第7話 女子会、そして『ライバル宣言』


風呂から上がって冷蔵庫にあったスポーツドリンクを一気に飲み干す。ふぃーとソファーに寄りかかり髪を乾かしながらスマホをいじる。


メッセージアプリ『Rain』に美夢からグループのお誘いが来る。『燕東1年A組早苗号』というグループでメンバーを見ると『さなえ』『みゆきち』『waka菜』『沙織』『かっつん』『かみしゅん』『万札』『こーた』『☆ゆか☆』『まりまり』とある。半分くらいはわかるが他は友達じゃないな。とりあえず『拒否』した。理由は別に親しい奴だけならともかく喋ったこともない奴らもいたからだ。三人官女はもちろんかっつんは半澤、こーたは師匠。ここまでは友達リストにいる。このメンツだけなら『承認』していた。しかし人付き合いが苦手な俺は反射的に拒絶反応したのだろう。悪く思うな美夢。

他のメンバーを整理してみよう。かみしゅんはあのイケメンか、万札は『花田幸池』というサッカー部の一年エースと克義が言ってた。万札は『福沢諭吉』の諭吉と幸池をかけたのだろう、顔はイケメンランキング13位でサッカーの腕前に加え俊足の持ち主で中学3年の時に100m11秒2という陸上部に顔負けタイムを叩き出した。

そんなカースト上層部だがなんでサッカー部は容姿も良くて頭もいいんだよ、なんか腹立ってきた。

続いて女子枠だ、『ゆか』はおそらく森本由香、俺の従兄弟で早苗と若菜の友達で清楚系女子、黒髪ロングでスタイルもいい。このクラス美男美女、チートに巨乳が多すぎなのでは?なんでAクラスだけこんなに整ってるんだ?たまたまだよな?そこに隠キャのヤンキーをぶち込むなよ、こっちはタダでさえ変な奴らから喧嘩ふっかけられても我慢我慢でストレス溜まってんだよ!頭禿げる。あ、話が逸れた。

俺は『拒否』を押す。すまんな美夢、俺はあのリア充環境に慣れちゃあいない......正直放っておいて欲しい。


するとまた同じグループの早苗から申請が来る。しかしそれも拒否する。すると今度は着信が来る、月村沙織なので拒否はできない。


「もしもし」


月村の声ではなかった。先程Rainグループのお誘いをお断りした相手美夢だった。


「雅グループに入ってよ、雅が入らないと始まらないじゃん」


「ったく、なんで月村の携帯からかけてんだよ、それにんなもん知らねー興味ねーわ」


あたかも興味が無さそうに返す。


「だいたい俺交えて話すことなんて特にねーだろ、他人の欠席裁判でもするつもりか?」


「そんな趣味の悪いことしないよ。それにね、みんな早苗ちゃんの仲良しさん達だから大丈夫だよー」


「友達の友達は他人だ、無理に仲良くなる必要もない」


「うー、せっかく3年間一緒のクラスなんだから仲良くしようよ。」


「早苗の友達なら全員参加だろ?他のみんなは誘ったのか?みんなで仲良くすんなら誰一人かけちゃいけねーだろ、どーせなら俺以外のクラス全員グループに入れるんだな。クラスメート誰一人欠けてなかったら最後に俺も入ってやるよ。」


馴れ合うつもりも目立つつもりもないが、仲間外れにしたり裏でコソコソするのは嫌いだ。まぁ最もそういうのを免罪符にして俺が入るのを拒むというのが本来の目的なんだがな。


「もしもー?みーちゃんに変わって上から90-58-85のないすばでー早苗ちゃんが交渉しに来たよー」


プツン!と電話を切る。なぜその情報を俺に教えた?そしてまた着信がなる、今度は本人の早苗からだ。


「なんで切っちゃうの?そんなにあたしのおっぱいに欲情しちゃっていてもたってもいられなかった?」


「欲情してない、意味わかんねー。そしてなんでスリーサイズを自ら教えた?」


「みーくんおっぱい星人だからクラスメートと幼馴染のよしみで教えてあげたんだよ」


どうやら巨乳好きなのでおっぱい星人は否定はできないが何も俺に教える必要ないだろう。それに教えるにしても上だけでいいだろう。


「それにクラスのライングループはあるよ?むしろそっちの方が入らないかなって」


どうゆう事だ?


「だってみーくんあたし達以外のみんなから怖がられてね、みーくん以外のクラスメート全員のメンバーのグループはあるんだけど」


「いや、それ何気に初耳でショックだからな」


仲間外れ感半端ない。


「ふーん、そうなんだ?じゃあそっちはそっちで招待しとくね」


なんか心が痛い、ヤンキーの目にも涙。


「それでそれでこっちのグループはね、私の特に仲良しのグループって事で...よろしくね」


「いや、それは勘弁。友達の友達は他人だ」


しかし押し問答がしばらく続き、断り続けても無駄だと悟り俺は観念する。


「わーったよ、入ればいいんだろ?」


「うん、ありがとー。お礼にあたしのおっぱい揉んでいいよ?」


「アホか?」


「じょーだんだよ!あたし痴女じゃないしちゃんと心に決めた人しかおっぱい触らせないもん」


「可愛く言ってるつもりでもシモい話に変わらねーからな?」


「まぁ、初めては卒業したしみんなよりはその手の話には柔軟な方だと思うしみーくんとなら猥談全然ウェルカムだよ?」


「へいへいっていつの間に?」


さらっと爆弾発言だな。相手誰だよ。


「あたしかっちゃんと付き合う事になったんだぁ。それでねその日に一線超えちゃいましたぁ。」


早いな、てか付き合いたてのカップルってそんなもんなのか?克義の気持ちはわかってたし今度会ったら素直におめでとうと言っておこう。


「あー、そういえば克義お前の事出会った頃から好きって言ってたな」


「え!そうなの?なにそれちょー嬉しいんですけど。今度かっちゃんに●●●●してあげよう」


「さらっと下ネタ出すな。惚気話はその辺にしとけ」


凸凹身長差カップルか......末永く爆発してくれ。


「あとねー、うーんあたしからアドバイス」


「なんだよ!」


「全部は言えないんだけど......あくまであたしは中立の立場だからなんとも言えないけど....うんうん、あとはみーくん次第かな。」


何が言いたいんだ?意味深だがとりあえず早苗的にも何か思う事があったんだろうな。


「アドバイスになってねーよ。それに何が中立か知らねーけど周りと喧嘩をするつもりはねーぞ?」


「まぁ、そういう事じゃないっていうかそういう事っていうか」


「つまりどーゆー事だよ」


「私、今だからゆーけど小学校の頃かっちゃんとこーくんとみーくんみんな男の子として好きだったんだよね。今でも2人はアリ寄りのアリだよ!」


どうやら俺と師匠にその気があれば付き合ってたらしい。早い者勝ちって事か?


「ビッチじゃねーか」


「そんな事ないもん、みんなかっこいいのが悪いんだよ。それに、浮気は絶対しないもん!」


「俺に口説かれても落ちないんだな?」


「...落ちないもん」


「そこは間を置かずに自信を持って言ってくれ」


「いや、恋愛対象に入るのは今までも今も3人だけだよ。でもでもちゃんとかっちゃん一筋だから。ほんとだよ!」


何言ってんだこの美少女。


「ってことは神坂もナシなのか?」


俺も何言ってるんだ?でも気になったので聞いてみた。


「駿ちゃんはタイプじゃないかも」


意外だった


「え?なんで?」


「駿ちゃん性格もイケメンっていうかすごく優しいんだけど...なんか...ね?」


「ふーん」



何か言いたいんだろうけど言いづらいんだろうな。でもなんとなくわかる。


「それよりみーくんは駿ちゃんの事どー思ってるの?」


またその話かよ、まぁいっか。多分あいつは......神坂駿は......いや俺もだけど......


「ま、俺はぶっちゃけ好きではねーかな。」


はっきり言う。まぁなんとなくわかってたと思うけどな。


「やっぱりかぁ、私もそことそこが心配だったんだよなぁ。なんか駿ちゃんね、かっちゃんとあたしとみーくんの3人で喋ってた時あったじゃん?そのあと機嫌が悪かったんだけど...たぶんそーなのかなって」


「まぁ、俺も好かれてはないんだろーな」


「........でも、喧嘩...しないでね?」


「まぁ俺はからは売らねーけど売られたらわかんねーぞ?」


「まぁその時は私もフォローに入るから。駿ちゃんは自分から喧嘩売るタイプじゃないからその辺は心配してないけど」


「それなら喧嘩にはなんないんじゃねーの?て言うかいいのかよこんな話してて。美夢達と一緒なんじゃ?」


「席外してるから大丈夫、そろそろ戻るよ。みーくんもっかい来る?」


「遠慮しとくわ。」


「ふーん、恋バナできる男子がみーくんぐらいだからまたなんかあったら電話するね」


「克義に悪いだろーが」


「うーん、恋愛相談相手として」


「まぁ俺も一応彼女いたし聞くだけならな」


「ふっふー、今日はありがとね。じゃあおやすみ」


「ああ、おやすみ」


早苗は笑いながら電話を切る。俺は誰もいない自宅のソファーで今人気の深夜アニメを見ることにした。



その頃(早苗視点)


私、矢井田早苗はみーちゃん部屋のベランダでみーくんと電話をした後、少し星空を眺めていた。私はもうちょっとみーくんと恋バナしたかったのが本音。実は一個だけ彼に嘘をついた。私はまだ【処女】である、彼の前では背伸びをしたかったのだ。


まだ私はかっちゃんと【そういう行為】をしていない、キスまでしかしてない。何故なら躊躇ってしまったのだ......上着を脱いで、肌に触れられた途端怖くなってしまったのだ、それを察して

「今日はここまでにしようか。少しずつ慣れてこーぜ」

気を使わせてしまって本当に悪かったなぁ。

もちろん彼氏のかっちゃんは1番大好きだ。小学生の時からずっとずっと大好きだった。なのに......

「私、最低だよなぁ」

みーくんもこーちゃんも大好きでもし彼等に彼女が出来ても素直に喜べない自分がいる。特にみーくんはお気に入りで彼女が出来たらもう嫉妬しまくるだろう。そんな信頼できる幼馴染達の幸せを素直に喜べないなんて......

自分で言うのもなんだが、私は男女問わず人気があるしモテる方だと思う。体育の時は男子からの視線が誰からのだが気にならなくなるほど私に集中する。このアンバランスな体型が原因で私はたまにネタで「ナイスバディでしょ?」とか言うけど実際凄く恥ずかしいのだ。小柄で巨乳、声もアニメ声で【童貞を殺す服】(今日の服装は上から白のタートルネックのセーター、デニムのショートパンツ、紺のニーハイ)と思われる服装が好みで料理も趣味で得意。確かにたくさん武器はあるけど......恥ずかしいものは恥ずかしい。でもそれを恥ずかしいと思わなくなるまでポーカーフェイスでいるには笑ってごまかすしかなかった。そしてみんなが思うほど性格もいいと思ってない。ブリっ子まで行かないがカマトトぶってるって思われても仕方ない。あまり好きじゃない人からも頭を撫でられたりもするがそれも笑ってごまかす。所謂八方美人でみんなのマスコットみたいな存在でもある。

でもそれでも付き合いを全く変えなかったのがあの3人ってわけで。昔からの付き合いもあるけど3人ともみんな大好きなのだ。友達としても男の子しても。独占欲の強い最低女、それが本当の私矢井田早苗である。もちろん友達のみーちゃんの恋路も若ちゃんの恋路も邪魔をするつもりはないし資格も筋合いもない。もちろん応援するつもりだ、心の底からの応援は出来ないかもしれないが。


だけどさっちやんがもしあの【桜井沙織】だったら...

みーちゃんにはちょっと悪いけど個人的には桜井沙織とみーくんがくっついてほしい。だってあの頃あんな必死であんなにカッコいいみーくんなんて彼女にしか見せられないのだから。あんなに本気なみーくん最近は見てないなぁ、どこか無気力っていうか。でもせめてみーくんが誰とくっつこうが私は受け入れようと思う。それの相手がみーちゃんや他の誰かとくっつくのであれば......みーちゃんの事もさっちゃんの事も大好きだしでも時間かかりそうだな。


コンコン


窓を叩く音が聞こえる。みーちゃんだった


「ねー、そろそろ戻っておいでよ。」


「はいはーい。」


私は部屋に戻るとさおりんに早速聞いてみる。


「あのさぁ、さっちゃんって昔あった事あるよね?」


さっちゃんは縦に首を振る、それを見て他の2人はびっくりしている。


「え?早苗ちゃんと沙織ちゃんって知り合いなの?」


「月村さんって早苗ちゃんと友達だったんだ?」


「うん、小学生の時クラスメートだったんだ。」


そしてさっちゃんは眼鏡を外し胸のあたりまで垂れ下がってる三つ編みのシュシュを2つとも外す。そして髪をそのまま下ろすと懐かしい見覚えがある姿がそこにあった。


「ああ、やっぱりさっちゃんだ!久しぶりだね」


「うふふ、久しぶり早苗ちゃん」


あー、久しぶりだこの感じ。


「私ね、前からさっちゃんみたいになりたいと思ってたんだ。でもおっぱいぐらいだなぁ、さっちゃんと張り合えるのは」


そしてさっちゃんの背後に回る


「もう、早苗ちゃんったらー。」


さっちゃんの胸を後ろから鷲掴みにしてみると私よりも大きいかも?


「私着痩せするタイプらしくて…あんっ、さなえちゃっ....いやんっ」


「あっ、ごめん。ついつい出来心で」


「ちょっと早苗ちゃん、先っぽつまむのはダメだよ、痴漢じゃないんだから」


「羨ましいなぁ月村さん...」


なんか若ちゃんごめん、決して若ちゃんが小さいわけじゃないのに。


「で、結局小学5年の時どーだったの?」


「Dはあったかな?」


「今の私と一緒なんですけど...」


「まじか。私はあの頃ぺったんこだったからそりゃ勝てないよ」


「それで今同じくらい大きいから逆にすごいよ早苗ちゃん」


「おっけー、とりあえずおっぱいの話はおいとこー」


そろそろ本題に入らせていただきます。


「で?みーくんにはちゃんと伝えるの?」


「う、うん。私が戻ってきたのは雅君にまた会うため。お母さんにもやっと許可もらったの。中学時代私がお母さんに雅君に合わせて!って何度も頼んだんだ。そしたら高校生になったら良いわよって。まさか同じクラスになれると思わなかったけど。」


「やっぱり、今でも好き?」


「うん、前よりもっとカッコ良くなったなぁって。」


これは愚問だったか。私はみーちゃんに顔を向ける。でもみーちゃんはニッコリしている。そして何かを決意したかのようにさっちゃんに


「じゃあライバルだねあたしたち。」


「はい?」


「あたしも雅が大好き!後悔したくないから言うけど私もね、中学1年の頃越して雅と知り合ってすぐ好きになっちゃった。あんなの好きにならないわけないよ、だって......」


「なんかあったの?」


「うん、私が街で高校生くらいのヤンキー3人くらいからナンパされて断ったら私の手を掴んでつれさられるところを雅が助けてくれたの!あっちから手を出してきたんだけど全員1発で仕留めたんだよ。すごくカッコ良かった。」


「へぇ、その頃から喧嘩強かったのね後藤君」


「いや、小学生の頃からだよ」


私が見たときはすでに喧嘩の強い高校生を半殺しにしてたからね。するとさっちゃんが何かを決意したかのような目で......


「私も雅君が大好きですので...また彼女の座を取り戻します」


そう言うと他の2人がびっくりする。


「元カノさん?」


「はい、それに別に別れたくて別れたわけじゃないのでここで引き下がるわけには行かないんです」


さっちゃんは真剣にみーちゃんを見る。それに返すようにみーちゃんもさっちゃんの目を見つめる。

「ごめん、この想いは止められない。恨みっこなしだよ?」

「はい、受けて立ちます。」

2人はお互いを見つめ合う。これは面白いことになりそうだ。

「で、月村さん。いつ後藤君に自分のこと話すの?」

若ちゃんに唐突にそう聞かれると


「それは来週のお楽しみだよ」


フフフと微笑み返すさっちゃん。それでは明日を楽しみにしておこう。


これからはみーくんを観察するのが日課になりそうだな。





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