @710tabero

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